「仕組債」とは? 銀行に業務改善命令が出された、そのリスクとは?
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月17日 0時10分
![「仕組債」とは? 銀行に業務改善命令が出された、そのリスクとは?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_226734_0-small.jpg)
2023年6月、千葉銀行、武蔵野銀行、ちばぎん証券に対して、金融庁から業務改善命令が出されたという報道がありました。いわゆる「仕組債」の販売に際し、投資経験の浅い顧客に元本割れのリスクや仕組みなど、十分な説明をしないまま購入を促していたとのことです。 この記事では、仕組債の特徴である一般的な債券にはない特別な仕組みやリスクについて確認してみたいと思います。
仕組債とは、一般的債券+デリバティブ
仕組債の「仕組み」とは、一般的な債券にデリバティブ(金融派生商品)を組み込んでいることを意味します。
デリバティブとは、スワップ(金利や通貨を交換する取引)やオプション(あらかじめ約束した価格で将来、売買できる権利)を指します。
この仕組みを利用して、投資家や発行者が満期やクーポン(利子)、償還金を比較的自由に設定することができ、一般的な債券に比べて高いリターンを期待できるというメリットが挙げられます。
ただし、こうした仕組みの影響で、逆に元本割れが発生するリスクがあることを理解しておく必要があります。
仕組債の3つの償還パターン
一般的な債券(利付債)は、額面金額に対する利率を基に利息を定期的に受け取り、満期償還時に額面金額100%で償還されるものを指します。
一方、仕組債は定められた判定日に参照銘柄の価格や指数(以下「参照指数」)が一定の範囲内であれば、一般的な債券と同様の運用になります。また、判定日においてあらかじめ決められた水準を上回ったり、下回ったりすると早期償還やノックインが発生します。
仕組債の一般的な3つの償還パターンは以下のとおりです。
(1)早期償還(ノックアウト)が発生
判定日に参照指数があらかじめ定められた早期償還の判定水準以上となった場合、早期償還(ノックアウト)が発生します。
この場合には、満期償還よりも前に額面金額100%で償還されることになり、当初、目論んでいた利息を得られなくなるケースがあります。
(2)満期償還日に額面金額100%で償還
保有期間中に、ノックイン判定水準とノックアウト判定水準の範囲内で参照指数が推移した場合、一般的な債券と同様に保有期間中の利払いと、満期償還日に額面金額100%での償還を受けることができます。
条件としては、保有期間中の判定日に一度もノックアウト判定水準以上とならないこと、ノックイン事由が発生したとしても、最終判定日において参照指数の終値が当初価格以上であることなどがあります。
(3)ノックイン事由が発生し、元本割れで満期償還
仕組債の仕組みを理解する上で最も注意を要するパターンが、ノックインが発生する場合のリスクです。あらかじめ定められたノックイン判定水準より参照指数が下回る場合、ノックイン事由に該当します。
ただし、ノックイン事由が発生し、かつ、最終判定日において参照指数の終値が当初価格未満であることが条件とされ、上記(2)のとおり、最終判定日に当初価格以上となればノックインは発生しません。
ノックインが発生すると、償還金額が額面金額を下回る元本割れとなってしまうことになります。ただし、たとえ償還金額が元本割れしても、利息と合わせると当初の投資元本を上回る場合もあり得ます。
仕組債におけるリスク
仕組債には上記の特徴の他にもさまざまなリスクがあります。
仕組債は主に海外で発行され、日本国内で販売会社によって「外国債券」として販売されます。そのため、発行者である海外の金融機関などが債務不履行(デフォルト)となった場合には、大きな損失につながる可能性もあります。
また、一般的な信用リスク、価格変動リスク、為替変動リスク、流動性リスクなどにも十分に留意する必要があります。
さらに、仕組債は利率が変動して決定されるタイプが一般的となっており、ハイクーポン・ロークーポン(利率)のいずれかを一定の条件で決定する場合、参照指数の変動によっては受け取る利息が減少する可能性もリスクとして挙げられます。
まとめ
仕組債による元本割れなどの被害については以前から問題視され、販売を停止した金融機関もあるようです。
この記事では仕組債の主な特徴を説明しましたが、その条件設定や償還方法などの仕組みは複雑で、一般の投資家には理解しづらい構造となっていることも事実です。
金融商品としては国債などと同じ債券というグループに分類されるものの、仕組債は一般的な債券とは違う仕組みを持ったものと認識し、購入については高いリターンや高利回りなどのうたい文句のみで判断しないように注意しましょう。
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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