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働く夫が亡くなった…「遺族年金」の支給はどうなりますか。「もらえないケース」について教えてください

ファイナンシャルフィールド / 2023年6月10日 23時0分

働く夫が亡くなった…「遺族年金」の支給はどうなりますか。「もらえないケース」について教えてください

万が一、家族の生計を支えている人が亡くなると、残された遺族は世帯収入が大きく減少して、生活を維持するのが大変になってしまいます。   公的年金に加入している人が亡くなった場合、遺族の生活を支えるために支給されるのが「遺族年金」です。しかし、遺族年金には受給要件があり、要件を満たしていないと受け取ることができません。   本記事では、遺族年金の受給要件について解説します。

遺族年金の種類

日本の公的年金は、国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員・公務員などが加入する厚生年金保険の2つで構成されています。厚生年金保険に加入している人は、同時に国民年金にも加入しています。
 
遺族年金は、国民年金に加入している人の遺族が受給対象の「遺族基礎年金」と、厚生年金保険に加入している人の遺族が受給対象となる「遺族厚生年金」の2種類があります。なお、遺族基礎年金と遺族厚生年金では受給要件が異なっており、一方だけ受給できる場合、両方を受給できる場合、どちらも受給できない場合があります。
 
以下で遺族基礎年金と遺族厚生年金、それぞれの受給要件を説明します。
 

遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金は、亡くなった人が次のいずれかの要件を満たす場合に遺族に支給されます。

(1)国民年金の被保険者である間に亡くなった場合
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が亡くなった場合
(3)老齢基礎年金の受給権者であった人が亡くなった場合
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした人が亡くなった場合

(1)と(2)は保険料の納付状況の要件もあり、死亡日前日での保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)について国民年金加入期間の3分の2以上が必要です。ただし、令和8年3月末日までは亡くなった人が65歳未満の場合、死亡日を含む月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければいいことになっています。
 
また、(3)と(4)は加入期間などの要件もあり、保険料納付済期間と保険料免除期間、合算対象期間を合計した期間が25年以上必要となります。
 
遺族基礎年金の受給対象者は、亡くなった人に生計を維持されていた次の遺族です。

・子のある配偶者
・子

ここでの「生計維持」とは、原則として次の2つの要件をいずれも満たす場合です。

・生計を同じくしている(同居している。また別居していても仕送りをしている、健康保険の扶養親族である場合などは生計維持関係が認められます)。
・前年の収入が850万円未満、または所得が655万5000円未満である。

また、上記の受給対象者の「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、あるいは20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある人です。なお、子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくしている父または母がいる間については、子には遺族基礎年金が支給されません。
 
遺族基礎年金を受給するには、亡くなった人が受給要件を満たしており、かつ、遺族が受給対象者に該当する必要があります。
 

遺族厚生年金の受給要件

遺族厚生年金は、亡くなった人が次のいずれかの要件を満たす場合、受給対象の遺族に支給されます。

(1)厚生年金保険の被保険者である間に亡くなった場合
(2)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなった場合
(3)1級・2級の障害厚生年金を受け取っている人が亡くなった場合
(4)老齢厚生年金の受給権者であった人が亡くなった場合
(5)老齢厚生年金の受給資格を満たした人が亡くなった場合

(1)(2)の保険料の納付要件と、(4)(5)の加入期間などの要件は、遺族基礎年金と同じです。
 
遺族厚生年金を受給対象者は、亡くなった人に生計を維持されていた遺族のうち、最も優先順位の高い人となります。優先順位は以下のとおりです。

(1)妻
(2)子
(3)夫
(4)父母
(5)孫
(6)祖父母

(1)は30歳未満で子がいない場合、5年間の有期給付となります。(2)と(5)については、遺族基礎年金での子の要件と同じです。また、(3)(4)(6)は、亡くなった人の死亡当時に55歳以上である人に限られます。
 
遺族厚生年金も遺族基礎年金と同じく、亡くなった人が受給要件を満たしており、かつ、遺族が受給対象者に該当する必要がありますが、遺族基礎年金を受け取れる人は合わせて受給することができます。
 

遺族年金を受給できないケース

上記で説明した受給資格や受給対象者から、遺族年金を受給できないケースを考えます。
 
まず、亡くなった人が受給資格を満たしていない場合です。亡くなった時点で国民年金・厚生年金保険の被保険者であっても、保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2未満、かつ65歳未満で過去1年内に保険料の未納があるケースが該当します。
 
会社員・公務員などで厚生年金保険に加入している期間は、年金保険料が給料から天引きされるので未納になることは基本的にありません。しかし、自営業者や学生、無職などで国民年金保険料が未納になっている期間があれば、受給要件を満たしてないケースがあるかもしれません。
 
60歳以上では、無職または働いていてもアルバイトなどで厚生年金に加入していない人、国民年金に任意加入をしていない人で、保険料納付済期間と保険料免除期間、合算対象期間を合計した期間が25年未満となっているケースです。
 
老齢基礎年金や老齢厚生年金は、保険料納付済期間などを合算した受給資格期間が10年以上あれば受給できますが、死亡時に老齢年金の受給権者または受給資格を満たしていても、遺族基礎年金と遺族厚生年金は保険料納付済期間などについて25年以上が要件となっていますので、年数の違いに注意しましょう。
 
次に、遺族が受給対象者にならない場合です。遺族基礎年金の受給対象者は「子のある配偶者または子」に限定されているので、子がいない妻や、子が18歳以上(障害等級1級・2級の状態に該当するときは20歳以上)の場合は対象となりません。
 
また、生計維持の要件にも注意が必要です。前年の収入が850万円以上(所得が655万5000円以上)の場合、亡くなった人に生計を維持されていたとはみなされず、遺族年金を受給することができません。
 
遺族厚生年金は、受給対象者が遺族基礎年金よりも広く設定されているので、亡くなった人の妻に子がいなくても受給することができます。ただし前述のとおり、子のない30歳未満の妻は受給期間が5年間に限定されています。
 
また、夫の場合は妻が亡くなった当時、55歳以上であれば受給対象となりますが、受給開始は60歳以降となります。ただし、遺族基礎年金を合わせて受給できる場合は、55歳から60歳の間でも受給できます。
 

まとめ

遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があり、それぞれ異なった受給要件と受給対象者が定められています。そのため、亡くなった人が加入している年金や加入期間、保険料の納付状況のほか、遺族の収入などについてもしっかり確認する必要があります。
 
遺族年金の受給や手続きについては、お近くの年金事務所で確認するといいでしょう。
 

出典

日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 さ行 生計維持
 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

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