クラウドクレジット株式会社代表取締役・杉山智行さんに聞く 第3回:防衛大志望から東大法学部に方向転換
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月29日 3時0分
人生100年時代と言われるようになりましたが、果たして私たちはビジョンを持って「人生100年」を受け止めているでしょうか? この対談企画では、様々な分野の方にお話しをお聞きし人生100年時代のビジョンを読者のみなさんと作り上げていきたいと考えています。 クラウドクレジット株式会社の杉山社長に伺う第3回目です。なんと高校3年の夏休みに進路変更、東大法学部に合格した体験を語っていただきました。
実務、アカデミックに優秀な人が一緒にマーケットに立ち向かっていく姿に感銘を受けた
山中:杉山さんは東大法学部のご出身ですよね。
杉山:そうなんですが、大学2年生くらいから金融をやりたいと思い、勝手に自分で勉強を始めました。米国のアクチュアリー試験という保険数理の試験の初等のものを受験したりもしました。
山中:アクチュアリーって相当難しいですよね。
杉山:私が受験したのは初等の部分ですし、米国の試験は日本のものよりは簡単なんですよ。ついでに英語の勉強になるのでいいかなと思って。そうこうして、証券会社の内定をいただいた4年生の時に、友人のつてで金融工学の経済学部のゼミで勉強をさせて頂けることになり、そこで1年間ゴリゴリしごいていただきました。
山中:やっぱり数学、物理が大好きなんですか?
杉山:数学は金融で必要なので本気で勉強始めたかんじですが、物理は高校の時かなり得意でした。
山中:でも、どうして大学2年生で突然「金融だ!」って思ったんですか。
杉山:私は法学部に入ったのですが、大学2年生くらいのときにキャリアを幅広く考えていた際に、スーパートレーダーやノーベル経済学賞の学者がいたヘッジファンドの本を読み、そういう実務的に優秀な人とアカデミックにすごい人が一緒にマーケットに立ち向かっていく姿に感銘を受けたんです。
山中:意識高いですね(笑)
杉山:いやいや所詮19歳が考えることなんで、ヘッジファンドってすごいな、ヘッジファンドマネージャーみたいなのになったら面白いなと(笑)。
付加価値を出せるんじゃないかと、軍事戦略とか戦術とかの本をすごく読んだ
山中:ちなみに子供の時はどんな感じたったんですか。
杉山:子供の時は面白い話はあんまりないです(笑)。ただキャリアについては高校生の時くらいから考え始めていました。
私が高校生だったのは1998~2000年なのですが、当時大人の方は日本でも金融危機が起こるなど大変だったと思うのですが、愛媛県の高校生だった私はそんな肌感覚は持っていませんでしたし、学校でもまだ日本経済が先行き悲観的とか教えられていなかったので、日本の経済ってすごくて、そこで自分がプラスアルファの付加価値をだせることがあるのだろうかって思っていたんです。
一方で新聞などを読んでますと、今は全然変わりましたが、当時はまだ冷戦が終わってもう10年ぐらい経つのに自衛隊の戦車がほとんど北海道にあるとか、ここって結構非効率がまだあって、こういうところこそ自分が付加価値をだしていけるんじゃないかと考えました。
山中:かっこいいんだと、杉山少年は思った(笑)。
杉山:付加価値を出せるんじゃないかということを考えました(笑)。それで軍事戦略とか、戦術とか戦史みたいな本を高校の時にすごく読みまして。それで、「防衛大学校へ行きたい」って担任の先生にいうと、「何言ってるんだ」と。受験校に行っていたので。
山中:そりゃ、数字ですよ。
杉山:「杉山君は東大がよいのでは」という話になり、「嫌です」と言ったら、進路指導の先生のところに連れていかれまして(笑)。そこでも東大に行くことを薦められたので断ったところ、さらに校長先生と面談を行うことになりました。
でも校長先生って、北風と太陽の太陽ですね。担任の先生や進路指導の先生から東大に行くよう言われると若い、思春期の子は「嫌です」って言うんですけど、校長先生は「君は自衛官になりたいんだね」っていうふうにおっしゃいまして、防衛大学校に行って自衛官になるっていうのは自衛官ならみんなが通る道であって、それって金太郎飴の1個になっちゃうんじゃないかと。
山中:なるほど。
杉山:一方で東大に行けば政府関係者になる人が多いので、コネクションを作っておいて幅広い情報を得ながらインテリジェンスを使う自衛官というのが21世紀にはバリューを発揮するんじゃないかっていうふうな。
山中:めちゃくちゃ、言いくるめられているような(笑)
杉山:そうなんですよね。ということであっさりコロッといきまして。それだったらいいかなという感じになりました。
どうやったらちゃんと合格するスコアになるかということを考えた
杉山:それで官僚になるなら法学部ですよねっていう話になり、それがちょうど高校3年の夏休み入る直前ぐらい。
戦略・戦術の研究を3年間みっちりやっていたので、受験まで半年くらいしかないなかでどうやったらちゃんと合格するスコアになるかということを考えました。すると役にたちそうな戦略が2つあったんですね。
まずひとつが、選択と集中。受験勉強の期間が半年しかないので、もう学校の成績は全く考えないことにして、受験本番のスコアが上がる勉強しかしないことにしました。
さらに研究していくと、東大の入試問題は難しいものの、そのかわり合格ラインも50点くらい、また出題される範囲が結構狭いんです。
たとえば世界史だと、教科書と補助教材を計4冊丸暗記したら50点はほぼ確実にとれるとわかり、他のことはほとんどやらずにその4冊だけは一言一句何ページにはこういうことが書いてあるということを言えるまで暗記しました。
ふたつめは戦略というか、「自分が苦しい時は往々にして敵はもっと苦しい」という第1次大戦の時の塹壕戦を戦っていた方の心得です。
やはり4冊とはいえ丸暗記するのは大変ですのでふつうに途中で勉強をやめたくなるのですが、「自分が苦しい時は他の受験生も同様に苦しいのでここであと一歩踏ん張れば差がつくんだ」ということを思い出し、夏休みの1か月間ひたすら勉強しました。
私は理系だったので、世界史はやったことありませんので、昔々ネアンデルタール人というのがいて、というところから勉強し始めるのですが、ひたすら勉強するとものになってきまして。
結果として夏休みの終わり頃に受けた全国の東大受験生が受ける模試で、法学部希望者でたしか17番くらいになりました。勉強云々というより、自分が3年間研究してきたことを応用して物事にチャレンジしたらバシッとうまくいったというのが当時はとても嬉しかったです。
結局大学生になってから考えも変わって金融の道に進んだのですが、自分の3年間の研究成果がバーンとでたので、あれは面白かった。やっている時はつらかったんですけどね。
山中:敵もつらいぞと思いながらやっていたんですね。
杉山:そうですね。たしかに観察をしていると、文系の方はまだ夏休みは受験まで半年もあるみたいな感じで、親御さんが思っているほどまじめに勉強している人ほとんどおらず、意外とそこで危機感を持った私の方が相当やばいと思って勉強しただけなんですよね。
山中:杉山さんの人となりを象徴する興味深いエピソードです。
(第3回終了)
Illustration:山中伸枝(やまなか のぶえ)
Photo:新美 勝(にいみ まさる)
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