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老後の医療費・介護費は1ヶ月当たりいくらかかる?

ファイナンシャルフィールド / 2023年9月25日 11時0分

老後の医療費・介護費は1ヶ月当たりいくらかかる?

生活費のなかでも、食費や光熱費などと違い、医療費や介護費は支出をコントロールしにくい費用といえます。特に老後は、多くの収入が望めなかったり、医療・介護サービスを利用する可能性が高まったりして、医療費や介護費が家計に与える影響は少なくありません。   この記事では、老後にかかる医療費や介護費について、その目安を解説していきます。

生活上の最も不安なこと

公益財団法人生命保険文化センターが全国の18~79 歳の男女個人に実施した2022(令和4)年度生活保障に関する調査によれば、生活上最も不安に感じていることには、自分自身や家族が「病気や事故にあうこと」があげられています。
 
また、この調査結果では、自分や家族の「介護が必要となること」も、病気や事故の次に不安に感じていることとしてあげられています。
 


出典:公益財団法人生命保険文化センター2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
 
一方で、生活上の最も不安なことに対する現在の経済的準備状況については、以下のような結果になっています。
 

不安項目 準備できて
いる
準備ができて
いない
分からない
自分が病気や事故にあうこと 44.1% 53.3% 2.6%
自分の介護が必要となること 39.2% 58.5% 2.4%
家族の者が病気や事故にあうこと 37.3% 59.5% 3.3%
親の介護が必要となること 17.9% 81.6% 0.5%

 
生活上の不安に感じていることと、それに対する経済的準備状況から、医療費や介護費は多くの人が心配している費用であることが読み取れます。
 

年間の1人当たりの医療費

厚生労働省が発表した「令和2(2020)年度 国民医療費の概況」によれば、人口1人当たりの国民医療費は、以下のようになっています。
 
国民医療費とは当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用です。その費用には医科診療や歯科診療にかかる診療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費などが含まれます。
 
65歳以上では、65歳未満の場合に比べて医療費が約4倍に急増しているのが分かります。
 

年齢 1人当たりの国民医療費
(年間)
1人当たりの国民医療費
(1ヶ月当たりに換算した場合)
65歳未満 18万3500円 1万5291円
0歳~14歳 14万100円 1万1675円
15歳~44歳 12万2000円 1万166円
44歳~64歳 27万7000円 2万3083円
65歳以上 73万3700円 6万1141円
70歳以上 80万7100円 6万7258円
75歳以上 90万2000円 7万5166円

※厚生労働省「令和2(2020)年度 国民医療費の概況」における「5 年齢階級別国民医療費」より筆者作成
 
ただし、医療費は全額自己負担になるわけではなく、公的医療保険によって自己負担分は3割以下に抑えられています。
 

老後における1ヶ月当たりの医療費の自己負担額の目安

医療費の窓口負担割合は、年齢や所得によって異なります。65歳から69歳までは3割負担、70歳から74歳までは原則2割負担、後期高齢者である75歳以上は原則1割負担です。
 
ただし、70歳以上で現役並みに所得がある人の自己負担は3割、75歳以上で一定以上の所得がある人は2割負担となる場合があります。
 
65歳以上の人1人当たりにかかる国民医療費を目安の1つとすると、1ヶ月当たりの医療費に対する自己負担額は負担割合に応じて以下のようになります。
 

1ヶ月当たりの医療費 1割負担の場合 2割負担の場合 3割負担の場合
6万1141円 6114円 1万2228円 1万8342円

 

自己負担額が高額になった場合の高額療養費制度

医療費の自己負担は3割以下で済むとはいえ、医療費が高額になれば、その分の自己負担額も高額になります。例えば、1ヶ月の医療費に100万円かかったとすると、3割負担でも30万円の出費になります。
 
このような高額な負担を軽減するために「高額療養費制度」があります。この制度により、1ヶ月ごとの自己負担の上限額が設けられており、それを超える分を負担する必要がなくなります。
 
高額療養費制度における上限額は、以下のようになっています。
 


 

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
 
高額療養費制度には、さらに負担を軽くする「世帯合算」や「多数回該当」といった仕組みもあります。
 
世帯合算は、1人1回分の窓口負担では上限額を超えなくても、複数の受診や、同じ世帯の他の人の受診について、それぞれが窓口で支払った自己負担額を1ヶ月単位で合算できるものです。合算額が一定額を超えていれば、その超えた分が高額療養費として支給されます。70歳以上の人は自己負担限度額をすべて合算できますが、69歳以下の人の受診については、2万1000円以上の自己負担のみ合算されます。
 
多数回該当は、過去12ヶ月以内に3回以上、上限額に達した場合、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がる仕組みです。
 

老後にかかる1ヶ月当たりの介護費用の目安

公益財団法人生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、月々の費用は1ヶ月当たり平均で8万3000円となっています。
 


