そろそろ老後資金について真剣に考えようと思います…退職金を運用して年間120万円を作れますか?
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月28日 5時0分
![そろそろ老後資金について真剣に考えようと思います…退職金を運用して年間120万円を作れますか?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_229622_0-small.jpg)
マスコミで取り上げられる機会も増え、この数年で投資への関心が高まりました。来年から新NISAの制度が始まります。「これまではちゅうちょしていたけれど、この機会に」と考える人もいらっしゃるのではないでしょうか。
新NISAをきっかけに運用を始めたい
60歳以降も働くことが当たり前の時代になりました。「退職金を受け取ったけれど、今は使う必要がなく暮らせている」というケースもあるでしょう。特に同じ会社で継続して働いている場合は“これまでどおりの生活”を送り、退職金は振り込まれた銀行口座の普通預金に入ったままの場合もあります。
運用初心者の人にとって、“やってみたいけれど難しそう”“勉強が必要”“教えてくれる人がいない”など、運用を始められない理由はたくさんありそうです。
相談者の山田さん(仮名・62歳)は会社員で、すでに退職金を受け取っています。65歳まで働く予定ですが、そろそろ老後資金のことを本腰で考えようと思い始めました。普通預金に預けている退職金がもったいないので、新NISAで運用を始めようと考えています。
NISA口座は以前にネット証券で開設済みです。(1) 手数料が安い、(2) 取り扱う投資信託の数が多い、(3) 手軽に開設できる、3つのメリットがあると聞き開設しましたが、これまでは運用していませんでした。始められない理由は主に2つあり、「相談相手がいないこと」「何をどう相談したら良いか分からないこと」と、自己分析をしました。そこで今回の相談に至りました。
「何のために運用したいのか」「その目的は?」と考えた時、ズバリ運用目的は老後資金に充てるとのことです。そこで65歳以降100歳までの生活費がいくらかかるか、これを知ることが大前提と考えて、収支バランスを計算してみました。
年金収入と生活費の差額が毎月10万円、年間120万円の取り崩しが必要という試算になりました。100歳までにかかる費用となると、120万円×35年=4200万円 この金額が必要となります。
120万円のイメージから投資を考える
年間120万円を資産運用で作る……例えば資金が1000万円なら、12%で運用できれば元本を維持したままで作れる計算になりますが、常識的に考えると無理な話です。資金が3000万円になると4%となり、可能性が見えてきます。老後資金の場合、実際は運用しながら取り崩すことになります。
いくつかの金融機関ではシミュレーションツールが用意されていますので、自分の条件で試算してみると分かりやすいかもしれません。今回は分かりやすくするために、少し大きな数字である3000万円で試算してみます。
例えば、金融資産3000万円を65歳から3%運用して毎年120万円を取り崩していくと、35年後の100歳時点でも1000万円以上の残高です。本来ならば取り崩し累計額は4200万円なので、運用による恩恵の大きさに驚きます。
運用資金3000万円と毎年120万円の取り崩し金額を固定して、開始年齢65歳で年率を0%・2%・3%と変えてみると、資産寿命が90歳・約100歳・約110歳という結果が得られます。運用することにより資産寿命が延びたことが一目瞭然です。
ご存じのとおり、リターンを追求し過ぎると大きなリスクを伴うことになりかねません。「2%程度の安定的な運用で十分なので、ポートフォリオも、株式に比べて債券の比率を多めにしよう」などと検証できれば、投資のイメージが具体化します。
リスクがあることはお忘れなく
「やはり運用は必要」と思った山田さんですが、注意点が3つあります。
まず1つ目です。ご存じのとおり、新NISAは現NISAに比べて投資限度枠が大きく増額されます。これまでは年間投資限度額が120万円、投資期間も5年間に限定されていました。退職金を受け取った人にとっては、120万円ずつ毎年投資してさらに5年後にはその投資した資金をどうするのかを再考する、という面倒くささがありました。
そもそも「投資初心者が退職金を運用するのは危険」という忠告を見聞きしたことがある人もいるでしょう。新NISAになると、投資限度枠が年間360万円、トータルで1800万円までの非課税枠です。
いきなり数字が大きくなると、少額ずつ面倒な作業をせずとも、簡単に投資が始められお得な結果がもたらされるように錯覚してしまいます。一括投資もできる年間240万円の枠を一気に使ってしまっては、ちまたで言われる失敗見本になりかねません。リスク回避の基本である「長期・分散・積立」を守ることが肝要です。
2つ目の注意点は、自分のリスク許容度と照らし合わせた投資内容にすることです。リターンほしさに無理をしてしまい、市場が落ち込んだ時に怖くなって全部を売却する……これはよくある失敗例です。「相場の持ち直しを待てば良かったのに」と言う専門家もいるかもしれませんが、実際にはなかなか難しい判断です。冷静に判断できるように金額の調整が必要です。
3つ目の注意点として、100歳までの35年はとても長い期間です。当初のライフプランどおりには進みません。時々の見直しや修正をフレキシブルに行わなければなりません。容易にできるように、なるべくシンプルな内容にしておくことがお勧めです。
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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