1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

非正規社員への「賞与・退職金」の不支給は問題ない? 最高裁2020年判決の誤解を晴らす

ファイナンシャルフィールド / 2023年12月1日 10時0分

写真

2020年に最高裁で「非正規社員への賞与・退職金不支給は問題ない」とされた判決が出ました。それを「最高裁が非正規社員の賞与・退職金不支給を公式に認めた」などと誤解しているケースがあるようです。   最高裁は当該事件の個別事情を考慮して判断したもので、そもそも働き方改革関連法施行前の事件です。本記事では、この判決の内容を読み解いて紹介します。

2020年最高裁判決は、働き方改革関連法施行前のこと

働き方改革関連法の中の「同一労働同一賃金」は、正社員と非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差を是正しようというものです。
 
パート労働者・有期労働者について、大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月施行、派遣労働者については大企業・中小企業を問わず2020年4月から施行されています。
 
前述した最高裁判決が出たのは2020年10月ですが、事件そのものは同一労働同一賃金の制度適用前の問題です。当該事件について「当時の法律を適用すればどう判断するか」という判決であり、同一労働同一賃金施行後にそのまま適用されるわけではありません。
 
しかも最高裁は、それぞれの事件の具体的事情を詳しく見て判断しています。
 

賞与不支給の事件(大阪医科薬科大学事件)

賞与不支給の事件(大阪医科薬科大学事件)とは、「アルバイト職員に賞与を支給しないのは不合理ではない」とされた事件です。
 
当該アルバイト職員は、2013年から2016年まで有期労働契約を更新して勤務していました。正職員(無期契約)には年間4.6ヶ月分の賞与が支給されていましたが、アルバイト職員には賞与はありませんでした。
 
当時の労働契約法でも、有期・無期契約の違いによる不合理な待遇差は禁止されていました。しかし最高裁は、次の事情から「このアルバイト職員に賞与が支給されないのは不合理な待遇差ではない」と判断しました。
 
正職員は業務の難度・責任の程度が高い(学術誌編集・部門間連携業務・毒劇物管理など)。人材育成・活用のための人事異動がある。このような人材の確保・定着のために賞与が支給されている。
 
アルバイト職員は定型的簡便な業務で人事異動もない。さらに、アルバイト職員には試験制度により段階的に正社員に登用される道もあった。
 

退職金不支給の事件(メトロコマース事件)

退職金不支給の事件(メトロコマース事件)では、地下鉄の売店業務に正社員(無期契約)、契約社員(有期契約)がともに従事していました。
 
この事件の契約社員2名は2004年に1年契約で採用され更新を繰り返し、2024年、25年に65歳で定年退職しましたが、退職金が払われませんでした。一方で正社員には、計算基礎の基本給に勤続年数に応じた支給月数を乗じて退職金が支払われていました。
 
最高裁は次の事情から、この事案について「契約社員に退職金がないことは不合理な待遇差ではない」と判断しました。
 
正社員には配置転換がある。不在販売員の代務、売店総括、トラブル処理など業務内容・責任の程度の違いがある。退職金は職務遂行能力・責任の程度に応じた賃金の後払い的性格があり、人材確保・定着のために支給される。契約社員には上記事情がない。しかも試験制度により段階的に正社員に登用される道もある。
 

非正規社員でも賞与退職金がもらえる可能性はある

これらの事件で、最高裁が非正規社員に賞与・退職金不支給を問題なしとしたのは、個別事情を詳しく判断した結果です。下級審では不支給は不当という判決も出ています。退職金の事件では、最高裁でも1人の裁判官の反対意見があったことから、当時でもかなり微妙な問題であったと思われます。
 
現在では「同一労働同一賃金ガイドライン」という厚生労働省の指針があり、賞与について次の「問題となる例」が挙げられています。
 
「賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。」
 
退職手当については、指針でこのような具体的な問題例等は示されていませんが、「不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる」と明記されています。この指針から見れば、現在では非正規社員でも賞与や退職金がもらえる可能性はじゅうぶんあると考えられます。
 

疑問があれば会社に説明を求めよう

非正規社員で、賞与・退職金がもらえない、正社員に比べごく少額、など納得できないときは、会社に説明を求めましょう。会社には説明義務があります(パートタイム・有期雇用労働法第14条、労働者派遣法第31条の2)。公的な相談窓口に相談もできます。
 
同一労働同一賃金ガイドラインでは、正規非正規の不合理な待遇差を解消し「(前略)多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指す。」とまで記載されているのです。
 
「非正規社員に賞与・退職金がなくても仕方ない。最高裁も認めている」などと誤解しないようにしましょう。
 

出典

e-Gov法令検索 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

e-Gov法令検索 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

厚生労働省 短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針

 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事を最後まで読む

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事を最後まで読む

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事を最後まで読む

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください