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老後資金2000万円不足問題で見落とされている! 留意すべき生活資金とは?

ファイナンシャルフィールド / 2023年6月18日 5時0分

老後資金2000万円不足問題で見落とされている! 留意すべき生活資金とは?

金融庁金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月4日)によると、私たちの老後に必要な生活資金は、公的年金を受け取っても、平均的に「老後資金が2000万円不足する」と指摘され一時期話題になりました。メディアでも大きく取り上げられたため、報道後、証券口座を開設した方も多いのではないでしょうか。   老後を迎えるまでに本当に2000万円が必要かは人それぞれですが、支出については、老人ホームなどの介護費用や、住宅リフォーム費用などを含んでいないことに留意する必要があります。

「老後資金が2000万円不足する」の根拠

報告書が収支の根拠としている元データは、総務省統計局の2017年「家計調査報告(家計収支編)」です。高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)についてみると、実収入は20万9198円、可処分所得は18万958円で消費支出は23万5477円となっています。
 
公的年金を中心とした、実収入から税金や社会保険料などの非消費支出を差し引いた「可処分所得」の金額と消費支出の差から、毎月5万4519円が不足しています。毎月の不足額の平均を約5万4000円とし、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で約1300万~2000万円になります。
 
この不足分は自身が保有する金融資産より補てんしますが、高齢夫婦無職世帯の平均純貯蓄額は2484万円ですので、まったく問題がないことになります。ちなみに、2021年のデータでは、実収入は23万6576円、可処分所得は20万5911円、消費支出は22万4436円となっています。毎月1万8525円の赤字です。
 
老後を迎えるまでに本当に2000万円が必要かは人それぞれですが、この報告書では、この2000万円には、老人ホームなどの介護費用等や住宅リフォーム費用など特別な支出を含んでいないことに留意する必要があります。
 

介護費用はいくら?

長生きするほど介護のリスクは高まります。要介護認定率は75歳を超える頃から高くなります。
 
生命保険文化センターが行った、「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」で、過去3年の間で介護の経験がある人に対し、実際に介護費用がどのくらいかかったのかを調査したところ、公的介護保険サービスの自己負担額を含む介護費用は、介護用ベッドの購入や住居の改造など、一時的にかかった費用は合計で平均74万円、月々にかかった費用が平均8万3000円となっています。
 
介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1ヶ月(5年1ヶ月)となっています。10年以上も約2割近くあります。これらのデータを基に介護費用を単純計算すると約580万円(=74万円+8万3000円×61.1ヶ月)となります。
 
なお、介護を行った場所別に介護費用(月額)をみると、在宅介護のケースでは平均4万8000円、施設介護のケースでは平均12万2000円となります。
 
施設では、介護保険施設(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院)もしくは介護保険施設以外の施設(有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホームなど)に入所するかにより費用が大きく異なります。
 
介護保険施設は、入居時の費用もなく月額費用も安めです。また、低所得者には居住費、食費の軽減制度もあります。一方、介護保険施設以外では入居一時金があり、月額費用も高めです。居住費、食費の軽減制度もありません。これらの施設に入居するなら、早めの準備が必要です。貯蓄のほか民間介護保険も検討しましょう。

●月額費用の目安

・介護老人福祉施設 8万~13万円
・介護老人保健施設 7万~13万円
・介護医療院 10万~15万円
・介護付き有料老人ホーム 15万~30万円
・サービス付高齢者向け住宅 12万~20万円 (介護費用は別途必要)

上記費用は目安となりますので、詳細は施設等に確認しましょう。
 

リフォーム費用はいくら?

要介護者であれば、手すりの取り付けなど簡単なリフォームは介護保険を使え、1家屋20万円を限度に実際にかかった費用の1~3割で済みます。

●標準的なリフォーム費用

・手すりの設置 10万円前後
・畳からフローリングへ 15万~60万円
・浴室 50~200 万円
・トイレ(和式から洋式に) 10~100万円
・トータルリフォーム 300~1000万円

上記費用はあくまでも目安なので、詳しくはご確認ください。これら以外の大規模なリフォームに備えて、計画的に貯蓄をしましょう。国や自治体の支援制度(減税制度・補助制度・融資制度)も活用しましょう。
 

出典

金融庁 金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について 「高齢社会における資産形成・管理」
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編) 令和元年(2019年)年俸 家計の概要
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2021年(令和3年)平均結果の概要
生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
国土交通省 リフォームの内容と価格について
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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