出典:公益財団法人生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
 
また、介護を行った場所別では、「在宅」より「施設」での介護費用が高くなっているようです。
 

出典:公益財団法人生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
 
なお、月々の費用とは別に、一時費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用)の合計額は平均74万円となっています。
 

介護費用の総額の目安

同調査からは、介護期間についての調査結果も出されていて、介護を始めてからの期間(介護中の場合は経過期間)は、平均で61.1ヶ月(約5年1ヶ月)となっています。
 
平均的な月々の介護費用(8万3000円)と介護期間(61.1ヶ月)、および一時費用(74万円)から、介護費用の総額として約581万円を1つの目安と考えることができます。
 

介護保険における介護サービス費用の自己負担額

自治体などに申請して要支援や要介護の認定を受けた人は、要介護度に応じた介護サービスを受けることができます。このときの自己負担額は介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)です。
 

■居宅サービスの1ヶ月当たりの利用限度額

以下の利用限度額の範囲内で介護サービスを利用した場合、自己負担は利用額の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)ですが、利用限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担になることに注意しましょう。

要支援1 5万320円
要支援2 10万5310円
要介護1 16万7650円
要介護2 19万7050円
要介護3 27万480円
要介護4 30万9380円
要介護5 36万2170円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
 

■施設サービス自己負担の1ヶ月当たりの目安

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の1ヶ月の自己負担の目安は以下の通りです。多床室や個室など住環境の違いによって自己負担額が変わります。
 
要介護5の人が多床室を利用した場合

施設サービス費の1割 約2万5200円(847単位×30日)=2万5410円
居住費 約2万5650円(855円/日)
食費 約4万3350円(1445円/日)
日常生活費 約1万円(施設により設定される)
合計 約10万4200円

 
要介護5の人が多床室を利用した場合

施設サービス費の1割 約2万7900円(929単位×30日)=2万7870円
居住費 約6万180円(2006円/日)
食費 約4万3350円(1445円/日)
日常生活費 約1万円(施設により設定される)
合計 約14万1430円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
 

自己負担額が高額になった場合の高額介護サービス費

介護サービスを利用している月々の自己負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く)の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、超えた分が介護保険から支給されます。
 

設定区分 対象者 負担の上限額(月額)
第1段階 生活保護を受給している人等 1万5000円(個人)
第2段階 市町村民税世帯非課税で公的年金等収入金額+その他の合計所得金額の合計が80万円以下 2万4600円(世帯)
1万5000円(個人)
第3段階 市町村民税世帯非課税で第1段階および第2段階に該当しない人 2万4600円(世帯)
第4段階 (1)市区町村民税課税世帯~課税所得380万円(年収約770万円)未満
(2)課税所得380万円(年収約770万円)~690万円(年収約1160万円)未満
(3)課税所得690万円(年収約1160万円)以上
(1)4万4400円(世帯)
(2)9万3000円(世帯)
(3)14万100円(世帯)

※「世帯」とは住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した人全員の負担の合計の上限額を指し、「個人」とは介護サービスを利用した本人の負担の上限額を指します。
※第4段階における課税所得による判定は、同一世帯内の65歳以上の人の課税所得により判定します。
 
出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
 

医療保険と介護保険の両方に自己負担が生じた場合の負担軽減

公的な医療保険や介護保険によって、各費用の自己負担が軽減されることを解説してきました。
 
なお、同じ医療保険の世帯内で、医療保険と介護保険の両方に自己負担が生じた場合は、合算後の負担額が軽減される「高額医療・高額介護合算制度」といった制度もあります。決められた限度額(年額)が500円を超える場合に、医療保険者に申請をすると超えた分が支給されます。
 
この制度における負担上限額(世帯単位)は以下のとおりです。

75歳以上 70~74歳 70歳未満
介護保険
+後期高齢者医療
介護保険
+被用者保険または国民健康保険
年収約1160万円 212万円
年収約770~約1160万円 141万円
年収約370~約770万円 67万円
~年収約370万円 56万円 60万円
市町村民税世帯非課税等 31万円 34万円
市町村民税世帯非課税かつ年金収入80万円以下等 本人のみ 19万円
介護利用者が複数 31万円

出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
 

まとめ

老後にかかる医療費・介護費用の目安や、自己負担額が高額になったときに、負担を軽減できる可能性のある制度について解説してきました。
 
実際にかかる費用、もしくはかけられる費用については人それぞれです。それでもある程度の目安を知っておくことや、制度について理解しておくことは、老後の生活費を準備する上での参考になるかと思います。
 
また、老後の生活費を準備するだけでなく、健康を維持するための適度な運動や食事といった生活習慣を心掛けておくことで、健康寿命を延ばすようにしましょう。
 

出典

公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
厚生労働省 令和2(2020)年度 国民医療費の概況
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
公益財団法人生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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