結婚後や出産後も育児をしながら働きたい! ~こんな時に利用したい諸制度まとめ~
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月30日 7時10分
2023年4月より、従業員数1000名超の大企業のみですが、男性の育児休業取得を促進するために育児休業取得状況の公開が義務化されました。 出生時育児休業制度の創設や出生時育児一時金の増額など、妊娠・出産・育児関連についてのたくさんの制度がありますが、夫婦ともに働き続けるため、どの制度をどのように使えばよいのか、会社がまとめて教えてくれるということはあまりないでしょう。今回は、諸制度をまとめ、その利用方法を考えてみます。
妊娠した時にこそ、利用できる制度をしっかりまとめておきたい
そもそも会社には、妊産婦である女性労働者が保健指導または健康診査を受診するために必要な時間を確保するという義務があります。そのための措置として、時差通勤、勤務時間の短縮等の通勤緩和、休憩時間の増加、延長等の措置を講じなければなりません。体調が悪くなる前に、何らかの措置をとってもらえるよう申し出ることを遠慮しないでください。
取得できる産休は、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後は8週間で、その間、健康保険から出産手当金が給付されます。ただ、それまでに体調が悪く、労働することができないという状態でも休業でき、健康保険から傷病手当金を受給できます。
産前休暇は出産予定日で、厚生労働省のホームページ(※1)で計算できますので、期間を計算しつつ、しっかりと休めるときには休みたいものです。休業している期間には、ぜひ教育費の準備と家計の見直しをするのもよいでしょう。
妊娠中は、受け取れる給付だけではなく、社会保険料免除など、これまでとは異なる手続きが発生します。お金の出入りも変化しますので、夫婦2人だけのときとは異なる見直しが必要です。
日本FP協会のホームページ(※2)によると、子どもの教育資金は約1002万円(注1)です。簡単なライフプラン診断もできますので、子どもが生まれる前の家計の見直しのために、ぜひ参考になさってください。
(注1:教育資金の計算方法→幼稚園から高校まで公立、大学のみ私立の場合の子ども1人あたりの総額)
出産後の育児休業を夫婦で上手に利用したいときの方法
厚生労働省に、「イクメンプロジェクト」という、「育てる男が、家族を変える、社会が動く」というホームページがあります。男性の育児休業取得率を公開しなければいけないのは大企業だけですが、今後、諸制度の後押しもあり、男性が育児に参加するために育児休業を取得しやすい環境になるのは間違いありません。
ただ、制度上認められるといっても夫婦とも育児休業をどのように取得しようか悩むかもしれません。育児休業をするための原則は以下です。
(1) 夫婦で1歳2ヶ月まで取得可能
(2) 妻の産後休業中、「夫は産後パパ育休が取得可能」(注2)
(3) 配偶者が専業主婦(夫)でも休業が可能
(注2:妻は産前6週間産後8週間が産休となるので、育児休業の開始は、出産後57日からとなる)
以下の事例を見てみましょう。
<子の出生後8週間以内の父親の育児休業取得促進>
男性が1年間の育児休業を取得するのは、「仕事の同僚に迷惑をかけるから」「なんとなく、仕事が気になるから長期の休みを取りにくい」など遠慮してしまうこともあるでしょう。
ですが、上記のようなスケジュールは、夫婦2人が少し休んで復帰しつつ、子どもが保育園に入るころにはそれをサポートしながら交代で休業する、というような方法が現実的で利用しやすいといえるでしょう。
長く働き続けるために、主張したい!
パワハラ、マタハラ、セクハラ規定を、会社の就業規則にしっかりと盛り込んでいる会社も多いはずです。
労働基準法では、妊産婦が請求すれば、時間外、休日労働、または深夜業をさせることはできませんから、子どもを産んで長く働き続けるつもりなら、しっかりと自分自身の状況を会社に伝えつつ、大変であれば、「自分が働き続けるためにはこんな配慮をしてほしい」と伝えることも必要です。
産後に勤務時間短縮などの措置で、給料が低下したときにも使える制度もあります。給料と社会保険料が減った場合、子どもが3歳になるまでの間、子どもを養育する前の高い給与に基づく年金の計算をしてもらえる申し出が可能です。
また、小学校就学前までの子どもが1人いれば、10日を限度として「看護休暇」の取得も請求できます。
このように、企業の規模にかかわらず、夫婦共働きをして子育てをするための諸制度は充実しています。社会保険に被保険者として加入していれば、産休には健康保険から「出産手当金」を給付され、社会保険料が免除され、出産育児一時金は50万円に増額され、育児休業は雇用保険から給付がされますから、「妻が退職して子育てをする」という時代ではないのです。
今後の制度改正により児童手当の所得制限撤廃や高校までの支給なども予定されており、当分の間、少子化対策のための制度は続々と創設されていくでしょう。物価高の中、家計を救うために、夫婦共働きをしながら、利用できる諸制度を上手に利用しましょう。
(※1)厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト 妊娠出産・母性健康管理サポート 産前・産後休業、育児休業の自動計算
(※2)日本FP協会 主なライフイベントにかかる費用の目安
出典
厚生労働省 イクメンプロジェクト 育児休業制度とは
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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