年金の計算に影響がある? 老齢厚生年金の「従前額保障」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年5月31日 9時0分
公的年金制度は社会・経済情勢の変化に伴って改正が行われてきました。老齢厚生年金は、計算の基礎となる報酬比例部分の計算方法が平成16年に変わりましたが、その改正によって今も年金額に影響がある「従前額保障」についてお伝えします。
従前額保障とは
厚生年金の年金額の計算の基礎となるものを報酬比例部分といいますが、報酬比例部分を算出するための計算方法は平成16年の制度改正で変わりました。
この変更で受け取れる年金額が少なくならないように、平成16年の制度改正後の水準で計算した「本来水準の年金額」と、平成6年の水準で標準報酬を再評価して計算した「従前の年金額」(従前額)を比較して、年金額が高くなる方をその年度の計算式として採用することになりました。
これを従前額保障といい、本来水準の年金額と従前額の比較は、現在も老齢厚生年金額の計算に影響を与えています。
本来水準と従前額での報酬比例部分の計算
報酬比例部分の計算式が、平成16年の年金制度の改正前(従前額)と改正後(本来水準)ではどのように変わったか知っておきましょう。
平成16年改正後の現在の報酬比例部分の計算方法
本来水準である現在の報酬比例部分は以下で計算します。
報酬比例部分=A+B
A: 平成15年3月以前の厚生年金加入期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の加入期間(月数)
B:平成15年4月以降の厚生年金加入期間
平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の加入期間(月数)
※日本年金機構 「は行 報酬比例部分」より筆者作成
※昭和21年4月1日以前に生まれた方など計算が異なる場合もあります。
平成16年改正前の従前の報酬比例部分の計算方法
平成6年の水準で標準報酬を再評価した報酬比例部分(従前額)の計算は以下のとおりです。現在の報酬比例部分が従前額を下回った場合は、従前額が報酬比例部分となります。
報酬比例部分(従前額)=A+B×1.014
A: 平成15年3月以前の厚生年金加入期間
平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月以前の加入期間(月数)
B:平成15年4月以降の厚生年金加入期間
平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入期間(月数)
※日本年金機構 「は行 報酬比例部分」より筆者作成
老齢厚生年金額の計算は複雑
老齢厚生年金額を算出する際の基となる報酬比例部分の計算は、計算式だけを見ると単純そうに思えます。しかし、実際には厚生年金の被保険者期間(月数)や給与(標準報酬月額)によって異なり、従前額保障も加味されるため、老齢厚生年金の計算は実は複雑です。
自分が将来受け取れる年金額は、ねんきん定期便やねんきんネットで目安となる金額を知ることができるので、老後に必要なお金について考えるときやライフプランを立てる場合の参考として確認しておきましょう。
出典
厚生労働省 これまでの公的年金制度の改正
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:杉浦詔子
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント
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