子育て世帯に朗報!? 児童手当拡充を含む「こども未来戦略方針」案の中身を解説!
ファイナンシャルフィールド / 2023年7月5日 10時10分
わが国は、先進国の中でもトップクラスで少子化が加速しています。少子化の原因はさまざまですが、子育て世代の経済的な問題から、本来欲しいと思う子どもの数を断念せざるを得ない世帯が一定数存在することがあげられます。子どもが大人になるまでにかかる費用は、教育資金が人生の3大支出の1つであるといわれるくらい、大きな金額です。 この社会的な課題を解決するために、政府はこども未来戦略方針案を2023年6月13日に発表しました。子育て世代にとってどのようにプラスに働く施策なのか、また、制度改正における注意点について、1つひとつ解説します。
児童手当の対象と金額の拡充
1つ目の大きな柱は児童手当の対象と金額の拡充です。具体的には児童手当の所得制限の廃止と高校生まで児童手当の対象拡大、第3子以降の児童手当を3万円に増やすというものです。
現行の児童手当は、対象は中学生までとなります(図表1)。0~2歳の子どもが一律1万5000円、3歳~小学生は、第1、2子が1万円、第3子以降が1万5000円、中学生は一律1万円です。
しかし、児童の数に対して所得が図表2の所得制限限度額以上、所得上限限度額未満の世帯は、手当が5000円に限定されます。また、2022年10月支給分からは図表2の所得上限限度額を超える所得の世帯では、児童手当は支給されないこととなりました。
図表1
内閣府 児童手当制度のご案内
図表2
内閣府 児童手当制度のご案内
子育て世代にとって月々の手当が増えることは非常にうれしいことです。とてもよい改定ではありますが、注意しなければならない点もいくつかあるため、解説します。
高校生の子どもが扶養から外れてしまう可能性あり
今回の児童手当の改定で児童手当の対象が高校生まで拡充されます。しかし、まだ確定はされていませんが、この改定にともない、高校生のいる世帯において、高校生の子どもの扶養控除を見直す案が出ています。
扶養控除額は38万円です。年間12万円の支給以上に38万円控除による税額負担軽減のほうが大きい所得の世帯にとってはむしろマイナスの施策となってしまいます。この点は、今後の動きを注視していく必要があります。
第3子の定義に注意
第3子以降、3歳以上~小学生卒業までの児童手当が3万円に拡充されますが、この第3子の定義は「高校卒業前の子どもの数」でカウントされます。
例えば、第1子が高校3年生、第2子が中学1年生、第3子が小学3年生の家庭の場合、第1子が1年後に高校を卒業すると、第3子だった小学生は「第2子」として扱われてしまいます。そうすると支給額は月3万円から月1万円になります。高校卒業前の子どもの数で児童手当の支給金額が変わることに注意しましょう。
出産時の経済負担軽減の補助
もう1つの柱が、出産時の経済負担の補助です。現行制度では通常分娩(ぶんべん)は健康保険の対象外であり、全額自己負担となります。出産時の平均費用は地域によって異なりますが、東京都では平均55万円というデータも出ています。
今回の改正では「出産・子育て応援交付金」という名目で10万円を支援する制度化の検討、2026年までに通常分娩の出産費用に対する健康保険適用の導入が検討される旨、発表されました。2023年4月より出産育児一時金が50万円に増額改定されました。経済的負担の大きい出産は、同様に、より手厚い支援が実現されることを期待したいところです。
手厚い保障をするための財源はまだ確保されていない
確定しているもの、検討しているものとさまざまですが、実現すれば子育て世代にとっては非常にうれしい改正ばかりです。
しかし、考えなければいけないのが、この手厚い支援の財源がまだ確保されていないことです。政府としては、歳出削減を徹底することで浮いた財源をこの子育て支援にあてるとしていますが、そのための具体的な案は出ていません。
子育ての経済的負担が減ることは少子化問題に悩む日本にとってよいニュースですが、政策によって子育てが難しくなったり、子どもを産み育てようと思えなくなったりしてしまっては元も子もありません。
今回の発表では、まだ検討中の案も多いので、これから具体的に確定した内容が出てくるまで、今後の政府の動きは、より一層注目されるでしょう。
出典
厚生労働省 「こども未来戦略方針」
内閣府 児童手当制度のご案内
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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