【親の認知症】「法定後見人」が決まっても「家の売却」ができないことがあるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2023年9月13日 9時40分
![【親の認知症】「法定後見人」が決まっても「家の売却」ができないことがあるって本当?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_233560_0-small.jpg)
認知症の発症・悪化により日常生活に支障をきたすおそれがある場合、日常生活に必要な契約や手続などを本人(被後見人)ではなく後見人などが代理で行ったり、後見を受けている本人が単独で行った契約行為を後見人が取り消したりすることができます。 しかし、すべての行為を後見人が代理できるわけではなく、マイホームの利用・売却については制限されています。
成年後見制度とは?
認知症や加齢・障害などにより適切な判断力を欠いてしまい必要な契約や手続(日常生活に関する行為を除く。)を単独で行うことが難しくなった場合やそのおそれがあると本人が感じた場合、本人の契約行為等を代理したり、取り消したりする「成年後見制度」を利用することができます。
成年後見制度は本人の契約による「任意後見制度」と配偶者や家族などからの申し立てによって家庭裁判所が関与する「法定後見制度」に大別されます。
また、法定後見制度は、障害や認知症等の本人の状況によって「補助」「保佐」「後見」の3つに分かれており、後見は日常生活や重要な契約・手続を行うことが難しい状態になった場合、家庭裁判所に審理を申し込み、審判を受けることで開始されます。
後見は3つの類型のなかでも最も厚く、原則として日用品の売買や手術などへの医療行為への同意、身元保証などを除くすべての法律行為を代理し、被後見人が1人で行った法律行為を取り消すことができます。
マイホームの処分には家庭裁判所の認可が必要
成年後見制度は認知症などで日常生活をおくることが難しい方をサポートするため、後見人は被後見人の財産を管理・処分することもできますが、マイホームの売却や抵当権の設定、賃貸借契約の締結といった利用に関しては家庭裁判所の認可を受ける必要があり、これを行わずに行った場合は無効になります。
マイホームに関して特別な保護がなされている理由は、マイホームの処分・利用が被後見人の生活に重大な影響を与えるためで、この審査は厳格に行われます。仮に被後見人が老人ホームなどの介護施設に入居しており、帰る見込みのない空き家であるというだけでは売却・処分することはできません。
マイホームの売却・利用にはいくつかの条件があります。主なものとして預貯金や金融資産などの他に利用可能な財産がなく売却・利用の必要性があり、被後見人や他の家族・親族が売却・利用に賛成していること、売却条件や売却代金の管理・保管方法について厳しく審査されます。
このように認知症を患った場合、直ちにマイホームを売却することなどが難しくなっています。
預貯金などの利用しやすい資産が少なく介護資金などにマイホームの活用を想定している場合は事前にマイホームの売却に関する代理権の付与や、贈与などでマイホームの所有権を移すなどの対策が必要になります。
まとめ
日本は高齢化社会に直面し、65歳以上の5.4人に1人が将来的に認知症を患うと予想されており、両親の介護への対策は喫緊の課題となっています。
認知症では不要な借金を繰り返してしまうなどの問題行為が生じることもあるため早めに、任意後見契約を締結しておいたり、不要な契約を行うことを回避できるように成年後見制度を利用することも選択肢となります。
成年後見制度は、被後見人の状態により、補助・保佐・後見の3種類があり、代理人の権限は補助が最も狭く、保佐・後見の順に広がっていきます。
成年後見制度は被後見人を守ることができる反面、重要な財産であるマイホームの売却・利用に家庭裁判所の許可が必要となり、無許可での契約は無効となります。この許可のための審査は厳格で、老後の生活資金確保のために早めに売却などを行うということが難しくなっています。
成年後見制度をしっかりと活用するためには制度の仕組みをよく理解することが必要です。場合によっては弁護士や司法書士といった法律の専門家を交えてマイホーム活用の方針を定めておくようにしましょう。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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