家族が成年後見人になっても「自由に」お金を使えない!? 成年後見人を慎重に決めるべき理由とは
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月18日 7時20分
両親が認知症を発症したりして、自身が代わりに親のお金の管理をするために、成年後見人になりたいと考えたことのある人もいるのではないでしょうか。 成年後見人とは、病気や障害などが理由で、一人で契約をしたりお金の管理をしたりすることに不安を覚える人、あるいは判断できない人の代わりに、財産管理をおこなう人のことを指します。 成年後見人になると、被成年後見人の口座からお金を引き出したり、契約を解除したりすることなどが、できるようになります。しかし、成年後見人であっても、使用できるお金の範囲は限られていることをご存じでしょうか。 今回は、成年後見人について、費用や、できることなどを分かりやすく解説します。
成年後見人に必要な費用とは
成年後見人とは、病気や障害などにより、自分で判断が十分にできない人を保護するための制度です。成年後見人をつけるには、家庭裁判所への申し立てが必要になります。
申し立てを受けると、被成年後見人の判断能力を医学的に調べる鑑定や、そのほかの調査をして、家庭裁判所が最適だと考える成年後見人を選びます。
成年後見人に選ばれた人には、書面で通知されます。また、成年後見人に家族が選ばれず、司法書士などの専門家が選ばれるケースもあります。
成年後見人申し立てにかかる費用
まず、成年後見人の申し立てをすること自体にも、費用がかかります。
収入印紙での申し立て手数料800円、後見登記手数料2600円、まだ、成年後見人が登記されていないことを証明するための書類発行手数料300円が必要です。
送付する際に同封する切手は、家庭裁判所により異なり、東京家庭裁判所の場合は3270円、大阪家庭裁判所なら3990円分が必要になります。管轄の家庭裁判所のウェブサイトに掲載されている場合も多いため、必要な切手代は、事前に調べておきましょう。
さらに、提出するための住民票と戸籍謄本の発行手数料や、被成年後見人の診断書の取得費用も必要です。
状況によっては、医学的観点から、被成年後見人の判断能力を調べる必要があり、鑑定料が10万~20万円かかります。
ただし、鑑定料は、審判の結果次第では、成年後見人ではなく、被成年後見人のお金で清算できる場合もあるため、確認しておきましょう。また鑑定料は、申し立ての時点で用意する必要はなく、裁判所が鑑定を必要だと判断したときに納めます。
成年後見監督人がついた際の報酬
申し立ての結果、家庭裁判所が家族を成年後見人として選んだ際に、成年後見監督人をつけられるケースがあります。成年後見監督人とは、被成年後見人の財産が多い場合などに、成年後見人がお金の着服などの不正をしないように、見張る人のことです。
成年後見監督人は、成年後見人が後見事務をきちんとおこなっているかを監督し、場合によっては、領収書などの書類提出も求めます。
成年後見監督人が選ばれた場合は、成年後見監督人に対して、毎月、報酬の支払いが必要です。管理する財産が5000万円以下の場合は、月額1万~2万円、5000万円より多い場合は、月額2万5000~3万円が、報酬の目安となります。
なお、成年後見人も、報酬をもらえる場合があります。ただし、成年後見人が報酬をもらいたい場合は、家庭裁判所へ収入印紙800円を添えて、申し立てが必要です。
成年後見人でもお金を自由に使えるわけではない
成年後見人になると、被成年後見人(以下本人)のためだけにお金を使用できるようになり、本人のお金を自由には使えなくなります。成年後見人は、本人の財産を正しく管理することが求められるからです。
報告に必要なため、本人の現金で収入や支出があった場合は、すべてをメモして、保管しておき、収入や支出の証拠となる領収書・レシートも、保管しておきましょう。
なお、基本的に、本人が入所する施設料や生活費、本人の負債の支払い、成年後見監督人や成年後見人への報酬などが、費用として認められます。
例えば、本人の預金を成年後見人の自宅ローン返済に充てたり、子どもへ分け与えたりすることは、原則できません。
本人が今住んでいる不動産や、将来住む予定の不動産を、売ったり賃貸したりすることも、家庭裁判所の許可が必要です。不動産を、家庭裁判所の許可なしで勝手に処分した場合は、処分行為は無効となります。
また万が一、本人のお金を、決められたもの以外のために勝手に使用した場合は、損害賠償を求められたり、業務上横領として刑事責任を問われたりする可能性もあるため、注意しましょう。
成年後見人は本当に必要かどうかよく考えて決める
成年後見人は、一度申し立てをしてしまえば、あとから取り下げることは難しい制度です。
また、申し立てには費用がかかりますが、自分で管理ができない親族などの、お金の管理ができるというメリットがあります。しっかりと家族で話し合い、本当に必要かどうかを理解したうえで、申し立てることが大切です。
出典
裁判所 申立てにかかる費用・後見人等の報酬について 東京家庭裁判所後見センター
法務省 登記されていないことの証明申請(後見登記等ファイル用)
大阪家庭裁判所後見センター 後見事件申立手数料及び予納郵券一覧表
裁判所 大阪家庭裁判所 大阪家庭裁判所堺支部 大阪家庭裁判所岸和田支部 成年後見人等の報酬額のめやす
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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