あなたは説明できますか。上司の承認がないと「有給休暇」を取得できないの?消化が義務になるって本当?バイトはどうなるの?
ファイナンシャルフィールド / 2018年9月17日 22時50分
某大手企業の支店長が、複数の部下に、「有給チャンス」と題して、クイズに正解しないと、有給休暇を取得できないというメールを送っていたもので、正解者はなく、誰も休暇を取れなかったとされている問題が大きく報じられました。 しかし、これは法律違反です。有給休暇について、ポイントを解説します。
有給休暇はアルバイトもOK
有給休暇は、法律では、年次有給休暇といいます。一般的には、略して、有給(休)とか、年休などという言い方がされています。意味としては、文字通り、給料をもらいながら休めるというものです。
労働者の心身の疲労を回復させるために、また、仕事と生活の調和を図るためにもまとまった休暇は必要です。そこで、休日とは別に一定期間、使用者が与えなければならないものが有給休暇です。
つまり、有給休暇は、使用者の承認により与えるものではなく、正社員、アルバイトを問わず、取得したい日を前日までに指定すれば、当然に与えられるものです。
また、休養のためでもレジャーのためでも利用目的にかかわらず、取得することができます。
これに対し、使用者は、労働者が有給休暇を取ることによって、事業の正常な運営を妨げる場合には、別の日に有給休暇を取ってもらえるようにする、時季変更権を行使できます。
ただし、時季変更権を行使するための条件は極めて限定されています。単に「多忙だから」「代わりの従業員がいないから」というだけでは認められません。
また、使用者は、有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他の不利益な取り扱いをしてはなりません。
有給休暇を取得するための条件
使用者は雇い入れの日から6ヵ月継続勤務して全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10労働日の有給休暇を与えなければなりません。
なお、継続勤務に関しては、(1)業務上の負傷・疾病による療養のため休業した期間(2)法に基づく育児(介護)休業をした期間(3)法65条による産前産後の期間(4)年次有給休暇を取得した期間は、出勤したものとみなされます。
また、全労働日は総歴日数から所定休日を除いた日をいいますが、(1)所定休日に労働させた場合(2)不可抗力による休業日(3)使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日(4)正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日(5)割増賃金の代替休暇を取得して終日出勤しなかった日は、全労働日に含めません。
有給休暇の日数は?
有給休暇を10労働日取得後、1年経過した人(雇い入れの日から1年6ヵ月勤務した人)には11日、2年経過した人(同2年6ヵ月勤務した人)には12日、さらに、ここから1年経過ごとに2日ずつ増加します(20日が限度)。
アルバイトやパートで週の所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の人は、上記の有給休暇の付与日数よりも少ない日数の有給休暇が与えられます(比例付与日数)。
アルバイトやパートには有給休暇がないと思っている方がいますが誤解です。例えば、週1日働く人でも半年働くと、有給休暇を1日取得できます。
有給休暇中の賃金は、(1)平均賃金(2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(3)健康保険法に定める標準報酬日額に相当する賃金(労使協定に定めのある場合)のいずれかが支払われます。
なお、労使協定を結べば、時間単位で取る、ということも可能になります。
有給休暇は繰り越せるの?
取得した有給休暇を1年間で使いきれなかった場合には翌年に繰り越すことができます。
繰り越された日数は、新たに与えられた休暇日数に加算されますが、さらに、1年間使わなかったときには時効により消滅します。つまり、有給休暇は取得した日から2年で時効になります。
計画的付与制度って何?
日本の有給休暇取得率は50%程度と低いので、労使協定で、半ば強制的に有給休暇の取得を促すものです。計画的付与の対象は5日を超える分です。
5日を残したのは、労働者が病気など個人の事情で利用する場合を考えてのことです。
計画的付与の方法は、全員が有給休暇を取得する、グループごと個人ごとに期間をずらして取得するなどがあります。
有給休暇の消化が義務化!
先に説明したように、日本での有給休暇取得率は50%程度と低い状態にあります。職場の人たちに迷惑がかかるというのが主な理由です。
そこで、来年春より、10日以上の有給休暇がある人に対して、有給休暇を5日以上消化させることを法律で会社に義務づけます。違反した場合、会社に最大30万円の罰金が課される可能性があります。
労働基準法を知ろう
労働基準法は労働者を守ってくれる法律です。今まで、労働基準法を学ぶ機会がなかった方も、自己防衛として、労働基準法を学んだほうが良いと思います。
厚生労働省のホームページに就職を控えた学生や若者向けのハンドブック『知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~』がありますので参考になると思います。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
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