年金受給まであと5年!貯金はいくらあれば「年金だけ」で生活できる?
ファイナンシャルフィールド / 2023年7月26日 9時30分
年金は65歳から受け取ることが一般的ですが、定年の年齢は60歳となっていることもあります。 もし、60歳で定年を迎えたとして、年金受給までの5年間、そして年金受給後も、貯金がいくらあれば年金だけで生活できるのでしょうか。考えていきます。
5年間で生じる支出はどれくらい?
まずは60歳で定年し、そこから5年間でどれくらいの支出が生じるか考えていきましょう。
総務省の家計調査によれば、令和4年度における、高齢単身無職世帯の消費支出と非消費支出とを合わせた支出は、月々15万5495円でした。単純に年換算すると1年間で186万5940円の支出が生じていることになります。5年分の支出を概算すると932万9700円と、1000万円近い金額になります。
【図表1】
出典:総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
続いて、夫婦2人の世帯を見ていきましょう。
【図表2】
出典:総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
月々の支出は、消費支出と非消費支出とを合わせて26万8508円となっています。年換算すると322万2096円となり、5年間分の支出を見積もると、1611万480円と非常に大きな額になります。
60歳で定年し、年金を65歳で受け取るまで働かずに生きるということを前提とするならば、少なくとも単身では900万円超、夫婦なら1600万円ほどのお金が必要になりそうです。
重要なのは年金額
年金だけで生活しようと思ったとき、実際に受け取る年金額も重要です。年金額は毎年誕生日の月に送られてくる「ねんきん定期便」のほか、インターネット上で「ねんきんネット」を閲覧する、年金事務所に直接問い合わせるなどして確認することができます。
そこで確認できる年金の見込み額が、自身の老後に想定される支出額を上回っていれば、年金だけで生活していくことができるでしょう。
例えば、単身者の方で年金の支給額が月額16万円、月の支出額は先の統計通り15万5495円であるとしましょう。この場合、年金だけで生活できるため、最悪貯金が0でも何とか生活していくことができるだろうと想定できるわけです。
しかし、多くの方が年金だけで生活できるわけではありません。厚生労働省によれば、令和3年における厚生年金の支給額は平均14万5665円、国民年金の平均支給額が5万6479円となっています。
必要な老後資金は?
年金だけで生活することが難しいと想定できる場合、定年までに年金だけで不足する支出相当額を、老後資金として確保しておく必要があります。具体的には、毎月生じるであろう支出と、受け取るであろう年金額を基に、何歳まで生きるかを考えて必要な老後資金を計算していきます。
仮に90歳まで生きると仮定しましょう。年金を65歳で受給してからの25年間、生じる支出は単身者であれば4664万8500円、夫婦世帯で8055万2400円となります。
単身世帯の方が平均的な年金額を受け取るとすると、不足額は次の通りとなります。
・国民年金受給者の場合…2970万4800円の不足
・厚生年金受給者の場合…294万9000円の不足
夫婦世帯での場合は次の通りとなります。
・厚生年金の夫と国民年金の妻という場合…1990万9200円の不足
・夫婦ともに国民年金の場合…4666万5000円の不足
そこに、それぞれ60歳から年金受給ができるまでの生活費(単身者で932万9700円、夫婦で1611万480円)を加えると、最終的に必要な貯金額は単身世帯の場合、以下のようになります。
・国民年金受給者の場合…3903万4500円の不足
・厚生年金受給者の場合…1227万8700円の不足
夫婦世帯での場合は次の通りとなります。
・厚生年金の夫と国民年金の妻という場合…3601万9680円の不足
・夫婦ともに国民年金の場合…6277万5480円の不足
まとめ
あくまでも平均的な額で年金が支給され、平均的な支出額で90歳まで生活した場合ですが、60歳で定年し、その後の生活を就労せず、65歳からは年金だけ生活する場合、単身者なら1227万8700円から3903万4500円の貯金が必要になりそうです。夫婦ならば3601万9680円から6277万5480円の貯金が必要になるでしょう。
ただ、不労所得があるなど、個別の事情によってはこれよりも小さい額の老後資金で十分生活できることも珍しくありません。
自身の将来を考えるにあたっては「誰かが言っていたから」と他人の意見をうのみにするのはやめましょう。必要なお金は人によって異なります。将来受け取れる年金額、そして生活費など個別の事情を加味して計算し、自分は定年退職の時点で貯金が何円必要なのか割り出すようにしてください。
出典
総務省 家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
執筆者:柘植輝
行政書士
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