住宅ローン「2000万円」の残債を一括返済するのに「リスクがある」と言われました。どんなデメリットがありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月16日 10時30分
親からの贈与や相続などでまとまった現金が手に入った場合に、住宅ローンの一括返済を検討する人もいるでしょう。一括返済することで利息を軽減できたり、今後のローン支払いがなくなり、精神的に楽になったりするメリットがあります。 しかし、住宅ローンの一括返済には見落としがちなリスクも存在します。本記事では、一括返済のリスクと一括返済をしないほうがよい人の特徴を解説します。
一括返済のリスク
住宅ローンの一括返済には、利息を減らすことができるなどのメリットがありますが、一方で、いくつかのリスクも存在しています。ここからは、一括返済に潜むリスクについて解説します。
住宅ローン控除の適用から外れてしまう可能性も
住宅ローンの一括返済をしてしまうと、住宅ローン控除(住宅ローン減税)の適用から外れてしまう可能性があります。「住宅ローン控除」とは住宅ローンを活用して住宅を購入した場合に、一定の条件を満たせば10年間、あるいは13年間、所得税(一部、翌年の住民税)が減額になる制度です。この制度は会社員などの給与所得者にとって節税効果の大きい制度の1つです。
しかし、住宅ローン控除は住宅ローン残高に応じて控除額が決まるため、一括返済をしてしまうと控除が適用されなくなってしまうのです。住宅ローン控除の適用がなくなることで、場合によっては数百万円の節税機会を失うケースもあります。
住宅ローンを生命保険代わりに利用できなくなる
住宅ローンを組む際は原則、団体信用生命保険(団信)に加入します。団信とは、住宅ローンの返済中に加入者が亡くなった場合や高度障害状態になった場合に、その後のローン残債がゼロになる制度です。万一のときに多額のローンの返済がなくなることから、団信は生命保険の代わりといわれています。
しかし、一括返済してしまうと団信の適用がなくなってしまうのです。もし、団信を生命保険として活用していて、一般の生命保険に加入していない人は、一括返済後に万一の際の補償が手薄になるかもしれません。
手元の現金が減る
住宅ローンの一括返済をすれば残債はなくなりますが、それに伴い手元資金も減ってしまいます。手元資金がなくなると、病気やけがで急な費用が発生した場合に対応できなくなるかもしれません。
もし、対応できなければ、再度金融機関からローンを組むケースも出てきます。しかし、カードローンなどを利用した場合は住宅ローンよりも金利が高くなる傾向にあり、その分、多くの利息を支払わなければならなくなります。
一括返済をしないほうがよい人
ここからは、一括返済はしないほうがよい人の特徴を解説します。
積極的に資産運用をする人
積極的に資産運用を活用して効率よく資産を増やそうとしている人には、一括返済はおすすめできません。なぜなら、資産運用を活用したほうが理論的なリターンが大きくなるからです。
現在の住宅ローンの大半は1%以下の低い金利です。一方、資産運用に関しては、4%や5%のリターンが期待できる商品が多数存在しています。そのため、多額の資金を一括返済に充てるよりも、その資金を4%や5%のリターンが期待できる金融商品で運用するほうが、大きなリターンが見込めるのです。
住宅ローン控除を活用する人
住宅ローン控除で年間数十万円の税金を軽減できる人は、一括返済をしないほうがよいでしょう。例えば、住宅ローン控除を活用し、年間15万円の税金を軽減できる場合、13年間この控除を活用すればトータルで195万円の税金を抑えられます。
余剰資金があり、一括返済できる状態であれば、住宅ローン控除の期間が過ぎた後に一括返済の実施を検討してみても遅くはないでしょう。
団信を生命保険代わりにしたい人
一般的な生命保険に加入していない、もしくは生命保険の保障が不十分な人は団信を活用したほうがよいため、一括返済しないことをおすすめします。一括返済をした結果、住宅ローンの残債がゼロになってしまうと、その分、生命保険の保障額が減ってしまい、万一の際の保障が手薄になります。
それでも一括返済を選択する場合は、一般の生命保険への加入を検討しておきましょう。
今後のライフプランを考慮した上で一括返済を選択しましょう
住宅ローンの一括返済をすることで生じるリスクは、住宅ローン控除が適用されなくなることや、手元の資金が減ること、生命保険の代わりになる団信を活用できなくなることが挙げられます。
もし、積極的に資産運用をする人や、一括返済すると現金がなくなってしまう人は、無理に一括返済を選択せず、その資金を資産運用に回したり、急な費用に対応するための現金として残しておいたりするとよいでしょう。
このように住宅ローンの一括返済は手元の現金が減るといったリスクもあるため、きちんと今後のライフプランを考慮した上で選択してください。
出典
国土交通省 住宅ローン減税
一般社団法人全国信用保証協会連合会 団体信用生命保険
執筆者:辻本剛士
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種
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