マンションの電力契約の「低圧」と「高圧」の違いは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月8日 4時10分
昨今のちまたの話題の1つに電気代の高騰が挙げられます。2023年6月にも、大手電力会社が電気料金の値上げを実施しています。 マンションを所有する方の中には、マンション共用部分の電気代が高騰したため、これまで毎月支払っている管理費では賄いきれず、大幅な値上げが管理組合の総会で決定されたなどの事例も出てきているようです。 この記事では、特にマンション所有者や賃借人を対象として、マンションの電力契約の基礎的な知識を確認してみたいと思います。
マンションの電力契約はおおむね「低圧」と「高圧」の2種類
一般家庭の場合は、大量に電力を使う事業者などとは違い、個々に小売電力事業者と低圧契約(従量電灯、低圧電力など)を締結し、電力の供給を受けています。マンションにおいても基本的には同様に、個々のお部屋で低圧契約を締結しています。
さらに、一定規模のマンション(おおむね50戸以上が目安)においては、2005年から始まった高圧電力の自由化を契機として、マンション全体で高圧一括受電する契約があります。
高圧一括受電の特徴
高圧一括受電は、マンション1棟全体が大口電力消費者として、電力会社等と高圧契約を締結するもので、各戸にはマンションの敷地内にある高圧受電設備や変電設備を介して、高圧電力を各家庭で使用できる低圧電力に変換することで供給します。
一般的には、高圧電力の方が低圧電力の電気料金単価より低いため、その差額を利用して各戸が負担する電気料金を低く抑えることができるメリットがあります。
また、管理組合全体で負担する共用部分や設備の電気料金も節約できるメリットがあるため、マンション全体の負担軽減につながる効果があります。
ご自身のマンションの電力契約の詳細は、管理を委託している管理会社などに確認するのが一番早いですが、敷地内に変圧器や電力会社の電気室などの設備がある場合は高圧一括受電となっています。
また、比較的規模の大きいマンション、いわゆるタワーマンションなどはほぼ高圧一括受電となっており、高層階に通じるエレベーター、大規模な機械式駐車場、内廊下構造のエアコンの稼働など、多くの電力を要する構造や設備の場合には効果があるものと思われます。
高圧一括受電のデメリット
高圧一括受電に必要となる設備の設置や保安管理を管理組合が行うのか、高圧一括受電サービス事業者にサポートをお願いするのかによって、マンション管理組合の負担は大きく変わりますが、後者の場合には設備等を高圧一括受電サービス事業者が所有することとなるため、管理組合側は初期費用なしにサービスを開始できます。
ただし、高圧一括受電サービス事業者との契約期間が長く設定される場合がほとんどで、中途での変更等は困難となります。また、設備の法定点検が年1回程度の頻度で必要となり、一部で数時間の停電が発生することになります。
もう1つのデメリットには、各戸の電力を利用する居住者が個々に電力会社を選ぶことができないことが挙げられます。高圧一括受電の場合は、メディアに宣伝される電力自由化に伴うキャンペーンなどの利用に関する情報については、全く蚊帳の外となります。
低圧契約の場合
現状において過半数を超えるマンションは、低圧契約となっています。前述の50戸以上という数値はあくまでも目安であり、例えば、100戸ぐらいのマンションでも低圧契約が基本となっています。
この場合には一戸建てなどの一般家庭と同様に、マンションの各戸でオーナーだけではなく、賃借人の方も個々に電力会社の契約先を選択することができます。
最近の電気料金の値上げは全体的な動きなので、極端に料金的なメリットが大きい選択肢はないかもしれませんが、ポイント還元やガスとの併用値引きなど、さまざまなキャンペーンを利用した乗り換えをすることは可能です。
まとめ
今年の夏も猛暑になる見込みといわれています。エアコンの設置温度を少し上げたり、省エネ家電に買い換えたり、皆さんはなんとか節電に取り組もうと考えていることと思います。
もし、自身が住んでいるマンションの電力契約の形態が不明の場合には、管理会社に聞くなどして確認してみましょう。ほんの少しでも、電気料金の節約につながる方法があるかもしれません。
また、これから物件を探す予定の方は、マンション電力契約の形態について少し気にかけてみることをお勧めします。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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