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【所得制限撤廃】児童手当を「年12万円」もらえても、手取りが「約16万円」減る可能性がある!? 高校生の「扶養控除」が廃止された場合を試算

ファイナンシャルフィールド / 2023年6月28日 10時10分

【所得制限撤廃】児童手当を「年12万円」もらえても、手取りが「約16万円」減る可能性がある!? 高校生の「扶養控除」が廃止された場合を試算

岸田文雄首相は6月13日の記者会見において、児童手当の所得制限を撤廃する旨を表明しました。現在、所得制限によって児童手当が受け取れていない家庭にとっては朗報のように思えます。   しかし、児童手当を受け取れるようになる一方で、増税によって給与の手取りが減る事態になる可能性があることを知っていますか?   しかも人によっては、児童手当で受け取る額を上回る増税です。「それでは本末転倒だ」と思われるかもしれませんが、実際に起こる可能性があるのです。その理由を解説します。

児童手当の所得制限とは

2023年6月現在、中学校卒業までの子どもを育てている家庭に対して児童手当が支給されています。支給額は図表1のとおりです。小学生1人、赤ちゃん1人がいる家庭には、1ヶ月あたり2万5000円が支給されているということです。
 
図表1
 

 
内閣府 児童手当制度のご案内
 
ただし、子どもがいるすべての家庭に対して支給されているわけではありません。児童手当には所得制限が設けられており、図表2の「所得上限限度額」を超える家庭には支給されていないのです。政府が手を加えようとしている「所得制限の撤廃」とはこの部分になります。
 
図表2
 

 
内閣府 児童手当制度のご案内 所得制限限度額・所得上限限度額について
 

財源を扶養控除見直しによって捻出する案がある

児童手当の拡充についての方針には、所得制限撤廃の他に支給対象を高校卒業までとする支給期間の延長もあり、その予算は2024年度からの3年間で3兆5000億円となっています。政府はその財源を、高校生(16~18歳)の扶養控除を見直すことで確保する可能性を示唆しているのです。
 

高校生の扶養控除が廃止されるとどうなるのか

もし高校生の扶養控除がなくなった場合、高校生の親の所得税と住民税が上がります。その代わりに児童手当を受け取れるようになるわけですが、年収が高い人については所得税も高くなるため、場合によっては児童手当を上回る増税になるのです。以下の条件をもとに具体的に計算してみましょう。
 

●父:年収1500万円
●子:高校2年生(17歳)

 
子は17歳のため2023年6月時点では児童手当の対象外です。子が中学生だとしても父の年収は1500万円あるため所得制限によって児童手当は受け取れません。
 
ところがこれが、所得制限撤廃と高校卒業までの支給延長が実現した場合には、月1万円(予定)の児童手当を受け取れるようになります。年間にすると12万円です。
 
しかし、児童手当の拡充と同時に高校生の扶養控除が廃止された場合には、父の所得税と住民税は増えることになるのです。扶養控除がなくなる分の増税額は、扶養控除の金額に所得税率と住民税率を乗じて計算できます。以下でシミュレーションしてみましょう。
 

【所得税】
扶養控除38万円(※1)×所得税率33%(※2)=12万5400円
【住民税】
扶養控除33万円(※1)×住民税率10%(※3)=3万3000円
【合計】
12万5400円+3万3000円=15万8400円

 
※1 扶養控除の金額は所得税で38万円、住民税で33万円となっています。
※2 所得税率は所得に比例して段階的に上がる累進課税率となっており、年収1400万円以上の人は33%が目安になります。
※3 住民税率は一律10%です。
 
約16万円増えることになります。これでは、12万円の児童手当を受け取ったとしても、この家庭にとっては、実質約4万円の赤字ですね。
 

まとめ

児童手当の所得制限が撤廃されたとしても、高校生の扶養控除も廃止されるのであれば、所得税率が33%以上の人は児童手当よりも増税分が上回るでしょう。子育て世代を助けるための「異次元の少子化対策」ですが、高所得者層にとってはただの増税といえます。
 

出典

内閣府 児童手当制度のご案内

国税庁 No.1180 扶養控除

東京都主税局 個人住民税

国税庁 No.2260 所得税の税率

 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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