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遅刻の「制裁」で給与を減らされました…これって「違法」じゃないんですか?

ファイナンシャルフィールド / 2023年5月30日 2時30分

遅刻の「制裁」で給与を減らされました…これって「違法」じゃないんですか?

何年も社会人として働いていると、電車遅延などが原因で遅刻した経験がある人もいるでしょう。しかし、世の中には「遅刻したせいで、上司から給与カットを言い渡された」と、遅刻が原因で給与が減らされてしまった場合を耳にします。   本記事では、遅刻の制裁措置として給与を減らすことは適法となるのかどうか、基本的な部分を解説します。

遅刻した時間分や減給の制裁の範囲内なら違法にならない

遅刻を原因として給与が減らされる場合、減額の理由が「ノーワーク・ノーペイの原則」と「減給の制裁」のどちらが根拠になっているのかどうかによって、違法性の有無も異なります。
 
ノーワーク・ノーペイの原則とは、「働いていない期間・時間について賃金を払う必要はない」という決まりです。これを遅刻に当てはめると、10分遅刻したら10分間分の給与はカットしても問題ないと判断されます。ノーワーク・ノーペイの原則は、遅刻以外にも欠勤や早退にも適用されます。
 
時間あたりの差引金額の計算方法について法的な定めはありませんが、一般的には「(基本給や各種手当などの合計金額)÷1ヶ月平均所定労働時間」で算定した、1時間あたりの金額を基に決める場合が多いです。
 
一方で10分の遅刻にもかかわらず、30分や1時間など10分を超える減給が行われた場合は、原則として違法です。しかし、就業規則で「減給の制裁」について規定がある場合は、ノーワーク・ノーペイの原則の範囲を超える減給が認められる場合があります。
 

減給の制裁とは? いくらまで減給される?

減給の制裁とは、企業の規約違反や素行不良、コンプライアンス違反などに対する、給与カットによる懲戒(ペナルティ)について定めたものです。
 
例えば、就業規則に「正当な理由なく、何度も欠勤、遅刻、早退したときに懲戒を行う」と定めてあるときは、遅刻回数や遅刻による影響などを考慮し、いくらの減給に値するか、そのほかの懲戒処分(けん責や出勤停止、解雇など)にすべきかなどを決定します。
 
ただし、次に示した労働基準法第91条の規定にある基準を超える減額は違法になります。
 

●1回の事由(1回の遅刻など)に対する減額処分が、平均賃金(事由発生日以前の3ヶ月の賃金総額÷当該3ヶ月間の総日数)の50%以下
●一賃金支払期(月給なら1ヶ月間)における賃金総額の10分の1以下

 
例えば、平均賃金1万円の人が、遅刻1回につき5000円減給されるのは適法、5001円以上減給されるのは違法です(遅刻2回で合計5001円以上減給されるのは適法)。
 
次に1ヶ月の賃金総額が20万円の人が、何度も遅刻して同月に合計2万円減給されるのは適法、2万1円以上減給されるのは違法になります。ただし、減給処分を次月に繰り越すのは問題ないので、「合計3万円の処分で今月は2万円、翌月は1万円減らす」という場合は問題ありません。
 
なお、そもそも減給の制裁について就業規則に定められていない場合は、減給の制裁による給与カット自体が違法です。
 

減給に疑問があるときは就業規則の確認を!

ノーワーク・ノーペイの原則や減給の制裁を根拠に給与が減らされたときは、就業規則の内容に合った減給処分なのか、確認する必要があります。
 
仮に、上司から「遅刻1回につき10万円の減給」「遅刻と早退を3回繰り返したから今月の給料は半分」といった、明らかに法律を逸脱したペナルティを伝えられた場合は、就業規則の確認や労務担当への相談、労働基準監督署への利用などを検討してみましょう。
 

出典

e-Gov法令検索 労働基準法

e-Gov法令検索 民法

大阪府 21 賃金の減額(欠勤控除を含む)

東京労働局 労働基準法 素朴な疑問Q&A

 
執筆者:棚田将史
2級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員1種

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