相続放棄と限定承認ってなに? どのように手続きするの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月29日 4時30分
![相続放棄と限定承認ってなに? どのように手続きするの?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_216760_0-small.jpg)
人が亡くなると、その人の財産を引き継ぐ際などに「負の遺産も含めて相続財産だ」などという話を聞いたことがあるかもしれません。負の遺産とは、いわゆる借金のことです。 では、亡くなった人の遺産が負の遺産のみの場合、相続人は負の遺産から逃れることはできないのでしょうか? あるいは、「預金や株式等の遺産と負の遺産があるようだが、その割合や内訳が定かではない」という場合、相続人にはどのような選択肢があるのでしょうか?
相続放棄と限定承認の手続き
まず、相続人が負の遺産から逃れる方法として「相続放棄」があります。また、相続人が相続によって得た財産の範囲で負の遺産を受け継ぐ「限定承認」があります。
相続人が、相続放棄または限定承認をするには、相続人が家庭裁判所にその旨の申述を行う必要があります。家庭裁判所の申述では裁判所に備え付けの申述書と収入印紙800円の他、被相続人(亡くなった人)が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍や、相続人全員の戸籍を添付して申述を行います。
相続放棄は相続人1人でも申述を行うことができますが、限定承認の申述は相続人全員が共同して行う必要があります。では複数の相続人がいる場合、「相続放棄をしたい相続人」と「限定承認をしたい相続人」の両方がいる場合には、どうしたらよいでしょうか?
相続放棄をした人は、「初めから相続人ではなかった」とみなされます。つまり、相続放棄を申述した相続人を除いた、他の相続人全員で限定承認の申述の手続きを行えば良いことになります。なお、相続放棄や限定承認の家庭裁判所に対する申述は、民法により相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に行わなければならないと定められています。
申述先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しないと単純承認になってしまい、負の遺産も含めて、すべての相続財産を相続することになります。
3ヶ月以内に行わなければならない申述の手続き・・・「3ヶ月」という期間を延ばすためには?
相続人が相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月を経ても、相続放棄や単純承認のいずれかの手続きを行わなければ単純承認になってしまいます。
では、3ヶ月近くがたとうとするとき、相続放棄か限定承認か、もしくは単純承認するか、決断ができない場合には、どうしたよいでしょうか? 家庭裁判所に「相続の承認または放棄の期間の伸長」を申し立てることにより、3ヶ月という期間を延ばしてもらうことができます。
申述が家庭裁判所に受理された後
限定承認は申述をして終わりということではありません。相続人が相続によって得た財産の範囲で負の遺産を受け継ぐ限定承認ですから、相続財産の清算手続きが必要になります。具体的には、限定承認の旨を債権者に知らせるために公告(官報に載せる)を行い、その後、債務の弁済等を行います。
相続放棄の申述が家庭裁判所に受理された場合、もし相続放棄をした人が被相続人の財産を管理している場合は、他の相続人に引き継ぐこととなります。また、相続放棄の旨を債権者に伝えるべきでしょう。
その場合、相続放棄が受理された証明書が必要になるかもしれません。相続放棄が受理された証明書は、相続放棄を受理した家庭裁判所に申請します。家庭裁判所の備え付けの申請用紙と1件につき150円分の収入印紙、それに郵送の場合は返信用の切手を添えて、受理した家庭裁判所に申請します。
なお、家庭裁判所に足を運んで申請する場合には、印鑑および受理通知書とともに、運転免許証などの本人を確認することができるものが必要です。
相続財産管理人とは
相続放棄は限定承認とは異なり、相続人一人ひとりが家庭裁判所に申述できます。では、複数の相続人が1人ずつ相続放棄の申述を行い、相続財産だけが残ってしまった場合にはそのままでよいのでしょうか?
そういう場合には、まず家庭裁判所に申し立て、相続財産管理人を選任してもらいます。相続財産管理人は被相続人の財産から債務の弁済を行い、残った相続財産があれば国に納める(国庫に帰属させる)手続きを行います。
単純承認とは
単純承認の場合には家庭裁判所への申述などの手続きはありません。もちろん、不動産等の名義変更や相続財産によっては相続税の納税など、相続財産の状況によっては、家庭裁判所の申述とは別に、個々に手続きが必要になってくる場合もあります。
相続方法には選択肢がありますので、相続人が複数いる場合はよく話し合って決定しましょう。
出典
裁判所 相続の限定承認の申述
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 相続財産管理人選任の申立てについて
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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