共働きと専業主婦(夫)、離婚時の年金分割に違いはある?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月30日 7時40分
働いていても、専業主婦(夫)でも、日本では原則として20歳以上60歳未満の方は「すべて」国民年金に加入しなければなりません。ただ、受け取る時の形はさまざまです。 通常は一人一年金のところ、離婚した際には、夫婦間で分割できるという厚生年金の年金分割という制度が平成19年4月から創設されています。今回は、この「離婚」の際の年金分割についてお話しします。
共働きと専業主婦(夫)の年金は何が違う?
働いて厚生年金に加入していると、65歳以降、老齢「基礎」年金と老齢「厚生」年金という2階建ての年金を受け取ることができます。一方、専業主婦(夫)は、国民年金の保険料を支払う必要はありませんが、65歳以降、老齢「基礎」年金を受け取れます。
このように、1階部分に、すべての基礎となる年金があり、働き方によって基礎年金に上乗せされる年金が変わるというのが公的年金です。
離婚の際に分割対象となる年金は、上乗せ部分である「厚生」年金の部分です。夫の年金の半分を妻に渡す制度だと思っている方もいるのですが、そうではありません。
また、夫婦共働きで、2人とも厚生年金に加入している場合、分割対象は婚姻期間中の夫婦2人分の厚生年金加入記録合計が分割対象ですから、夫婦ともに同程度の収入であれば、分割といえなくなるという点にも注意しましょう。
3号被保険者が請求する離婚の年金分割はとてもシンプル
離婚の年金分割には「3号分割」と「合意分割」の2つがあり、まずは3号分割について説明します。
3号分割を請求できる第3号被保険者とは、厚生年金に加入している配偶者に扶養されて国民年金に加入している状態です。第3号被保険者になる加入手続きは会社がしてくれますし、保険料を自分で支払う必要はありません。しかし、離婚の年金分割は、「自分が」請求することは覚えておきましょう。
平成20年4月1日以後の婚姻期間中の厚生年金記録を2分の1ずつ、夫婦間で分割できますので、話し合いも不要で、公正証書の作成など書類の手間もかかりません。ただ、請求期限が、離婚等をした日の翌日から2年となっています。
経過してしまうと年金に加算されることはありません。自分が老齢の年金を請求する65歳時点で初めて気づいても、年金に加算されませんので忘れないでください。
この3号分割は、事実婚でも請求できます。ただ、自分も厚生年金に加入していた期間があったり、平成20年4月より前に婚姻期間があったりしたときには、次に説明する「合意分割」による請求となります。
3号分割の請求は、第3号被保険者である期間と婚姻期間が確定できれば非常にシンプルな改定請求ですが、合意分割をするためには、手続きの困難度が一気に上がってしまいます。
合意分割による請求のポイントとは
離婚等してから2年以内の改定請求をするという点は、3号分割も合意分割も同様に期限があります。ただ、合意分割が困難になるという理由は、当事者が「合意」により年金の按分割合を定めなければならないという点です。
そもそも離婚に至るまでの夫婦がスムーズに話し合うのは難しいものです。そんなときには、裁判手続きを検討してみましょう。合意がまとまらない場合には、一方の求めで裁判所が按分割合を定めることができます。
ただ、裁判所にいきなり行くというのはハードルが高いかもしれません。そんな時には、まず「年金分割のための情報提供」を請求してみましょう。
合意分割が3号分割と異なるのは「按分割合」が2分の1と決まっていないので、その分割の対象と割合を決めるために、「年金分割のための情報提供請求書」に添付書類を添えて、お近くの年金事務所か街角の年金相談センターに請求します。この請求は、離婚の「前」でも「後」でも行うことができます。
この請求には、基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにできる書類や、婚姻期間を明らかにできる書類が必要ですが、離婚前の請求なら、請求者のみに通知されます。
大変な時だからこそ覚えておきたい離婚の年金分割制度
家庭裁判所に按分割合を決めてもらう申し立てをするためには、前段でご紹介した「年金分割のための情報通知書」の添付が必要です。ただ、この通知書は、離婚後に交付されるものという条件があります。
離婚後の請求は、片方からの請求であっても両方に通知が交付されます。離婚の際には、養育費や親権、財産など、決めなくてはならないことが山積みです。離婚後、遠い将来の年金のことまで考えられないという切羽つまった理由の方もいるでしょう。
50歳未満の方の場合、年金の見込額は出ませんし、分割を受けても、その後国民年金保険料を支払うか、厚生年金に加入して受給資格を満たさないと、将来の年金には反映されません。ただ、間違いなく、手続き等に割かれた労力は将来の年金に加算され、その加算は死ぬまで続きます。ぜひ覚えておきましょう。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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