スウェーデンのキャッシュレス社会から考える、日本もこの流れの後を追うのか?社会的にはどんな課題が?
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月29日 10時30分
キャッシュレス競争の先端を走るスウェーデンでは、車からペットボトル一本までクレジットカードで買うことができます。 現金を使う機会が劇的に減り便利になっている一方で、高齢者や移民など社会的な弱者にとっては、余計なコストがかかる原因にもなっています。 日本もいずれ、キャッシュレス化が進むとどんなことが起こり得るのか、キャッシュレスのトップランナーであるスウェーデンの事例から考えてみます。
スウェーデンのキャッシュレス社会の現状
英国BBCニュース(2018年4月)によると、首都ストックホルムのウーデンプラン広場では、どの銀行も現金の取り扱いは行っておらず、スウェーデンの銀行の大半は窓口での現金引き出しや現金の取り扱いを止めてしばらくたつそうです。
喫茶店でコーヒーを飲んでも、クレジットカードか携帯のアプリで支払い、バスに乗っても現金は不要といいます。
旅行でスウェーデンを訪れる際は、日本円しか持たずにうっかり街へ出てしまうと、銀行では現金は扱いませんので両替できず、たとえ両替できたとしても使える所もほとんどないので、注意しなければなりません。
そこでICチップ付のクレジットカードが必須になりますが、支払い時は署名ではなく、PIN(Personal Identification Number)という通常4桁の暗証番号を入力する方法が多いので、PINを登録しているか、PINを正確に覚えているか、カード会社へ確認しておくと無難でしょう。
スウェーデン中央銀行によると、一般のスウェーデン人の現金での買い物の割合は、2010年には40%前後だったものが、現在では15%まで下がっているそうです。
政府がそうした政策を積極的にとっている以外にも、文化や考え方の違いがあると思われます。
欧米はもともと現金を持たない文化
欧米では、クレジットカード作成の審査が日本より厳しいこともあり、自分の銀行口座を引き出すキャッシュカードには、デビットカードの機能がついていることが一般的です。
デビットカードは、使った金額が翌営業日ころに口座から自動引き落としされるので、現金を使ったのと同じような感覚で利用できます。
デビットカードのみでは利用枠が不足する人は、クレジットカードの申請をするという順番が一般的ですので、デビットカードが後発となった日本とは事情が異なります。
さらに、その口座とリンクする個人用小切手を持つことができます。
小切手に受取相手名と金額を書き、署名をして受取相手へ送ると、相手がそれを銀行へ持ち込み現金化することができ、支払者の口座からお金が引き落とされます。
小切手に書かれた受取人以外が銀行へ持ち込んでも現金化できないため、比較的安全な決済手段でした。現在スウェーデンの銀行では、この個人用小切手の扱いを辞めている所が多いようですが、
欧米では、こうした現金そのものではない手段を古くから用いてきた歴史と文化があります。
キャッシュレスの利点・欠点
キャッシュレスの一番の利点は、その利便性でしょう。買い手は現金を持ち歩く手間が省け、売り手も現金残高の帳尻を合わせる手間がなくなります。
政府も、紙幣やコインを発行するコストと手間がなくなります。お金の流通の透明度も増し、いわゆるあやしいお金のやり取りを防ぐこともできるかもしれません。
欠点としては、クレジットカードの盗難・スキミング・不正使用などの恐れがあり、停電時などには決済ができない、などのリスクがあります。
パソコン不使用の高齢者などは、ネットバンキングを利用できないため、スウェーデンでは、銀行窓口での送金に追加手数料が950円ほどかかり、負担が増えることになりました。また、クレジットカードの利用は、請求まで一定期間あるため、利用額の把握をしっかりしておかないと使いすぎてしまう可能性があります。
日本でのキャッシュレスの流れは?
日本でも、最近は様々な電子マネー、プリペイドカード、携帯電話アプリ、デビットカード、クレジットカードなど、支払い手段は多様化しており、以前に比べれば現金を持たずに済むようになりました。しかし、クレジットカード以外は、どれも国内でしか流通できない手段です。
お店によっては、クレジットカードの最低利用額を設定していることもあるでしょう。例えば、インバウンドの旅行客はすべてキャッシュレスで観光するのは難しいといえます。
もともとデビットカードや個人用小切手を持たなかった日本では、欧米に比べ現金主義の概念もあるかもしれません。
わが国では、高齢者比率が高まる中で、パソコンやタブレットを使わない人への対応や、自然災害が多いための停電リスクを考える等、課題は少なくありません。
キャッシュレスへの移行には、これらの対処法をよく考えて進めなければならないでしょう。
Text:岩永 真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)
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