【産休・育休】政策の全体像を眺め、わが家に合った制度を見つけていこう
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月3日 0時0分
最近は新聞やニュースだけでなく、SNSでも子育て支援や少子化対策といったキーワードを目にする機会も増えましたが、そこで主に語られているのは「子育て関する経済的な支援」「保育園などの環境整備」「男性の育休取得」といった内容です。 確かにどれも具体的で重要な事柄といえますが、FP事務所を長年運営している身としては全体像が見えていないような印象を受けます。そこで今回は、実際の相談業務で使用している資料を基に子育て支援策を俯瞰(ふかん)的に紹介したいと思います。
小学校就学前までの子育て支援策の全体像をつかむ
相談業務で使用している資料といっても、実際には厚生労働省が提供している「働きながらお母さんになるあなたへ」というパンフレットで、これから子どもを産む予定の新婚世帯に向けた説明に用いています。タイトルを見ると、女性向けに用意されているものと思うかもしれませんが、内容を読んでいくと男性も目を通しておいたほうがいい資料であることが分かります。
今回紹介するのは、産前・産後から小学校入学までの育児休業や仕事に関する制度(図表1)です。
図表1
出典:厚生労働省 都道府県労働局 「働きながらお母さんになるあなたへ」
図表1の構成としては、横軸が妊娠期から子どもが小学校に入学するまでのライフステージ、縦軸が制度の種類ごとの分類です。
妊娠期の母性保護をはじめ、産前・産後や育休期間中の給付、職場に復帰して短時間勤務で働く場合など、子育て期における各局面で対象となる制度が一目で分かるようになっており、どのように利用すればいいか想定しやすくなっています。
政策の全体像における個別の制度の位置づけを確認する
例えば、子育て支援でよく話題に上がる育児休業給付金ですが、働き方改革の枠組みのなかで、男性の育休取得と併せて触れられることも多くなっています。
国としては、子育て支援策の目玉のひとつとして掲げているため、メディアを通じて非常に注目されますが、受け手の側としては、育休が妊娠後、どの段階に位置している制度なのかをパッとイメージできる人は少ないのではないでしょうか。ましてや出産前後の産前産後休業、いわゆる「産休」も存在するため、育休と混同している方もいるように思います。
日常会話レベルでこれらの言葉の違いを正確に使い分けるようなことはあまりなく、政策の全体像を俯瞰せずに制度として個別に伝えられると、理解が分散しやすくなってしまいます。
それでは産休・育休について、先ほどの表を用いて俯瞰的に眺めてみます。基本的な理解として、産休は「産前6週間」と「産後8週間」にすべての女性が取得できる休業です。産休期間中は健康保険制度から「出産手当金」の支給を受けられますが、これは出産に伴い仕事を休む女性労働者に対する収入の補償となっています。
次に育休ですが、育休は「育児休業」の略です。産休は出産のために仕事を休むこと、育休は育児のために仕事を休むことです。産休と育休が分かりづらくなるのは、おそらく「休む」という言葉のイメージにあるように思いますが、それぞれ「休」の前に「産」や「育」とあり、その違いに意識を置いて理解する必要があります。
育児休業制度には以前からある育児休業に加えて、「パパ・ママ育休プラス」と、令和4年10月から施行されている「産後パパ育休」があります。つまり、従来の育休を軸に、パパ・ママ育休プラスと産後パパ育休をどう利用するか考えていけばいいわけです。
育休について詳細を理解する前に、まずは「産後から育休が取得できる」という程度で覚えておくといいでしょう。少しだけ付け加えるなら、女性の場合は産後休業の終了後から、男性の場合は出産予定日から取得できます。
なぜ、このように分けられているのかというと、女性の場合は出産に伴う「産休」があるため、「育休」は産休期間が終わった後に取得するという位置づけですが、男性の場合は産休ではなく、育児をするために休みを取るという趣旨から、育休については出産予定日以降に取得するものという位置づけになっているからです。
そして、育休取得期間に対して雇用保険から支給されるのが育児休業給付金(産後パパ育休では出生時育児休業給付金)です。後は、それぞれの制度について個別に調べ、どのように利用して仕事と家事・育児を夫婦で協力し合うか考えていくという流れになります。
まとめ
国の制度は複雑な場合もあり、適用される要件なども含めて考えると「自分の場合、どうすればいい?」「わが家にはどの制度が合っている?」と、調べるのが面倒になることもあるでしょう。
今回の記事では、出産前後から小学校就学前までの子育てに関する経済的支援について、産休と育休を例に俯瞰的に眺めてみましたが、その他にも支援策はあり、個別具体的に見ていては子育て期の節目ごとにライフプランをどう組み立てていけばいいか、対応が行き当たりばったりになってしまうことも考えられます。
そもそも複雑な制度に対して個別具体的に利用を検討しても、自分が今、国の支援策においてはどの時点にいて、これからどのステージに変わっていくのか見えにくくなる場合もあります。
子育てに関する他の政策や制度についても同様のことがいえますが、ライフプランを立てる際は俯瞰的に物事を見渡すという思考も必要であるため、細かい情報に左右されることなく、落ち着いて大局を眺める習慣を身に付けていきましょう。
出典
厚生労働省 都道府県労働局 働きながらお母さんになるあなたへ
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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