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少子化対策の所得税の課税方式「N分N乗方式」って何? その1

ファイナンシャルフィールド / 2023年6月19日 7時30分

少子化対策の所得税の課税方式「N分N乗方式」って何? その1

現在(2023年2月4日時点)、国会では少子化対策が議論されています。そのなかで注目を集めているのが、「N分N乗方式」という税制案です。   本記事では2回にわたって、N分N乗方式とはどういう案なのか、導入されるとどれだけの効果があるのかについて説明したいと思います。

N分N乗方式とは?

N分N乗方式とは、通常は稼ぎ手ごとに課税される所得税を、世帯ごとに課税しようとする方式です。これは1946年、第二次世界大戦で人口が減ったフランスで、人口を増やそうとするために導入されたことで知られています。
 
例えば、片働き世帯の年収(夫の年収)を1000万円とします。現在の課税方式では、夫の年収1000万円について、所得税の対象となる課税所得金額が計算され、所得税の税率に応じて所得税額が算出されます。
 
一方、N分N乗方式の場合は、課税所得金額を世帯における家族の人数に応じた数字:Nで割った金額に対して所得税を計算し、それに数字:Nをかけたものを所得税の総額とします。
 
日本の所得税は、課税所得金額が大きいほど税率が大きくなる累進課税方式が採用されていますが、N分N乗方式で計算すると家族の人数が多い世帯の所得税は少なくなるので、それが子どもを増やすインセンティブになり、少子化対策につながるということです。
 

世帯年収1000万円の片働きで夫、妻、子ども3人の世帯での比較

実際に現行の税制での課税方式と、N分N乗方式による所得税計算を比較してみましょう。


前提 片働き世帯
家族 夫、妻、子(15歳以下)3人
家族の人数に応じた数字:N 1+1+0.5+0.5+1=4
[大人1、子(2人目まで)0.5、子(3人目以降)1で計算]

N分N乗方式は、世帯課税所得をNで割って所得税額を計算し、その所得税額にNをかけて世帯所得税額を求めています。
 
図表1 単位:万円

現行の税制 N分N乗方式 差額
収入 1000 1000
課税所得金額調整 587.2÷4
課税所得金額 587.2 146.8
所得税計算 587.2×20%-42.75 146.8×5%
所得税 74.7 7.3
所得税調整 7.3×4
所得税 74.7 29.2 △45.5

注)所得控除として基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除のみを反映
※筆者作成
 
世帯年収1000万円の片働きで夫、妻、子ども3人の世帯の場合、所得税は現行の税制と比べてN分N乗方式のほうが45万5000円も安くなります。このケースでは、少子化対策としての効果があるといえるでしょう。
 

世帯年収1000万円の共稼ぎで夫、妻、子ども3人の世帯での比較

世帯年収1000万円の共働きで、夫(年収600万円)、妻(年収400万円)、子どもが3人いる世帯では、現行の税制とN分N乗方式を比較した場合、以下のようにN分N乗方式のほうの所得税が5万4000円安くなります。
 


注)夫妻とも所得控除として基礎控除・社会保険料控除のみを反映
※筆者作成
 
同条件の片働き世帯では所得税が45万5000円も安くなるのに比べると、共働き世帯の場合は5万4000円しか安くならず、N分N乗方式は少子化対策としてはあまり効果がないということができます。
 
次回「その2」では、別の条件で比較してみることにしましょう。
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

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