児童手当は「子どもに支給されるお金」という認識!? 目的について考えてみよう!
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月29日 1時30分
![児童手当は「子どもに支給されるお金」という認識!? 目的について考えてみよう!](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_229916_0-small.jpg)
2023年6月、昨年末の予算編成を受けた「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針」が閣議決定されました。ここ最近、子育て支援などに関する報道が多くされていますが、その理由は、この方針に子育て支援策などの内容も盛り込まれているからです。 議論の方向性としては、児童手当に関する「所得制限の撤廃」や「支給年齢の引き上げ」が取り沙汰されていました。これらについて、賛否や是非、さまざまな意見を耳にしましたが、私たちはどのように考えていけばよいのでしょうか。 本記事ではこの辺りについて、少し考えてみたいと思います。
児童手当の法律上の目的は?
児童手当について、私たちの認識は“子どもが生まれたらもらえるお金”といったものでしょう。子育て世帯なら、一般的に、子ども1人につき月いくらの支給がある、といった具体的な内容も把握していることかと思われます。
それでは、「児童手当の目的は?」と問われたらどのように答えるでしょうか。おそらく、“子どもの養育や教育のために支給されるお金”という認識ではないでしょうか。児童手当に関して、児童手当法の第一条では目的が次のように明記されています。
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上記のとおり、児童手当には(1)「家庭等における生活の安定に寄与すること」と(2)「次代の社会を担う児童の健やかな成長に資すること」、2つの目的があります。
また、ここには「子ども・子育て支援法第七条第一項に規定する子ども・子育て支援の適切な実施を図るため」とも記されています。その「子ども・子育て支援法第七条第一項」では、次のように述べられています。
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つまり、児童手当は「子どもの健やかな成長のために、子どもおよびその保護者に対し生活の安定を図る政策」とまとめられるでしょう。
児童手当の社会政策上の位置づけとイデオロギーの変化
社会政策論の観点に立つと、児童手当という制度は「保護者などの生活の安定を図る」という点では所得保障政策に位置づけられ、「子どもの健やかな成長に寄与する」という点では福祉政策や教育政策に位置づけられると考えることができます。
現在までの経緯を振り返ると、児童手当は、どちらかというと「福祉政策という枠組みのなかで困窮家庭などに対して行われる所得保障」という位置づけで制度設計がなされてきたという背景があります。
この方向性が大きく転換したのは民主党政権下で行われた「子ども手当」の創設ですが、この手当には所得制限がなく、その後、民主党政権から自民党政権に変わり、再び所得制限が設けられました。
そして現在、骨太の方針では再び所得制限の撤廃が掲げられています。これは、少子化への危機意識の高まりによるものだと考えられます。社会政策は国際情勢や国内情勢の変化によって移り変わるものですが、その根底にあるのはイデオロギーの変化です。
今後、日本の社会は、市場を通じた個人の自助を前提にする「消極的自由主義」から、個人による自助の条件を整える手だてとして自助・互助・共助・公助を位置づける「積極的自由主義」に移り変わっていく可能性があることが、児童手当の政策的位置づけの変化からうかがうことができます。
まとめ
児童手当については、つい「金額はいくらか」「何歳まで支給されるか」「所得制限は」など、金銭的なところに目をやりがちです。
しかし同時に、児童手当本来の目的が何で、その目的がどのような社会的背景の下で培われてきたのかなど、人々の価値観や考えがどのように変化し、今後どのように移り変わっていくのか、ということも重要でしょう。
児童手当の目的は「子どもの健やかな成長のために、子どもおよびその保護者に対し生活の安定を図る」ことです。この本来の目的に照らし合わせて考えるならば、児童手当は福祉政策のなかに位置するものの、同時に、所得の多寡に関係なく支給すべきものなのではないか、という議論も当然ながら成立するでしょう。
しかし、時の政府が国民の声をどのように受け止めるかで、国の福祉に対する戦略は変わっていきます。
今回考えたかったことは、「家計を決定づける要素のひとつに国の方向性という大きな枠組みが存在する」ということです。私たち国民一人ひとりは国という環境のなかで生きており、人生は環境に左右されながらも推移していくもの、という視点を持つことが重要です。
何かあったら全て本人のせいだとする風潮もありますが、そのような考え方は自助でも自己責任でもありません。支え合える環境があってこその自助であり、自己責任である、という認識を共有することが大切です。
児童手当を巡る議論は、本質的にはここが論点となっており、自助・互助・共助・公助について国民一人ひとりがどのように考えるかを巡る議論であるといえます。
家計は、単に「一家におけるお金のやりくり」に過ぎません。家計のみに着目するより、家計を決定づける要素について自分なりに考えることのほうが、マネーリテラシーを身につけるうえで重要といえるでしょう。
出典
e-Gov法令検索 児童手当法
e-Gov法令検索 子ども・子育て支援法
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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