年金を60歳から受け取るとずっと減額。それでも「繰り上げ受給したほうがトクな人」の条件とは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年7月4日 10時20分
老齢年金の受取開始時期は、原則65歳ですが、60歳から64歳までの間に、繰り上げて受け取ることも可能です。月額年金額が少なくなるなど、繰上げ受給にはデメリットがあります。しかし、一定の条件に該当する場合は、年金の繰上げ受給をしたほうが、お得な場合があるのです。 本記事では、年金の繰上げ受給の制度概要と、繰上げ受給をしたほうがお得になる人の特徴を解説しますので、みていきましょう。
年金の繰上げ受給とはどんな制度?
原則、65歳以降に受け取れる老齢年金ですが、繰上げ受給によって受取開始時期を繰り上げると、期間に応じて年金額が減額されます。繰上げ受給によって減額された年金は、生涯にわたって減額されたままになります。
また、年金の繰上げ受給には、年金額が少なくなる以外にも、以下のようなデメリットがあります。
●国民年金の任意加入や追納ができなくなる
●老齢基礎年金と老齢厚生年金の、どちらか一方のみの繰上げ受給はできない
●厚生年金基金から支給される年金額の減額
●繰上げ請求日以降は、遺族年金と併せて受け取れない
●繰上げ請求日以降は、寡婦年金の受給権利がなくなる
●繰上げ請求日以降は、障害年金を請求できない
繰上げ受給によって、年金の早期受け取りは可能ですが、これらのデメリットを考慮して、必要性を慎重に判断しなければなりません。
年金の繰上げ受給に対して、年金の受取開始時期を66歳0ヶ月~75歳0ヶ月までに繰り下げるのが、繰下げ受給です。年金を受け取る時期を繰り下げた期間に応じて、年金額を増やせます。
あたりの減額率
年金の繰上げ受給における、1ヶ月あたりの減額率は、昭和37年4月1日以前生まれの人が0.5% 、昭和37年4月2日以降生まれの人が0.4%です。繰上げ受給の手続きを行ったら、その後に、減額率が変わることはありません。
年金請求時の年齢でまとめた減額率は、表1、表2のとおりです。
【表1】
繰上げ受給請求時の年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヶ月 | 30.0% |
61歳0ヶ月 | 24.0% |
62歳0ヶ月 | 18.0% |
63歳0ヶ月 | 12.0% |
64歳0ヶ月 | 6.0% |
【表2】
昭和37年4月2日以降生まれの人の減額率
繰上げ受給請求時の年齢 | 減額率 |
---|---|
60歳0ヶ月 | 24.0% |
61歳0ヶ月 | 19.2% |
62歳0ヶ月 | 14.4% |
63歳0ヶ月 | 9.6% |
64歳0ヶ月 | 4.8% |
※表1・2ともに、日本年金機構「年金の繰上げ受給」をもとに筆者作成
令和5年度の老齢基礎年金は、満額で月額6万6250円です。年金の受取開始時期を、65歳から60歳0ヶ月に繰り上げた場合、以下の金額が、年金額から減額されます。
●昭和37年4月1日以前生まれの人:6万6250円 × 30%=1万9875円
●昭和37年4月2日以降生まれの人:6万6250円 × 24%=1万5900円
年金の繰上げ受給をしたほうがお得な人の条件とは?
繰り上げた月数分の年金額が減るなど、デメリットもみられる年金の繰上げ受給ですが、一定の条件に該当する人は、早期受け取りをしたほうがお得な場合があります。
●健康状態に自信がない人
●65歳まで働くことができず、貯金もない人
「年金額を減らしたくないから、繰上げ受給はしたくない」と考える人も多いことでしょう。しかし、持病などを抱えていて、長寿の自信がなかったり、生活資金がなくて困っていたりする場合は、65歳まで待つよりも、60歳からの年金受け取りが、損をせずにプラスとなる可能性が高いのです。
健康状態に自信がない人
現在、健康状態に自信がない、長生きする可能性は低そうと感じる人は、繰上げ受給をするのもよいでしょう。なぜなら、年金は、本人死亡によって受給資格を喪失するからです。65歳になることを待ったり、繰下げ受給をしたりした結果、年金を受け取れなくなることも。
ただし、病気やけがが、完治する可能性も想定できます。健康状態がよくなって、長生きした際には、受け取れる年金額は減るということは、把握しておいてください。
65歳まで働くことができず貯金もない人
定年退職後に収入が減った、生活資金に充当できる貯金がないなど、すぐにお金が必要な人も、年金の繰上げ受給をしたほうがよいでしょう。将来的に受け取れる年金額は減りますが、お金がないことによるストレスを軽減できます。
また、カードローンやクレジットカードのキャッシングなどで、一時的にお金を借りる行為は避けてください。利息の負担が発生するだけでなく、借金することに慣れてしまって、借入金額を増やしてしまう危険性が高いからです。
繰上げ受給の内容を十分に理解したうえで選択しよう
年金の繰上げ受給をするかどうかは、老後の資金計画を立てるにあたって、重要な問題です。繰上げ受給を検討する場合は、制度の特徴やデメリット、年金額がどれくらい少なくなるかを確認して、納得した状態で手続きを進めましょう。
特に、60歳で年金を受け取る場合は、最大で24%、または30%も年金受給額が減額するため、十分に考えたうえで、受給開始時期を設定してください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
厚生年金に35年はいってます。60歳から年金をもらえますか?
オールアバウト / 2024年11月27日 8時10分
-
1961年2月生まれの63歳、男性です。64歳から支給される予定の特別支給の老齢厚生年金は繰上げ申請できるのでしょうか?
オールアバウト / 2024年11月10日 18時30分
-
60歳で定年退職して、繰上げ受給を検討しています。長く生きるつもりもないですし「損」することはないですよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月10日 5時30分
-
母が60歳から年金を繰上げ受給していました。長期的に見れば「損」だと思うのでやめてほしいのですが、途中でキャンセルできますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月9日 6時0分
-
年収500万円の55歳ですが、貯蓄が「300万円」しかないので年金の繰上げ受給を検討中です。60歳から受け取ると、65歳のときよりいくら減りますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月2日 4時10分
ランキング
-
1LUUPと交通違反、タイミーと闇バイト、メルカリとさらし行為――“性善説サービス”はいずれ崩壊するのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月29日 8時10分
-
2スーパーやコンビニなどのレジ袋は有料化されたのに、なぜ「しまむら」は無料なの?ほかの小売業者の対応は?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月28日 5時20分
-
3高級タワマン老人ホームへ引っ越しました!…慶應卒・78歳同期の元常務から届いた満面の笑みの年賀状。年金月30万円・元部長は即座に画像検索「脅威の入居金額」に悶絶
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月29日 10時45分
-
4コーヒー豆が歴史的高騰、NY市場で最高値…産地のブラジルやベトナムで不作
読売新聞 / 2024年11月29日 0時0分
-
5風呂キャンセル界隈?「日本の偉人」まさかの素顔 凄い人物でも部屋が汚い、そんな姿に親近感も
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 11時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください