そのFPアドバイスはアナタに合っていますか?…「地震保険は保険料が高いのに火災保険の半分までしか出ないから無意味?」
ファイナンシャルフィールド / 2018年8月29日 8時30分
1964年というと「東京オリンピック」ばかりが注目されますが、実は同じ年の6月に地震保険誕生のきっかけになった新潟地震がありました。 ちなみに、地震保険の誕生に尽力した、当時の大蔵大臣は田中角栄(後の総理大臣)さんでした。地震保険は火災保険と共に代理店等で契約の手続きを行いますが、実は地震保険と他の保険とでは大きな違いがあります。 では、どのように違うのでしょうか?地震保険の特徴をみていくことにしましょう。
地震保険は「ノーロス・ノープロフィット」の原則
損害保険会社が地震保険の契約をどれだけ引き受けたとしても、損害保険会社の利益にはなりません。また、大きな地震が起きて損害保険会社が地震保険の保険金をたくさん支払ったとしても、損害保険会社の業績がマイナスになることはありません。
地震保険は「ノーロス(業績がマイナスにならない)・ノープロフィット(利益にならない)」の原則があるのです。
「大きな地震が起きたら、地震保険の保険金を払うことで損害保険会社は潰れてしまうのでは?」と思うかもしれませんが、ご心配は無用です。
「どうせ、もらえないんでしょ!」…何を根拠に?
先述の通り、地震保険の保険金は損害保険会社が、いくら払っても損害保険会社の業績に影響しません。
そのためでしょうか、(私の個人的な感覚ですが)大きな地震が起きた時、損害保険会社各社は「地震保険の保険金の支払いに前向き」な印象を受けます。
地震保険はもらいやすい?
とは言え、実際のところは、どんなものでしょうか?
東日本大震災を例に挙げてみましょう。
「損害保険協会による巡回相談」
損害保険協会や損害保険代理店業協会が避難所などに派遣された際は、『「保険会社が不明なので確認したい」,「保険金請求をどこへ連絡すればよいか」という相談が多く寄せられ,次いで,「地震保険の補償内容」や「保険契約金額の設定」に関する相談,「津波損害の認定基準を教えてほしい」といった相談が寄せられた。』そうです。
「共同調査と全損一括認定地域の確定」
『共同調査は,航空写真等の判読による全損一括認定地域の認定と,航空写真判読で得られた情報を元にした現場踏査による最終的な全損一括認定地域の確定という2つのプロセスにより行う損害認定手法(中略)契約者のうち全損一括認定地域に居住していた契約者には,現場立会による損害調査を実施せずに「全損」として保険金を支払うこととした。』
これらにより、地震保険の保険金の支払い(受取)が『急速に進展』することになりました。
以上、『』内は東日本大震災に対する損害保険業界の対応からの引用。
「損害の認定は自主申告で」
火災保険の保険金請求を行う時は、損害保険会社から委託された査定員が出向いて、損害の程度を査定するのですが、地震保険も同じです。
しかし、東日本大震災では木造建物や家財の地震保険の請求については査定員が出向かず、損害の程度は契約者の自主申告によって行うことになりました。
地震保険で家の再築はできないから意味がない?
残念ではありますが、地震保険の保険金では家の再築は難しいと言わざるを得ません。
と言いますのも、地震保険の保険金の額は火災保険の半分まで、かつ地震保険の保険金額は(建物の場合)5000万円までという上限があるからです。なので、例え1億5000万円の火災保険を契約していても、地震保険は5000万円しか掛けることができないのです。(ただし、損保会社によっては地震保険の保険金額に上乗せすることができる特約を設けている損害保険会社もあります)。
では、家を再築することができない地震保険には、一体、どのような目的があるのでしょうか?
地震保険の目的は被災者の生活再建
「地震保険に関する法律」の第一条では、次のように定められています。
『この法律は、保険会社等が負う地震保険責任を政府が再保険することにより、地震保険の普及を図り、もつて地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的とする』。
ということで、地震保険の目的は「家の再築」ではなく、被災後の生活再建なのです。
次回も地震保険について書いてみたいと思います。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
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