1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

相続は選択することから始まる! 「単純承認」「相続放棄」「限定承認」について

ファイナンシャルフィールド / 2023年7月14日 9時10分

相続は選択することから始まる! 「単純承認」「相続放棄」「限定承認」について

「親が亡くなったが、どうやら借金のほうが多いようだ」   身内の方が亡くなったとき、こうしたケースもあるでしょう。まだ発生していない相続でも、ご自身やご家族が亡くなった場合に借金のほうが多くなりそう、という方もいらっしゃると思います。   プラスの財産よりマイナスの財産、すなわち負債のほうが多い場合でも相続手続きは進める必要があります。まず、葬儀などを執り行うことになると思いますが、この時点から注意しておかなければならないことがあります。

故人の財産に手を付けてはいけない

相続は、すべての相続人がすべての財産を相続する「単純承認」のほか、「限定承認」「相続放棄」という選択肢もあります。
 
もし、「限定承認」や「相続放棄」を選択する可能性がある場合、注意しておかなければならないことの1つ目は、「故人の財産に手を付けてはいけない」ということです。
 
故人の銀行口座などは、金融機関がその事実を把握すると「凍結される」ということは聞かれたことがあるかもしれません。ただ、実際に金融機関が「口座名義人が亡くなったこと」を知るのは、しばらくたってからであることが多いでしょう。
 
相続人が「葬儀費用にお金が必要だから」などと、故人のキャッシュカードなどを使ってお金を引き出すケースは少なくありません。
 
しかし、この行為は「相続財産の処分行為」があったとされる場合があります。故人の財産を相続人が処分した場合には、自動的に「単純承認」したとみなされる恐れがあります。ですから、「限定承認」「相続放棄」を検討する場合には、故人の財産に手を付けてはいけません。
 
また、故人が借家に住んでいて、大家さんから「早く退去してください」と言われていたとしても、「財産の処分行為」にあたらないよう注意しなければいけません。故人の家財などの財産を相続人が売却したり、故人名義の自家用車などの財産を相続人の名義に書き換えたりする行為も「財産の処分」にあたります。
 

「限定承認」「相続放棄」には期限がある

2つ目の注意点は「限定承認」「相続放棄」には期限があることです。
 
「限定承認」「相続放棄」が行えるのは、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内です。この期間内に家庭裁判所に申述し、受理される必要があります。3ヶ月経過する直前ギリギリに申述しても、受理されるまでに間に合わない恐れもあるので、早めに手続きを進めるべきです。
 
しかし、同居していたのならまだしも、離れて暮らしていた親の財産がどれだけあるか、相続人は誰なのかを調査しなければならないような場合、3ヶ月はあっという間です。つまり、「これは時間がかかる」と思った場合には、なるべく早く専門家に相談することをおすすめします。
 
この3ヶ月は「熟慮期間」といわれますが、財産がどれだけあるのか、相続人は誰なのか、どこにいるのか、といった調査がある程度進まなければ「熟慮」もできません。その場合には、「熟慮期間伸長の申し立て」を行うことによって期間を延ばすこともできます(なぜ期間の伸長が必要なのかの相応な理由は必要です)。
 

「相続放棄」するとどうなる?

「単純承認」では、相続人が故人の財産をすべて(プラスの財産もマイナスの財産も)引き継ぐことになります。一方、「相続放棄」は故人の財産を一切引き継がないという選択で、相続人1人でも可能です。相続人が複数いる場合でも、そのうちの1人が期限内に「相続放棄」を申述すれば認められます。
 
相続放棄を行うことで、その相続人は民法上では「そもそもいなかったもの」として手続きを進めることになりますので、プラスの財産も一切相続しない代わりに、マイナスの財産を相続することもなくなります(相続税の計算上は放棄した人も法定相続人の人数に含めます)。
 
もし、故人(被相続人)の子がすべて相続放棄した場合、相続権は第2順位、すなわち故人の両親に移ります。両親がすでに他界している、あるいは両親も相続放棄した場合には第3順位である被相続人の兄弟姉妹に相続権が移ります。
 

「限定承認」するとどうなる?

「限定承認」は、相続人が故人のプラスの財産の範囲でのみ相続する、という選択です。
 
仮に、故人に1000万円のプラスの財産と2000万円のマイナスの財産がある場合、名目上はプラスの財産の1000万円部分とマイナスの財産のうち1000万円のみを相続することになります。
 
しかし、現実はそう単純ではありません。まず、「限定承認」は「相続放棄」とは異なり、相続人全員が共同で行う必要があります。
 
複数の相続人のうち、誰か1人でも協力が得られない場合には、「限定承認」はできません(ただし、相続放棄した人がいる場合、相続放棄をした人は,相続人ではなかったものとみなされるので、それ以外の共同相続人全員で申述できます)。
 
また、限定承認を選択した場合、その後5日以内にすべての相続債権者に対して、限定承認をしたこと、一定の期間内にその請求の申し出をすべきことを公告しなければなりません。
 
債務がどれだけあるかを調査し、債権者リストを作成し、官報に公告したのち、債権者に対して引き継いだ財産からどの債権者にどれだけの財産を配分するかを、相続人の代表である「相続財産清算人」が決めなければなりません。
 
もちろん、代理人として「弁護士」を立てることも可能ですが、かなりの時間と煩雑な事務作業が伴うことや、かなり高度な専門知識が必要なことなどから、対応してくれる弁護士も限られているようです。また、弁護士費用などは相続人が負担しなければならないので、実際には相続人からの持ち出しが発生することにもなります。
 

まとめ

相続放棄は、比較的身近な選択肢です。司法統計によれば、相続放棄が申述される件数は年間20万件を超えています。一方、限定承認が申述される件数は年間700件程度です。これは相続放棄に比べ、限定承認では相続人に過大な手間と費用がかかることが影響していると考えられます。
 
いずれにしても、まとまったプラスの財産よりもマイナスの財産が多いまま亡くなると、相続人は「単純承認」「相続放棄」「限定承認」のいずれかを選択しなければなりません。
 
どれを選択するかを検討する際には故人の「債務も含めた財産リスト」があるとスムーズです(相続人は「本当にこれですべてか」を確認する必要はありますが)。
 
もし、「相続放棄」「限定承認」を選択する可能性がある場合には早めに専門家に相談するようにしましょう。
 

出典

裁判所 ホームページ
裁判所 相続の放棄の申述
裁判所 相続の限定承認の申述
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、宅建マイスター(上級宅建士)、上級相続診断士、西山ライフデザイン代表取締役

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください