【扶養控除がなくなる?】高校生への「児童手当拡充」で得する人・損する人とは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月21日 10時0分
2023年3月に政府が発表した「こども・子育て政策の強化について(試案)」では、児童手当の支給期間について、現行の「中学校卒業まで」(15歳の誕生日後、初めての3月31日まで)から「高校卒業まで」に延長する方向性が示されました。 一方、高校生への児童手当拡充に伴って、その高校生を扶養している人が受けている税制上の扶養控除を見直す可能性が判明しました。 児童手当と扶養控除、どちらがよいのでしょうか? 今回は、高校生への児童手当拡充に伴う扶養手当の見直しで得する人・損する人について解説します。
扶養控除の見直し=廃止?
「扶養控除の見直し」が実現すれば、児童手当が廃止になることが想定されます。というのもかつて、子ども手当(現在の児童手当)の創設にともなって、年少扶養親族(~15歳)に対する扶養控除が廃止されたことがあるからです。
扶養控除とは?
そもそも扶養控除とはどのようなもので、廃止されるとどうなるのでしょうか?
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に、一定金額の所得控除が受けられるという制度です。高校生は一般の控除対象扶養親族に該当するので、控除額は38万円です。
控除額が38万円といっても、「年間38万円がもらえる」ということではありません。あくまでも所得控除ですので、その人の年間所得から38万円が控除され、控除後の所得に対して税率を乗じて税額が計算されるという仕組みです。
つまり、課税される所得があって初めて扶養控除の意味があるということになり、税率の高い人(=所得の高い人)ほどその恩恵が大きくなる傾向があります。
扶養控除が廃止されるとどうなる?
それでは、扶養控除が廃止されるとどうなるでしょうか?
まず、所得課税のない人にとって直接的な影響はありません。そもそも扶養控除によって享受するメリットが存在しないからです。
一方で現在、扶養控除によって減税の恩恵を受けている人、特に高所得者にとっては、扶養控除廃止による増税の影響は相応に大きいといえます。
得する人・損する人
高校生の児童手当額は月1万円となると想定されますので、年間12万円と扶養控除廃止に伴う所得税・住民税の増税額を比較すると、得する人・損する人が分かります(※実際の税額は家計の状況や、今後の政策動向によって異なる場合があります)。
扶養控除廃止で得する人
扶養控除廃止で得する人とは、課税所得がない人や所得が低い人で、扶養控除の恩恵を受けられていなかった人たちです。
「控除から手当へ」という移行には、実は低所得者に対する分配の強化という側面があります。「支援を最も必要とする人へ多くの支援を」という意味で、手当化は妥当といえるかもしれません。
扶養控除廃止で損する人
一方、扶養控除の廃止で損する人は、いわゆる「高所得者」を意味します。高校生の子どもの扶養控除を受けられなくなることによって増税となる所得税・住民税の額が児童手当の年間額12万円よりも多くなる場合は、実質、負担増になります。
ここでは扶養控除の恩恵を享受している場合に「高所得者」とみなされていますが、例えば、年収1000万円未満であっても、「損する人」になり得ることに注意が必要です。
目的は少子化対策
高校生への児童手当拡充にともなって、扶養控除を廃止するという政策判断が妥当かどうかは、さまざまな見方があります。
例えば、都市部に住んでいる子育て世帯は家賃などの負担が比較的大きく、「高所得者」のくくりに該当していたとしても、必ずしも子育てにじゅうぶんにお金をかけられている余裕があるとは限りません。扶養控除の廃止によって、家計の状況によっては「子どもを産もう」と決断しにくくなるのではないか、という懸念があります。
一方で、そもそも日本は累進課税制度を取っているため、「低所得者への配慮」という観点から、高所得者が負担するべきだという考え方もあります。
ここで忘れてはいけないのは、今回の高校生への児童手当拡充が、少子化対策を目的としているということです。日本の将来を担う子どもたちを産み、育てやすい環境づくりができるよう、実効性のある政策判断が下されるかどうかが注目されています。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
執筆者:柳沢俊宏
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表
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