繰下げ受給は国民年金と厚生年金を別の時期に受給できる!? 繰上げ受給でも可能なの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年8月29日 7時20分
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老後資金の計画を立てる際に、老齢年金の受取開始時期について悩む人もいるのではないでしょうか。会社員だった人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらか一方のみの受取開始時期を別にしたいと考える人もいるでしょう。 老齢基礎年金と老齢厚生年金を別の時期に受給できるのは、年金の受取開始時期を遅らせる繰下げ受給のみです。一方、繰上げ受給は老齢基礎年金と老齢厚生年金の同時請求が必要になります。本記事では、繰下げ受給と繰上げ受給の制度について詳しく解説します。
繰下げ受給と繰上げ受給は年金を受け取れる時期が異なる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として65歳から受け取れますが、希望すれば66歳以降75歳までに繰下げたり、60歳からに繰上げたりできます。年金の受取開始時期を遅らせる制度を「繰下げ受給」、受取開始時期を早める制度を「繰上げ受給」といい、受取開始時期をいつにするのかによって減額率や増減率が異なる仕組みです。
同額の保険料を納付していても、年金の受取開始時期によっては実際に受け取れる年金額が異なります。また、一度適用された減額率や増減率は一生涯適用されるため、自身の生活費や健康状態などを考慮して慎重に判断する必要があるでしょう。
繰下げ受給は年金の受給開始時期を遅らせる制度
繰下げ受給とは、年金の受取開始時期を66歳以降、最大75歳までに遅らせる制度です。1ヶ月あたりの繰下げ増減率は0.7%ですが、年金の受取開始時期を遅らせるほどに高い増減率が適用されます。繰下げ請求を行った年齢別の増減率は、図表1のとおりです。
【図表1】
繰下げ請求を行った年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳 | 8.4%(0ヶ月)~16.1%(11ヶ月) |
67歳 | 16.8%(0ヶ月)~24.5%(11ヶ月) |
68歳 | 25.2%(0ヶ月)~32.9%(11ヶ月) |
69歳 | 33.6%(0ヶ月)~41.3%(11ヶ月) |
70歳 | 42.0%(0ヶ月)~49.7%(11ヶ月) |
71歳 | 50.4%(0ヶ月)~58.1%(11ヶ月) |
72歳 | 58.8%(0ヶ月)~66.5%(11ヶ月) |
73歳 | 67.2%(0ヶ月)~74.9%(11ヶ月) |
74歳 | 75.6%(0ヶ月)~83.3%(11ヶ月) |
75歳 | 84.0%(0ヶ月) |
出典:日本年金機構 年金の繰下げ受給
繰下げ請求を行った年齢が70歳0ヶ月なら42.0%、75歳0ヶ月なら84.0%にまで増額できます。
ただし、昭和27年4月1日以前生まれの人(または平成29年3月31日以前に老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取る権利が発生している人)は繰下げ受給の上限年齢が70歳(権利発生から5年後)までとなり、増額率は最大42%となるので注意してください。
繰上げ受給は年金の受給開始時期を早める制度
繰下げ受給が年金の受給開始時期を遅らせる制度なのに対し、繰上げ受給は60歳からに早める制度です。年金を早く受け取れますが、繰上げ請求を行った年齢に応じて年金額が減額します。昭和37年4月2日以降生まれの人の1ヶ月あたりの減額率は0.4%となり、図表2のとおり繰上げ請求を60歳0ヶ月でした場合の減額率は24.0%です。
【図表2】
繰上げ請求を行った年齢 | 増額率 |
---|---|
60歳 | 24.0%(0ヶ月)~19.6%(11ヶ月) |
61歳 | 19.2%(0ヶ月)~14.8%(11ヶ月) |
62歳 | 14.4%(0ヶ月)~10.0%(11ヶ月) |
63歳 | 9.6%(0ヶ月)~5.2%(11ヶ月) |
64歳 | 4.8%(0ヶ月)~0.4%(11ヶ月) |
出典:日本年金機構 年金の繰上げ受給
なお、昭和37年4月1日以前生まれの人は、1ヶ月あたりの減額率が0.5%となりますので、注意してください。
減額された年金は、繰上げ請求手続きを行った翌月分から受け取れます。年金が減額される以外にも、繰上げ請求には「国民年金の任意加入ができない」「保険料の追納ができない」「寡婦年金は支給されない、寡婦年金を受給中の人は権利を喪失する」など、さまざまな注意点があるので必ずチェックしてから請求手続きを行いましょう。
繰上げ受給は国民年金と厚生年金を別の時期に受け取れない
繰下げ受給は老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の受取開始時期を別にできますが、繰上げ請求は必ず同時に請求しなければなりません。老齢基礎年金だけ60歳から受け取って、老齢厚生年金は65歳から受け取り始めることはできないので注意してください。
「生活費や医療費が足りないので、60歳前半のうちに年金をもらいたい」「健康状態などを考えたら長生きする自信がない」などという人は繰上げ受給を選択してもよいでしょう。一方、生活に不自由しない程度の貯金がある、働いて収入を得られそうな人は、繰上げ受給をするよりも65歳以降に年金を受け取ったほうが現実的な選択肢といえるでしょう。
国民年金と厚生年金を別の時期に受け取れるのは繰下げ受給
老齢基礎年金と老齢厚生年金を別の時期に受け取れるのは、繰下げ受給のみです。年金の受取開始時期を60歳から64歳までの間に早める繰上げ受給は、同時請求しか認められません。体調が悪く働けないため生活費や医療費が足りないなどという人は、繰上げ受給を選んでもよいでしょう。
しかし、働けるだけの体力があったり、健康状態にも特に問題がなかったりするのであれば、繰上げ受給を選択する前に働いて収入を得ることも検討してみてください。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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