【相談実例】『老後のお金の準備を定期預金で貯めるのはダメなんですか?』
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月2日 8時30分
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「老後資金」は、「子どもの教育資金」「マイホームの購入資金」と並ぶ、人生における3大支出の1つと言われています。 しかし、他の支出と異なり、奨学金制度や住宅ローン制度などの代替手段がなく、加齢により収入を稼ぎ出す力が低下してから発生する支出になります。 代替手段の利用や収入増加といった手段がとりにくいため、老後資金の準備不足が老後貧困に直結しかねません。今回は定期預金でお金を貯める場合の是非について解説していきたいと思います。
老後のお金はどれくらい準備すべきなのか?
老後の生活費は、夫婦で一般的な生活を送る場合は月額25万円。余裕ある生活を送る場合は、35万円必要と言われています。
近年は不安を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、老後の生活費の重要な原資となるのは公的年金になります。必要な生活費から年金支給額を差し引き、不足額を自己資金で準備することになります。
代表的な公的年金として、全員が加入する「国民基礎年金」と、厚生年金保険適用事業所に勤務する場合に加入する「厚生年金」が挙げられます。
平成30年の国民基礎年金の老齢年金額は満額で77万9300円です。これに対して、厚生年金の老齢年金額は現役時代の平均標準報酬額によって支給額が変わってきます。
今回は平均標準報酬額が35万円で、65歳まで43年間勤務した場合をモデルケースとしてみたいと思います。
(1)夫婦の国民基礎年金の老齢年金額
77万9300円×2人=155万8600円/年
(2)厚生年金の報酬比例部分
35万円×5.481/1000×516カ月=98万9900円/年
(3)年金支給の合計額=上記(1)+(2)=254万8500円/年
(4)一般的な老後生活を送る場合の老後資金準備額
25万円×12カ月-254万8500円=45万1500円/年
今回のケースでは、年間45万円を老後資金として自己で準備する必要があります。
長期的なお金を貯める場合の注意点
「時は金なり」という格言が示す通り、お金と時間は密接な関係にあります。未来に得られるお金と、現在得られるお金の価値は同じではありません。資産運用により利益を得られるチャンスがあるので、現在得られるお金のほうが、価値が高くなるためです。また、物価上昇の問題もあります。
上記モデルケースのように年間45万円を25年間取り崩して受け取りたい場合、いくらずつ積み立てていくべきなのでしょうか? 積立期間を20年と仮定した場合、以下のような計算になります。
(1)資産運用を行わない場合(金利0%)
ア 必要な老後資金
45万円×25年=1125万円
イ 自己資金による積立額
1125万円÷20年=56万2500円/年
(2)資産運用を行う場合(金利2%と仮定)
ア 上記条件で資産運用を行う場合に必要な老後資金
45万円×年金現価係数19.523=878万5000円
イ 自己資金による積立額
878万5000円×減債基金係数0.041=36万円
このように資産運用を行うことで時間を味方につけ、自己資金で用意する金額を圧縮することができるようになります。
資産運用による老後のお金の準備について
資産運用を考えた場合、虎の子の資金を株式や不動産のような元本保証のない金融商品で運用することに抵抗を覚えることも多いと思います。そこで、元本保証のある金融商品でも比較的利息が高い定期預金を利用する場合を考えてみたいと思います。
現在は低金利状態が続いており、過去5年間の定期預金金利は平均0.27%となっています。反面、同期間の物価上昇率は0.68%となっており、定期預金では金利が物価上昇率を下回るケースが多くあります。
物価上昇率>金利収入の場合、同額の現金で実際に購入できる物品・サービスが減少していくことになり、実質的価値は低下してしまいます。
まとめ
老後資金が公的年金だけで不足してしまう場合は、自己資金による準備が不可欠です。
長期的に資金の準備を行うなら、金融資産による資産運用を行うことで時間を味方につけ、自己資金での積立額を大きく下げることが可能です。ただし、消費税増税や物価上昇による、預貯金の実質的価値の低下に注意しなければなりません。
定期預金は、元本保証の金融商品の中では比較的金利が高いのですが、金利が物価上昇率を下回ってしまうケースも多くあります。近年は退職金制度のない企業が増加しているため、代替手段の少ない老後のお金の準備の重要性は、今後も増していくものと思われます。また、自己資金だけで準備をするのは家計に大きな負担を及ぼしてしまいます。
生涯現役を貫き、一定の収入を稼得し続けることができればいいのですが、万が一の場合に備えて金融資産による収入増加を検討してみてはいかがでしょうか。長期的な資金を積み立てる際に関わってくる要素は、積立金額・金利・時間の3つとなります。老後のお金は準備開始が遅くなるほど時間のメリットを失ってしまい、自己負担額の増加や資産運用時のリスク増加にもつながります。
現在は金利低下の影響で資産運用といったら株式・不動産投資などが話題になることが多いのですが、長期的な債券投資のリターンも決して低いものではありません。急にお金持ちになるのは難しくリスクを伴いますが、ゆっくりとお金持ちになるのは案外簡単なものだったりもします。
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
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