「第3号被保険者制度」が廃止になる!? 保険料負担が「年800万円」増えるのに、受け取れる年金額は変わらないって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年9月8日 2時20分
近年、扶養制度のあり方についての議論が加速しています。2023年1月には厚生労働省から「配偶者手当(家族手当、扶養手当なども含む)」のあり方の検討資料が公表されました。2023年10月には「年収106万円の壁」の問題を解消するべく、新たな助成金制度が導入される予定となっています。 社会の就業状況が大きく変化している中であっても、いまだにさまざまな扶養制度が残っていることがパートタイム労働者の就業調整の要因となっていることが指摘されているからです。 本記事では、扶養制度の代表格ともいえる「第3号被保険者制度」について見ていきたいと思います。今後、廃止された場合の影響についても確認します。
第3号被保険者制度とは
日本の年金制度では、20歳以上60歳未満の人はすべて国民年金への加入が義務付けられています。そして加入者(被保険者)は、図表1のとおり第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つに区分されます。
【図表1】
政府広報オンライン 会社員などの配偶者に扶養されている方、扶養されていた方(主婦・主夫)へ知っておきたい「年金」の手続
そして第3号被保険者とは、会社員や公務員などが該当する第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収130万円未満の人を指します。専業主婦(夫)はもちろんのこと、年収の調整をしながら扶養内で働いているパートの人のほとんども、第3号被保険者に該当しているでしょう。
第3号被保険者は年金保険料の負担なし
第3号被保険者には、第1号被保険者と第2号被保険者にはない特徴があります。それは、自身での年金保険料の負担なしで将来基礎年金を受け取れることです。これは第1号被保険者に扶養されている配偶者にはない特徴です。
つまり、20歳から60歳までずっと第1号被保険者だった人と第3号被保険者だった人の年金受給額は同額になります。これが「第3号被保険者制度は不公平だ」という声が集まるゆえんです。
国は労働力と社会保障費の不足を解決したい
第3号被保険者に該当し続けたい働く主婦(夫)は、労働時間を調整しながら働きます。すると、労働力不足になる会社が多くなります。特に物価高騰が続き、賃金も値上がりしている昨今では、年収130万円未満を維持するためにさらに労働時間を減らす人が増え、労働力不足が深刻化する可能性が高くなります。
また国は、団塊世代が75歳以上となる2025年問題を前に、社会保障費も確保しなければなりません。端的に言うと、労働力と社会保障費を確保するためには「扶養の壁は邪魔」なのです。
国民年金保険料は40年間で約800万円
2023年度の国民年金保険料は1ヶ月当たり1万6520円で、年間19万8240円です。これを20歳から60歳までの40年間支払うとすると約800万円です。
もし今後、第3号被保険者制度が廃止された場合には、第2号被保険者に扶養される専業主婦(夫)が自身で納付せずに受け取れていた基礎年金が、満額受給しようと思うと約800万円の保険料を納付しなければならなくなります。
まとめ
扶養制度の見直しについては長年の論点となってはいましたが、具体的な改正が行われそうな気配となってきました。第3号被保険者制度が廃止となる日もそう遠くないかもしれません。
ただ、第2号被保険者が働けているのは、第3号被保険者の貢献があるからという視点も忘れてはいけません。第3号被保険者制度をなくし、働いてもらう方向にするのであれば、これまで専業主婦(夫)が無償で担っていた家事育児介護を平等に負担できるようにする仕組みが必要です。
出典
厚生労働省 「配偶者手当」の在り方の 検討に向けて
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士
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