万博工事に「時間外労働の上限を適用しないよう要請」これってもし民間企業が要請した場合はどうなるの…?
ファイナンシャルフィールド / 2023年9月2日 10時10分
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大阪・関西万博(日本国際博覧会)工事に関して、2023年7月に日本国際博覧会協会(万博協会)から政府へ、時間外労働の上限規制を適用しないように要望したというニュースが報じられました。 「そもそも時間外労働の上限規制とは何か」「三六協定とは違うのか」など、疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。 時間外労働の上限規制は、労働者に一定の時間外労働をさせた場合に、企業へ罰則を科す制度のことをいいます。 今回は、万博工事に際して、どのような背景のもとで、先のような要請がなされたのか、民間企業でそうした申請をした場合ならば、許可が下りるのかについて、ご紹介します。
万博工事に際しての要請内容
「大阪・関西万博」に向けたパビリオン建設工事に遅れがあることから、日本国際博覧会協会から政府へ、時間外労働の上限規制を適用しないように求めたと報道されました。
時間外労働の上限規制とは、臨時的な特別な事情があり、かつ労使間で合意があったとしても、年720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満を超えて、労働させてはならないとするものです。
また同規制では、労働者に時間外労働をさせる場合には、企業は、25%を超える割増賃金を支払うように努める必要があると定められています。
もともと、三六協定を結べば、月45時間・年間360時間まで残業できることをご存じの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、時間外労働の上限規制が入るまでは、そのラインを超えても、企業に罰則はありませんでした。
そこで、働き方改革を推進するにあたり、2019年に、年720時間などの上限を超えると罰則を受けるように、上限規制が設けられます。
そのなかで、建設業界では猶予期間が設けられており、2024年4月1日から、時間外労働の上限規制が導入される予定になっていました。
働き方が変わり、人手不足がより深刻になることから、これは2024年問題と呼ばれています。
現在着手されているパビリオン建設について、建設準備の遅れを理由に、この時間外労働の上限規制を適用しないように求めたというのが、今回の報道です。
政府が推進している働き方改革と逆行するため、要望が受け入れられるかは、2023年8月時点では不明なままとなっています。
民間企業でも同じことは起こる?
時間外労働は、基本的には三六協定が結ばれている場合ならば、月45時間・年360時間までは可能です。
また企業は、臨時的で特別な理由があれば、年間720時間をはじめとした「上限」までは、罰則を受けずに労働者を勤務させられます。
しかし「臨時的で特別な理由」として認められることとは、決算業務や納期のひっ迫、突発的なトラブルの対応など、通常、予見できない業務量の大幅な増加によるもののみになります。
「業務上やむを得ない」といった、恒常化する可能性があることは認められません。
例えば、厚生労働省が挙げている適用除外の業務例には、災害時における復旧・復興事業があります。
万博のパビリオン建設工事でも慎重に検討される問題のため、民間企業で簡単に要請が通るものとはいえないでしょう。
上限なしで勤務させられる可能性は低い
臨時的で特別な理由があれば、会社は労働者を、年間720時間などの上限ラインまで勤務させられますが、特別の事情とは、予見できない業務量の大幅な増加によるもののみになります。
多くの国が関わる万博においても、すぐに要望が通らない点からも、そのハードルの高さがうかがえます。
企業がなんらかの理由を付けて、従業員を上限なしに勤務させることは、制度上はできないといえるでしょう。
出典
厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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