「異次元の少子化対策」の具体的な内容は? 児童手当は拡充される?
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月23日 9時40分
![「異次元の少子化対策」の具体的な内容は? 児童手当は拡充される?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_228051_0-small.jpg)
物価の上昇や教育費の上昇等、子育て世代には何かと厳しい現実が押し寄せてきています。政府としては、少しでも子育て世代に支援しようと「異次元の少子化対策」を行うこととしましたが、その内容とは、どのようなものなのでしょうか? あわせて、児童手当はどうなるのかについても解説します。
どうして異次元の少子化対策が必要なのか? その背景と対策とは?
政府は、少子化は日本が直面する最大の危機であると捉えて、政府の「こども未来戦略会議」が令和5年6月13日、「こども未来戦略方針」案を発表しました。
政府は、若い子育て世代の所得向上に全力で取り組むとし、子育て強化のための3つの課題と改善するための方法を提言しています。
~3つの課題~
・若い世代が結婚・子育ての将来展望を描けない
所得や雇用の不安から、将来の展望を描けない状況に陥っている若い世代が多くなっていることなどを指摘しています。
・子育てしづらい社会環境や子育てと両立しにくい職場環境がある
子育て世代は、周囲が子育て世代に対して冷たい印象を持っていて(電車のベビーカー問題等)、子育て世帯や子どもたち自身が安心かつ快適に日常生活を送ることができないと捉えていることなどを問題としています。
・子育てにおける経済的・精神的な負担、そして子育て世帯に不公平感が存在する
35歳未満では金銭的負担が、35歳以上では「産みたいのに生めない」等の身体的な理由があり、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないという声があります。また、子どもを預けて働きたくても環境が追い付いていないこと等が理由となると述べています。
~3つの基本理念~
・若い世代の所得を増やす
多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築を目指し、2028 年度までをめどに、週の所定労働時間が 20 時間未満の労働者について、雇用保険の適用を拡大することを検討、実施するとしています。
また、106万円や130万円の壁を意識せずに働くことができるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大や最低賃金の引き上げに取り組むこととしています。被用者が新たに106万円の壁を超えても、手取りの逆転を生じさせないための対応を本年中に決定し、制度の見直しを行うとしています。
・社会全体の構造・意識を変える
育児が女性に集中する、いわゆる「ワンオペ育児」。夫婦がともに育児協力しながら子育てを行うために、それを職場が応援し、地域や社会全体で支援する社会を作る必要があります。企業や男性、地域社会、その他にも高齢者や独身者を含めた全員が参加して、社会全体の構造や意識を変えていく必要があるとしています。
また、育児休業を取りやすい職場づくりと、育児休業制度の強化に取り組むこととしています。
・すべての子ども・子育て世帯を切れ目なく支援する
現行制度全体を見直し、親の働き方やライフスタイル、子どもの年齢によって、切れ目なく必要な支援が包括的に提供されるよう、構築することを目指しています。
地域社会では、地域の実情に応じた包括的な支援が提供されるよう、国と地方自治体が連携することが必要だとし、子ども・子育て支援の強化を図っていくことを掲げています。そのためには、幼児教育・保育事業者や企業だけでなく、NPO(民間非営利団体)・NGO(非政府組織)やボランティア団体、地域住民等を活用しながら、地域全体で支えることが重要であるとしています。
異次元の少子化対策の具体的な内容とは?
また、今後3年間の集中的な取組を「加速化プラン」として、7つの項目を挙げて前倒しで取り組むとしています。実際に加速化プランでは、どのような対策が行われるのでしょうか?
注目すべき点としては、多くの人が関心を寄せる児童手当は拡充されることになっており、所得制限は撤廃され、支給期間は現行の中学生から高校生までとなります。また、第3子の支給額については、出生時から高校生まで3万円とすることとします。
出産等の経済的負担の軽減するために、10万円の出産・子育て応援交付金を制度化することを検討しています。さらに、出産一時金を42万円から50万円へ引き上げ(2023年4月に実施済み)、保険適用外の正常分娩出産についても保険が適用されるよう検討を進めています。
子ども医療費助成は、国民健康保険の国庫負担の減額調整措置を廃止。子どもにとってより良い医療を目指し、国や地方で協議を行い、必要な措置を講ずることとしています。
高等教育費の負担軽減として、貸与型奨学金の減額返還制度を利用可能な年収上限325万円から400万円に引き上げる。子育て時期の経済的負担に配慮する観点から、子ども2人世帯は500万円以下まで、子ども3人以上世帯について600 万円以下まで引き上げます。また、2024年度からは修士段階の学生を対象として授業料後払い制度の検討も進められています。
その他にも社会保険の拡大や住宅支援の強化等も盛り込まれており、まさに今までにない、少子化対策が行われようとしています。
出典
内閣官房 「こども未来戦略方針」案 〜次元の異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて〜(令和5年6月13日 こども未来戦略会議)
執筆者:飯田道子
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会
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