マッチ売りの少女は何箱売ればおいしいパンを買える?売上原価比率やパンの平均価格をもとに調査
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月2日 9時30分
アンデルセン童話の中でも知名度が高く、さまざまな作家や翻訳家によって制作された絵本が、世界中で親しまれている『マッチ売りの少女』。 貧しい家庭に生まれ育った少女は、雪が降りしきる大みそかの夜も、生活費を稼ぐために街頭でマッチを売りますが、誰も立ち止まってくれません。 寒さと空腹に耐えかねた少女が、売り物のマッチで火をつけると、幼い頃にやさしくしてくれた、おばあさんの幻影が浮かび、やがて、手を差し伸べてくれたおばあさんとともに、天国へ旅立ちます。 もし、少女が空腹をしのぐためのパンを買える程度の収入を得られていたら、このような悲しい結末を迎えることはなかったでしょう。 そこで、本記事では、マッチ1箱の値段と原価率、パンの平均価格をもとに、マッチを販売することで得られる利益や、少女がパンを手に入れるために必要なマッチの販売数について、解説します。
マッチ売りの少女がおいしいパンを買うために売るべきノルマとは?
街の人々に見向きもされなかったマッチ売りの少女は、最低何箱マッチを売れば、おいしいパンでおなかを満たせたのでしょうか。
ここでは、マッチ売りの少女の業態やマッチの価格を、現代の日本に置き換えて、少女が手にする利益について解説します。
小売業の売上原価比率から考えるマッチ1箱の利益
マッチ売りの少女の業態は、現代に置き換えると、卸売業者などから商品を仕入れて、消費者に販売する「小売業」に該当すると考えられるでしょう。
小売業の場合、売上高から売上原価(仕入れにかかった費用)を差し引いた額が、粗利(売上総利益)となります。
実際には、粗利から販売や営業にかかった経費が差し引かれるため、手元に残る純利益はさらに小さくなりますが、ここでは粗利=利益として算出します。
経済産業省発表の「2022年企業活動基本調査速報-2021年度実績-」によると、2021年度の小売業の売上原価比率は70.4%でした。売上原価比率とは、売上高に占める売上原価の構成比率のことです。
つまり、100円で販売されている商品の売上原価は約70円、100円で仕入れた商品の販売価格は約143円となります(計算上、以降も税抜きとします)。
ECサイトなどで販売されているマッチの価格は、一般的な大きさである並型タイプ12箱セットで約568円、1箱あたり約47円です。
よって、1箱を販売することで得られる利益は、70.4%の売上原価約33円を差し引いた約14円となります。
パンを買うために必要なマッチの販売数
総務省が実施した「2022年小売物価統計調査(動向編)」によると、2022年12月の調理パン(タマゴサンドまたはミックスサンド)の全国平均価格は、100グラムあたりおよそ203円でした。
よって、仮にマッチ売りの少女が100グラムの調理パンを購入しようとする場合、粗利約14円のマッチを15箱販売する必要があります。
『マッチ売りの少女』の物語には「マッチが売れなければ、父親が家に入れてくれない」という内容も含まれています。父親の分のパンも購入しようとすれば、その倍の30箱近くを売る必要があるでしょう。
少女がより楽にパンを手にするためには商品選定も重要!
現在、インターネット販売されている一般的な種類のマッチを売る場合、1箱で得られる利益は約14円となり、パンを手に入れるには「薄利多売(はくりたばい)」の販売戦略を極めるしかありません。
しかし、マッチ製造の業界団体、一般社団法人日本燐寸工業会が運営するオンラインショップ、マッチ専門店「マッチ棒」では、お香とセットになった1箱700円の商品なども販売されています。
1箱700円であれば、売上原価は約493円、粗利は207円となり、1箱売るだけで調理パンを1個購入できる計算になります。
街頭で見向きもされない少女が、マッチを売って空腹をしのぐためには、付加価値のある粗利が高い商品を仕入れて、興味を持ってくれる層に販売促進することも、手だての一つといえるでしょう。
出典
経済産業省 2022年企業活動基本調査速報-2021年度実績-
総務省 2022年小売物価統計調査(動向編)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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