親から相続した「空き家」を放置… 管理を怠れば税負担が増加する!?
ファイナンシャルフィールド / 2023年9月18日 5時0分
![親から相続した「空き家」を放置… 管理を怠れば税負担が増加する!?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_234561_0-small.jpg)
親が亡くなり、親が住んでいた家を相続はしたものの、空き家のまま放置していると、さまざまな問題が起こります。管理のための最小限の費用に加えて、固定資産税などの税金が継続的な負担になります。さらに、もし管理が不十分な空き家と自治体から認定されると、固定資産税の減免措置の停止が待っています。
増える空き家を放置できない
日本全国で空き家の数は急速に増え続けています。総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、2018年時点での総数は約850万戸となっており、総戸数に占める割合も約14%近くになっています。新築の件数が増えていることに加え、急速に少子高齢化が進んでいることが、空き家急増の要因と推測されます。ヨーロッパなどのように、古く建てられた家に100年以上住み続ける風土とは、大きな違いがあります。
空き家が長期間にわたり放置され続けると、その地域の景観が損なわれていきます。敷地内の草木が生い茂り、ゴミの不法投棄や不審者の侵入なども起こり、最終的には家屋の倒壊という事態になりかねません。そのため、近所からの苦情が多く寄せられている自治体としても、この問題を放置することもできません。
そのため管理が行き届いていない空き家に対して、倒壊の危険がない状態でも指定を行い、固定資産税の優遇措置が見直されることになりました。2023年6月の通常国会で「空き家対策特別措置法」の改正案が成立し、半年以内に施行されます。これまで以上に空き家対策の徹底を狙った、制度改正といえるかもしれません。
従来の指定は「特定空き家」だけ
これまでは、危険な空き家への指定として「特定空き家」という区分がありました。これは、(1) 建物の倒壊などの危険がある、(2) 廃棄物の集積や異臭の発生による衛生上有害、(3) 雑草や樹木の繁茂による環境の劣悪化、といった条件を満たした空き家に対し、この指定を行いました。
指定が行われると、住宅用地特例として受けていた固定資産税減免措置の解除、必要な整備や強制代執行が実施された際の費用負担、などが実施されてきました。さらに自治体の改善命令に従わない場合は、過料も課せられました。指定を受けた空き家所有者にとっては、かなりの負担増になります。
しかし、こうした決定をするまでには、指定要件充足の確認や、民事に行政が介入できる限界の議論の存在などがあり、さらに指定に至らなくても問題を抱えた空き家への苦情など、「特定空き家」指定だけでは、解決できない多くの問題が出てきました。その一方で、相続空き家は増え続けており、ゴーストタウン化が進み、街の景観自体が大きく変わってしまう地域も増えてきました。これに対処するには、「特定空き家」の指定だけでは不十分との結論から、新たな指定基準が設けられました。
新たな指定とは別に、特定空き家への対応策も強化されます。倒壊の危険の高い空き家に対して、緊急時の「強制代執行制度」を設け、これまで以上に、倒壊に可能性の高い空き家を取り壊す作業ができるように改正されました。
新しく制定された「管理不全空き家」
空き家への新たな指定制度は、「特定空き家」の状態には至ってはいないが、その可能性があるため、所有者に対して適切な管理を促す狙いがあります。
管理を怠ると特定空き家に指定されそうな空き家を「管理不全空き家」と指定し、これまでの状態を維持できるよう努力を促す内容となっています。これまでは、決められた要件を満たさないかぎり、特定空き家への指定はできませんでしたが、これにより特定空き家の前段階での指定が可能になり、所有者への注意喚起に役立つと思われます。
具体的には、空き家の状態が、(1) 外壁や門扉、玄関扉などに損傷が目視できる、(2) 雑草の除去や樹木の手入れが不十分、(3) 倒壊の危険性は低いが、家屋の損傷・変形が進行している、といった、放置すると特定空き家となりうる家屋を、自治体が指定するものです。このため、しばらくの間は「特定空き家」に指定されることはないだろう、と考えていた所有者にとっては困惑する事態といえるかもしれません。
これに指定されると、自治体からの改善指導・勧告があります。もしそれを順守できなくても過料などの罰則はありませんが、固定資産税の住宅地優遇特例が解除されます。特に大都市など地価の高い地域にある空き家について、優遇特例が解除されると固定資産税の負担が大きく増えることになります。
指定を受けないための対応策
これまで以上に、空き家の所有者にとっては、その保全に注意義務が課せられます。空き家にすることで、家自体傷みが急速にひどくなり「管理不全空き家」に指定されることは避けなければなりません。家の修繕だけでなく、除草作業や庭木の手入れが、いま以上に必要になります。
特に近所からのクレームに対し、行政サイドでも無視できなくなるでしょう。「両親が住んでいた家だから」とか「相続人の合意ができなかったから」など理由で、取りあえずの相続が行われても、有効利用する予定がないのであれば、そのまま所有し続けるメリットが、薄れてくることは間違いありません。
もし空き家のある土地を売却できれば、それも大きな選択肢になります。都市部であれば、コストはかかりますが空き家を解体して、さら地にしたほうが売却しやすいかもしれません。空き家の増加に苦慮している自治体によっては、独自の新税を導入する動きもあり、空き家の所有者にとっては、対応策が真剣に求められています。
出典
総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要(平成31年4月26日)
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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