60代で「貯蓄ゼロ」。退職金と年金があれば老後、生活していける?
ファイナンシャルフィールド / 2023年7月1日 2時40分
60代になると、老後に向けた生活資金の問題が、いよいよ現実味を持って迫ってきます。貯蓄が全くなく、退職金と年金をあてにしている人もいるでしょう。しかし、退職金と年金だけで、果たして 老後の生活費を十分に賄えるのでしょうか。 本記事では、国の調査をもとに、老後生活の平均的な収支を紹介して、貯蓄ゼロでも生活していけるかどうかを解説します。また、貯蓄ゼロから、老後の生活資金を確保するための対策方法もまとめました。
老後に必要な生活費は65歳以上の夫婦の無職世帯で月20万円程度
総務省が公開している「令和4年 家計調査」の結果によると、世帯主が65歳以上で、無職世帯の可処分所得・消費支出の平均は、表1のとおりです。
【表1】
家族構成 | 可処分所得 | 消費支出 | 差し引き |
---|---|---|---|
二人以上 | 21万6253円 | 23万8919円 | △2万2666円 |
高齢者夫婦のみ | 21万4426円 | 23万6696円 | △2万2270円 |
単身 | 12万2559円 | 14万3139円 | △2万580円 |
収支ともに平均的な世帯の場合、毎月の家計収支は、赤字であることが分かります。退職金の金額が少ない場合、貯蓄ゼロの状態から、退職金と年金だけで老後の生活を賄うのは、難しくなる可能性があるでしょう。
また、65歳以上の夫婦のみの無職世帯を例に、消費支出の主な内訳をみてみると、以下のようになっています。
・食料:6万7776円
・住居:1万5578円
・光熱・水道:2万2611円
・家具・家事用品:1万371円
・被服・履物:5003円
・保健医療:1万5681円
・交通・通信:2万8878円
・教養娯楽:2万1365円
・雑費:1万9818円
・交際費:2万2711円
・仕送り:1334円
例えば、賃貸住宅に住んでいる場合には、上記よりも住居費が高額になることが予想されますし、冠婚葬祭などの出費がかさむときもあるでしょう。こうなると、老後の生活を、貯蓄なしで乗り切ることは、ますます厳しいと考えられます。
60歳貯蓄ゼロから始める老後対策
60代になった時点で貯蓄がゼロでも、本格的な老後に突入する、65歳以降の生活に向けた資金対策を講じることは、可能です。できる対策をしっかりとって、老後資金の不安を軽減しましょう。例えば、次のような対策方法が考えられます。
・固定費の見直しをする
・定年退職後も働く
・年金の繰下げ受給を検討する
それぞれをみてみましょう。
固定費の見直しをする
保険料や通信費、住宅ローンなどの固定費の見直しは、最も手軽にできる、老後資金対策のひとつです。現状にムダがないかを精査して、次のような対策をとりましょう。
・保険の保障内容を、必要なものだけに変更する
・携帯電話やインターネットのキャリアや通信プランを、安いものに変更する
・住宅ローンの借り換えや繰り上げ返済で、返済額を減らす
・賃貸住宅ならば、家賃の安い物件に住み替える
定年退職以降も働いて収入を確保する
健康面や体力面に問題がない場合は、定年後再雇用制度などを利用して、60歳以降もできるだけ長く働き、年金以外の定期的な収入を確保しましょう。毎月、少額ずつでも収入があれば、家計の不足分の補塡(ほてん)や貯蓄に回せます。
また、厚生年金保険に加入して働き続ければ、将来受け取る老齢厚生年金の支給額が、増えるという効果もあります。
年金の繰下げ受給も検討する
65歳以降も就労を続けて、すぐに年金をもらわなくても、毎月生活するには十分な収入を得られる場合は、年金の繰下げ受給も、あわせて検討するとよいでしょう。繰下げ受給をすることで、受給開始後に受け取れる老齢年金額が、最大84%もアップしますので、リタイア後の年金収入の底上げになります。
夫婦の場合は、夫婦のいずれかの年金を生活費にあてて、もう一方の年金を繰下げ受給して増やすということも、ひとつの手です。
貯蓄ゼロだと老後の生活費が足りない可能性が高い!
貯蓄ゼロのままで老後を迎えると、年金収入だけでは、生活費が足りない可能性があります。また、まとまった金額の退職金を受け取れたとしても、いざというときの備えを考えると、安心とは言い切れません。
60代の時点で貯蓄がゼロの場合は、家計の状況や、老後の働き方、年金の受け取り方の計画を見直して、老後資金に備える体制をつくる必要があります。老後生活における、毎月の収支をシミュレーションしてみて、どのような対策をとれば不足分を補えるのかを、よく検討しましょう。
出典
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要(P17-19)
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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