遺言書とエンディングノートの違いと書いておくべき項目とは
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月21日 10時0分
10年ほど前から「終活」という言葉をよく耳にするようになりました。人生の終わりのための活動を略した言葉です。自分が死亡したときに、なるべく周りに迷惑をかけたくないということが最大の目的とされています。 エンディングノートは、終活において大きな役割を果たしますが、遺言の効力はありません。相続トラブルの回避のために、「遺言」と「エンディングノート」の違いを理解しておきましょう。
法的効力
最大の違いです。遺言には法的効力がありますが、エンディングノートに法的効力はありません。
遺言で「長男に自宅土地建物を相続させる」と記せば、これにより所有権の移転登記ができます。エンディングノートに同様の記載をしても、移転登記はできません。法定相続人全員による遺産分割協議で処分が決められることになります。
法定遺言事項
ただし、遺言に書いたことがすべて法的効力を持つわけではありません。遺言で法律上の効力を持つ事項は、法律で限定されています。
《相続に関する事項》
・推定相続人の廃除とその取消し
・相続分の指定又は指定の委託
・特別受益者の相続分に関する指定
・遺産分割方法の指定又はその委託
・遺産分割の禁止
・共同相続人間の担保責任の定め
・遺贈の減殺方法の指定
《財産処分に関する事項》
・包括遺贈及び特定遺贈
・一般財団法人の設立
・信託の設定
《身分に関する事項》
・認知
・未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
《遺言執行に関する事項》
・遺言執行者の指定又はその委託
《その他》
・祭祀承継者の指定
・保険金受取人の指定又は変更
以上が法定遺言事項です。これ以外の事項を遺言に記すことは自由ですが、法的な効力はありません。例えば「葬儀は不要」と記載しても強制力はなく、家族の判断になります。
さらに、遺言の執行をスムーズにするためには、遺言執行者を指定することが有効です。例えば遺贈、遺産分割方法の指定、寄付行為については、遺言執行者が単独で執行しますので、不満を持つ相続人がいても、確実に実現できます。
遺言執行者がない場合は、相続人に協力しない者がいると実現が困難になります。
なお、認知、推定相続人の廃除・取消は遺言執行者のみが可能です。もし、遺言で指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
エンディングノートの効用
先述のとおり、エンディングノートには法的効力がありません。あくまでも、記入した方の考えや希望を書き残すものです。
法律上のルールや法的効力がないからこそ、自由に書くことができます。書式も自由ですので、さまざまな工夫がされ、読みやすいものが多く出ています。
遺言と違い相続に関することだけでなく、これまで歩んできた人生の振り返りやこれからやりたいこと、人との繋がりなどを書いていく中で、自分自身と向き合い相続の事前準備を進めるキッカケになります。
エンディングノートの注意点
エンディングノートはすべての項目を一気に書き上げる必要はなく、記入できるところから少しずつ進められます。何度書き直しても大丈夫です。
エンディングノートの記入には相当の調査や時間を費やしますので、これが完成すると安心してしまう方が多いようです。しかし、繰り返しになりますがエンディングノートには法的効力はありません。
財産の分割など、法的効力が必要な部分については、遺言などで補強する必要があります。相続で家族に負担をかけたくないのであれば、もうひと頑張りしましょう。
内閣府の「平成30年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の一人暮らし高齢者は平成27年には男性約192万人、女性約400万人と急増しています。自分の意思を伝える手段として、遺言・エンディングノートの重要性は今後ますます大きくなるでしょう。
出典
内閣府 平成30年版高齢社会白書
Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士、宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
長年疎遠でも「元配偶者との子供」の相続権は消えない…「遺産を渡したくない」ときの有効な対策と遺言書に潜む“意外な落とし穴”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月9日 10時45分
-
「父の所有地」に自宅を建てた長男…父亡きあとに陥る〈悲劇〉を回避するには【行政書士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月8日 12時0分
-
相続財産が少額でも注意…相続争いに発展する「3つの典型トラブル」【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月2日 11時45分
-
介護しなかった弟の妻が94歳母にコソコソ遺言書を書かせ財産を“横領”…粉骨砕身の71歳姉が泣き寝入りの訳
プレジデントオンライン / 2024年8月25日 9時15分
-
全財産を長男へ…愛情の偏った「遺言書」、二男が自分の取り分をもらう方法【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月24日 10時15分
ランキング
-
1認知症や急激な老化を呼ぶ免疫暴走が起こる真因 免疫が処理できないほど体内にゴミが溜まる恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 7時0分
-
2政府は夕張市の「限界医療」から何も学んでいない…増え続ける「コロナワクチン健康被害」に医師が訴えたいこと
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 10時15分
-
3マザー・テレサもスティーブ・ジョブズも実は「サイコパス」って本当…? 人口の1%しかいない“反社会的人格者”の知られざる正体
文春オンライン / 2024年9月20日 6時10分
-
4夜中のジュースやアイスクリームが「夜型幼児」をつくる…日本人の母親6000人調査で判明
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月20日 9時26分
-
5のどの不調は「体から発せられた悲鳴」 乱れた自律神経の整え方
PHPオンライン衆知 / 2024年9月20日 11時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください