遺言によって遺贈を受けた。これって絶対に受け取るべき?放棄することはできないの?
ファイナンシャルフィールド / 2018年9月2日 9時50分
日本の相続制度は被相続人(亡くなった人)の意思が尊重されるような仕組みになっています。 その一方で、財産をもらう側の意思はどうなるのでしょうか。 「与えたい」という被相続人の意思と「受け取りたくない」という受け手の意思が対立してしまった場合、どちらの意思が最終的に優先されるのでしょうか。
遺贈は拒否できる?できない?
「畑は知人であるBさんに遺贈する。」
Aさんの父が遺した遺言の一部にそのような一文が存在していました。
ところが、Bさんに畑を受け取る意思はまったくなく「非常にありがたいことなのですが、私に畑は荷が重すぎます。」とAさんの父からの遺贈を拒否する意思を示していました。
それに対し、Aさんは「遺言書に記載がある以上、Bさんが受け取るべきではないか。」とBさんに遺贈を受け入れるよう促しました。さて、BさんはAさんの父からの遺贈を受け入れ、畑を受け取らなければならないのでしょうか。
遺贈は放棄することができます
遺言によって財産を譲ることを「遺贈」と呼び、遺言によって財産を譲る方を「遺贈者」受け取る側を「受遺者」と呼びます。
今回の事例でいえば、遺言によって財産を譲ろうとしているAさんの父が遺贈者です。
そして、遺言によって財産を譲られる側のBさんが受遺者となります。さて、ここで結論といきましょうか。
結論として受遺者であるBさんはAさんの父からの遺贈を拒否することができます。
そして、遺贈を拒否することを「遺贈の放棄」といいます。なぜ遺言が存在するにもかかわらずBさんは遺贈を放棄することができるのでしょうか。
それは、民法986条にて次のように定められているからです。
受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。(1項) 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。(2項)
では、上記の条文を今回の事例に当てはめ、簡単にわかりやすく読み替えてみましょう。
すると次のような内容になります。
Bさんは、Aさんの父の死亡後、いつでも、畑の受け取りを拒否することができる。(1項)
畑の受け取りは、Aさんの父が死亡したときにさかのぼり拒否されたことになる。(2項)
以上の理由により、Bさんは遺贈を放棄することができるのです。
放棄の意思はどう示す?
遺贈の放棄は受遺者の意思表示のみによって効果が発生します。
なぜなら、遺贈の放棄に特別の様式が定められていないからです。
この場合の意思表示の相手方としては、遺贈義務者(遺贈の内容を実現させる義務のある人)などで、放棄についての同意までは必要とされていません。
ただし、遺贈義務者などから相当の期間を定めて催告があったものの、その期間内に意思を示さないでいると、遺贈を承認したとみなされることに注意してください。(民法987条)
遺言だけがすべてではない
日本の相続制度において、被相続人の意思は充分に尊重されています。
しかし、それが絶対というわけでもありません。
遺贈があったとしても、受遺者は絶対にそれを受け入れなければならないわけでなく、遺贈を放棄し、財産を受け取らないという選択も可能です。
とはいえ、遺贈を受け入れるかどうか催告があったにもかかわらず、長期間返答をしないままでいると、遺贈を承認したとみなされ、放棄の認められないこともあります。
自分に遺贈のあったことを知ったときは、結論を先延ばしにするのではなく、できるだけ早く決断を下すようにしましょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「え?スナックのママに財産をあげたい?」遺産分割後に見つかった父の遺言書 「まさか不倫関係だったら…」衝撃の内容と対応策【行政書士が解説】
まいどなニュース / 2024年6月28日 20時2分
-
「母さんの金、使い込んだな!」「世話もしないでなにいってるの!?」…〈疑念+怒り+悲しみ〉が絡み合う、相続トラブルの実態【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月28日 11時15分
-
年金80万円、実家に寄生して豪遊する「48年間無職の66歳次男」…金融資産1億円の亡父が残した「強烈な代償」【CFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月26日 11時45分
-
行方不明になって10年…すでに「死亡扱い」となっていた兄が突然現れた 亡き父の財産相続はどうなるのか【行政書士が解説】
まいどなニュース / 2024年6月22日 18時32分
-
70代の父、危篤…母&兄はずっと2人で相続相談、弟はひとり蚊帳の外「この状況、納得できません」「相続について教えてください」→税理士が助言
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月4日 11時15分
ランキング
-
1すき家、7月から“大人気商品”の復活が話題に 「この時期が来たか」「年中食いたい」
Sirabee / 2024年6月29日 4時0分
-
2若々しい人・老け込む人「休日の過ごし方」の違い 不安定な社会、「休養」が注目される納得理由
東洋経済オンライン / 2024年6月30日 9時0分
-
3忙しい現代人が“おにぎり”で野菜不足を解消する方法。野菜たっぷりおにぎりレシピ3選
日刊SPA! / 2024年6月30日 15時53分
-
41年切った「大阪・関西万博」現地で感じた温度差 街中では賛否両論の声、産業界の受け止め方
東洋経済オンライン / 2024年6月30日 14時0分
-
5水分補給は昼コーヒー、夜ビール… 「熱中症になりやすい人」の特徴と対策
ananweb / 2024年6月29日 20時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください