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生前贈与加算の期間が3年から7年に延長される! 相続税法改正

ファイナンシャルフィールド / 2023年5月31日 8時0分

生前贈与加算の期間が3年から7年に延長される! 相続税法改正

令和の時代に入り、「相続税と贈与税の一体化」というキーワードをよく耳にするようになりました。   現行の制度では、原則として相続税の税率よりも贈与税の税率のほうが高く設定されており、高齢世代から若年世代へなど世代間での資産移転が進みにくいという課題があります。そのため、相続でも生前贈与でも、おのおののニーズに合った移転時期を選択して資産移転を行うことができるように、中立的な税制を目指した一体化が進められています。   本記事では、令和6年1月1日施行となる生前贈与加算の期間延長について確認していきます。

生前贈与加算の加算期間

現行制度では、相続人が相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた場合、その贈与財産を相続財産に加算して相続税の課税対象とすることとなっています(ただし、贈与財産に対して贈与税を納付済みの場合には、相続税の税額控除を適用することができます)。
 
つまり、被相続人が亡くなる3年前までの贈与財産は相続税の課税対象となりますが、それより以前の贈与財産については相続税の課税対象とはなりません。
 
改正後の制度では、この加算期間が3年から7年に延長されます。適用対象となるのは令和6年1月1日以後の贈与財産です。令和6年時点でいきなり7年分が加算されるのではなく、段階的に延長され、最終的には改正後7年経過した2031年以降に一律7年の加算期間となります。
 
なお、緩和措置として、延長された4年間に受ける贈与については4年分の総額で100万円までは相続財産に加算されません。
 

加算期間延長による相続税額の変化

一例として、被相続人の遺産総額が1億2000万円、相続人は子ども3人と仮定し、毎年相続人それぞれに110万円(贈与税の基礎控除額)ずつ生前贈与していた場合における相続税額への影響を計算してみましょう。生前贈与の贈与税は基礎控除額以下のため課税されず、また、各人の税額控除も考慮しないこととします。
 
計算には以下の計算式と相続税の速算表を用います。
 

課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額(3000万円+600万円×相続人の数)
各相続人の税額=課税遺産総額×各相続人の法定相続分× 税率-控除額
相続税の総額=各相続人の税額の合計

 


国税庁「財産を相続したとき」より
 

【改正前:加算期間3年】

課税価格の合計額=遺産総額(1億2000万円)+生前贈与加算3年分(3人×110万円×3年)=1億2990万円
 
課税遺産総額=1億2990万円-基礎控除(3000万円+600万円×3人)=8190万円
各相続人の税額=8190万円×法定相続分1/3×15%-50万円=359万5000円
相続税の総額=359万5000円×3人=1078万5000円
 

【改正後:加算期間7年】

課税価格の合計額=遺産総額(1億2000万円)+生前贈与加算7年分(3人×110万円×7年)-緩和措置100万円×3人=1億4010万円
 
課税遺産総額=1億4010万円-基礎控除(3000万円+600万円×3人)=9210万円
各相続人の税額=9210万円×法定相続分1/3×20%-200万円=414万円
相続税の総額=414万円×3人=1242万円
 
この事例では、生前贈与加算の加算期間延長の影響により課税遺産総額が増加し、相続税の税率が15%から20%に上昇しています。結果として、相続税の総額は163万5000円増加しました。
 
このように、加算期間延長によって相続税の納税資金対策に配慮が必要となるケースも出てくるでしょう。
 

改正による影響

贈与税の基礎控除額110万円までの生前贈与を小まめに長期間継続することで、節税あるいは税負担を逃れることができるのは改正後も変わりありません。しかし上記の事例のように、加算期間が7年に延長される影響で相続税はおおむね増税となるでしょう。
 
一方で「相続税と贈与税の一体化」を推進する流れから、この110万円の非課税枠を廃止する方向性も議論されているようです。
 
今後は、暦年課税制度(その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額に応じて課税される制度)ではなく、相続時精算課税制度(累積贈与額2500万円までの贈与税を非課税、超えた部分に一律20%を課税する制度)を検討することも選択肢となりそうです。
 

まとめ

わが国においては、これからもさらに高齢化が進んでいき、高齢者が保有する資産総額の構成割合も上昇していくことが予想されます。それらの資産を次世代に円滑に移転し、経済全体を活性化させることが「相続税と贈与税の一体化」推進の目的と思われます。
 
一方で諸外国においては、次世代への資産移転の際の税負担に関して、生涯を通じた平準化がすでに進んでおり、今回の改正は諸外国との足並みをそろえる方向性ともなっています。
 

出典

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

国税庁 No.4152 相続税の計算

国税庁 財産を相続したとき

 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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