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認知症の人が事故などを起こして家族が損害賠償責任を求められる場合に備える自治体の取り組み

ファイナンシャルフィールド / 2018年8月18日 9時0分

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徘徊中の認知症高齢者がJR東海道線の駅構内で列車にはねられ死亡した事故で、JR東海が振替輸送費など約720万円の賠償を家族に求めた裁判で、2016年3月の最高裁判決では、家族は監督義務者にあたらず、賠償責任は負わないとしました。   この判決を受け、一部の損害保険会社では、個人賠償責任保険特約の被保険者や補償範囲を拡大する動きがありました。   その後、自治体でも、公費で損害保険会社の個人賠償責任保険の保険料を負担する動きが広まっています。  

認知症鉄道事故裁判の概要

2007年、愛知県大府市で、認知症で徘徊中の男性(当時91)が列車にはねられて死亡した事故で、JR東海が家族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、2016年3月、最高裁第三小法廷は、介護する家族に賠償責任があるかは生活状況や介護の実態などを総合的に考慮して決めるべきだとする基準を示しました。
今回のケースでは、妻及び長男とも「監督義務者に当らず」とし、また、妻は当時85歳で要介護1の認定を受けていたほか、長男は横浜在住で20年近く同居していなかったことなどから「準じる立場」にも当たらないとしました。ただ、ケースによっては「準じる立場」として賠償責任を問われる可能性があります。
※判決全文
 

民間保険の活用

最高裁の判決を受け、新型の個人賠償責任特約も出てきています。損害保険会社の個人賠償責任保険は、他人にケガ等をさせたり、他人の財物を壊して法律上の損害賠償責任を負ったりする場合に、1事故について保険金額を限度に保険金を支払うものです。
一般的に、自動車保険や火災保険の特約として加入します。基本的に、示談交渉サービスもついています。
保険金額1億円で火災保険などに特約で加入する場合の月額保険料は数百円程度です。本人だけではなく、配偶者、同居の親族、生計を一にする別居の未婚の子も対象です。
新型の個人賠償責任特約は、事故を起こした方が認知症等で責任無能力である場合に、監督義務を負う別居の親族等も補償の対象に拡大するとともに、電車の運行不能等による賠償責任に関し、人的・物的な損害を伴わない事故による賠償責任(従来型では補償の範囲外)もカバーします。
少額短期保険では、リボン少額短期保険株式会社が2017年8月「リボン認知症保険」の販売をスタートしました。
 

民間保険を活用した自治体の支援事業

最高裁の判決を受け、神奈川県大和市では2017年11月「はいかい高齢者個人賠償責任保険事業」を開始しました。市に住民登録をしている「はいかい高齢者等SOSネットワーク」登録者を対象に、被保険者が法律上の損害賠償責任を負った際に、保険で最大3億円を補償してくれます。被保険者の保険料の負担はありません。
この他、愛知県大府市(補償の上限1億円)と栃木県小山市(補償の上限1億円)は2018年6月から、福岡県久留米市(補償の上限3億円)では2018年10月から民間保険を活用した支援事業を開始します。
神戸市では「認知症の人にやさしいまちづくり条例」を制定。家族の被害弁償を公的に補助する救済制度の創設のほか、運転免許証の自主返納や中学校区での徘徊模擬訓練の実施などを推進します。
認知症高齢者は全国に推計約525万人います。2025年には730万人に増えるとみられます。本人や家族の不安を少しでも軽減する、このような取り組みが全国の自治体に広まることを期待します。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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