債券投資について (その2) 発展途上国の国債への投資
ファイナンシャルフィールド / 2023年7月14日 11時0分
![債券投資について (その2) 発展途上国の国債への投資](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_219861_0-small.jpg)
前回(その1)では、債券投資とは何かということ、およびアメリカの国債への投資について説明しました。(その2)では、発展途上国の国債への投資の例として、トルコの国債への投資を分析し、アメリカの国債への投資と比較してみたいと思います。
発展途上国とは?
発展途上国とは、OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに発表している「ODA(政府開発援助)受け取り国リスト」にある国をいいます。このリストに載っている国はODAを受け取る資格があり、世界銀行によって「高所得国」以外に分類される国々(2016年時点の1人当たりの国民所得:GNIが1万2235米ドル以下)が該当します。
トルコの2016年の1人当たりの国民所得は1万1000ドル程度なので、発展途上国に分類されます。
トルコ国債への投資について
トルコ国債については、高いリターンが見込める反面、投資には一定のリスクが伴います。トルコは政治的に不安定な地域にあり、インフレの問題もあります。そのため、国の通貨であるトルコリラが下落するリスクや、政治的な問題が起きた場合に国債価格が下落するリスクがあります。
また、トルコの経済には「バランスオブペイメント問題(国際収支統計上の問題)」があり、外貨債務に依存しているので通貨リスクも存在します。
ただし、トルコは国債利回りが高いため(2023年7月7日時点のトルコの10年物国債の金利は約16.83%)、リターンが魅力的に見えるかもしれません。投資家は、トルコ経済や政治情勢を継続的にモニタリングし、リスクを適切に評価して投資判断を行う必要があります。
具体的にいうと、利率は高いものの、「バランスオブペイメント問題の」悪化などのためにトルコリラが下落するリスク、政治問題などにより債券価格が下落するリスクがあるということです。
バランスオブペイメント問題とは?
前述した「バランスオブペイメント問題」とは、ある国の経済において、その国の国際取引に関する支払いと受け取りのバランスが取れない状態が続くことを指します。
具体的には、輸入が輸出よりも多くなっている場合、輸入品の支払いに必要な外貨を調達するために外貨を借り入れたり、外貨を得るために国債を発行することになります。これによって国の負債が膨らみ、通貨価値の低下やインフレといった問題が発生する可能性があります。
一方、輸出が輸入よりも多い場合、外貨が余剰になるため、その国の通貨価値が上昇する傾向にあるとされています。
「バランスオブペイメント問題」が続くと、その国の経済に悪影響を及ぼす可能性があり、国際収支を改善するための政策が必要になる場合があります。
トルコのバランスオブペイメント問題とは?
トルコは長年にわたって「バランスオブペイメント問題」に直面しています。2018年には、トルコリラの急落やインフレの進行により、経済危機が発生しました。
現在もトルコの経済には「バランスオブペイメント問題」が存在しており、輸入が輸出を上回っているため、外貨不足が続いています。2022年には、貿易赤字が対前年比2.4倍の1095億ドルに拡大し、バランスオブペイメント問題が深刻化していることが報告されています。
トルコは外貨債務に依存しており、外貨不足を解消するには海外からの資金調達が必要になるので、外部環境の変化や国際金融市場の動向に敏感です。また、トルコリラの価値が下落すると外貨債務返済の負担が増大するため、通貨リスクも大きな問題となっています。
トルコ政府は、「バランスオブペイメント問題」の改善に向けたさまざまな政策を打ち出していますが、国際社会や市場からの信頼回復には時間がかかると予想されており、投資家がトルコ国債に投資する場合には十分に注意が必要です。
アメリカ国債への投資とトルコ国債への投資の比較
ここまで説明してきたこと表にすると表1のようになります。
表1:アメリカ国債への投資とトルコ国債への投資の比較
アメリカ国債 | トルコ国債 | |
---|---|---|
10年物国債年利回り (2023年3月26日現在) |
3.38% | 12.21% |
信用力・安定性 | 高 | 低 |
市場リスク (価格変動リスク・為替変動リスク) |
低 | 高 |
※筆者作成
トルコ国債の利回りは高いものの、国自体の経済力や政治の安定性を比較すると、信用力・安定性が低く、価格変動リスク・為替変動リスクが高いということになります。それゆえ、安定した投資を望むなら、利回りは低くてもアメリカの国債がお勧めといえます。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
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