60代後半は、働いていると「年金が減る」こともあるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年6月30日 10時50分
働きながら年金を受け取る場合に、賃金(給与・賞与)と年金の合計額が一定の水準を超えると年金が減るという「在職老齢年金」制度についてご存じの人も多いでしょう。 2022年3月までは、65歳に達して受け取り始めた老齢厚生年金の額は、働いていても、毎年度の微増・微減はあるものの、基本的には退職するまで(または70歳に達するまで)一定でした。60代後半に賃金が増える人は少ないことから、60代後半の途中から新たに在職老齢年金の対象となって年金が減る人も多くはありませんでした。 しかし、2022年4月に導入された「在職定時改定」制度によって、この状況が変わる場合があります。本記事では、在職定時改定という仕組みにより、60代後半、働いているうちに在職老齢年金の対象となって年金が減る可能性について解説します。
「在職老齢年金」とは
在職老齢年金とは、厚生年金保険に加入する形で働きながら老齢厚生年金を受け取る人の「(1)賃金」と「(2)年金」の合計額が「(3)支給停止調整額」を超える場合に、超過分の半額、受け取る老齢厚生年金が減るという制度です。「(3)支給停止調整額」は、厚生年金保険加入者(現役世代・男性)の平均的な名目賃金の変動に応じて改定されます。
●(1)賃金=その月の標準報酬月額+(その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12)
●(2)年金=老齢厚生年金の報酬比例部分のその月の月額換算額
●(3)支給停止調整額=2022年度は47万円、2023年度は48万円
「在職定時改定」の導入前
2022年3月までは、65歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金保険に加入する形で働く場合、その期間に支払った厚生年金保険料が年金の受取額に反映される(受け取る年金が増える)タイミングは、退職(または70歳到達)時点のみでした。
毎年厚生年金保険料を支払っているのにその分を年金受取額に反映してくれるのは退職(または70歳到達)時点までないということで、少し損をしているような気もします。
しかし、裏を返せば、受け取る年金の額はこのタイミングまで一定のため、働きながら老齢厚生年金を受け取り始めた時点で在職老齢年金の対象にならなかった人は、その後、賃金が増えて「(賃金+年金)>支給停止調整額」とならない限り、在職老齢年金による年金の減額を気にする必要はありませんでした。
「在職定時改定」の導入後
2022年4月からは、在職中、毎年10月分から老齢厚生年金が改定される(受け取る年金の額が毎年増える)ことになりました。これを「在職定時改定」といいます。
これにより、65歳以降に支払った厚生年金保険料が年金の受取額に反映される(受け取る年金が増える)タイミングが毎年一度あり、10月分から年金額が増えることになりました。65歳以降も働き続けるメリットを、退職(または70歳到達)を待たず、早期に実感しやすくなったといえます。
その一方で、賃金と年金の合計額が支給停止調整額に近い人の場合、60代後半、賃金は増えなくても年金が毎年10月分から増えて「(賃金+年金)>支給停止調整額」となり、在職老齢年金の対象となって実際に受け取る老齢厚生年金の額が減る可能性が出てきました。
まとめ
「在職定時改定」の導入によって、60代後半、働きながら年金を受け取る人は、年金額が減る場合もあることについて述べてきました。それであれば働くと損なのでは? と思う人もいるかもしれません。しかし、60歳や65歳などの定年退職後も再雇用などで厚生年金保険に加入する形で働けば、働かなかった場合に比べ、生涯賃金は増え、再雇用終了後の年金も増やせます。
60代後半、働きながら年金を受け取る場合、仮に在職老齢年金の対象となって年金が減る時期があったとしても、支給停止調整額を超えた全額が減るわけではありません。「在職老齢年金の対象となっている間は、「自分はまだ年金制度を支える側(がわ)だ」と考えてみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
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