上司が「風邪くらいで休むな」「マスクなんてお客さまに失礼」と言っています。インフルエンザが流行っていますが、上司の言うことに従うしかないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年1月2日 2時20分
2023年、新型コロナウイルス感染症は5類に移行しましたが、その一方で、2023年12月現在はインフルエンザが大流行しています。単なる風邪の症状だと思っても、無理に出社して周囲にうつしてしまうと同僚や取引先などに影響を与え、業務の効率も損なわれます。また、会社には従業員の健康を守る「安全配慮義務」があります。 本記事では、企業や従業員がとるべき感染症対策について注意点をまとめました。
インフルエンザ大流行のおそれ
新型コロナウイルス感染症は5類に移行しましたが、一方で、図表1の通り、今年は9月ごろからインフルエンザが急拡大しています。2020年から22年のコロナ禍において、インフルエンザにかかる人が少なく、免疫を持つ人が少なくなったためといわれています。12月初めには、沖縄以外の全都道府県で1医療機関当たりのインフルエンザ患者数が「注意報レベル」を超え17都道府県では警戒レベルになっています。また、年明けに感染者数が急激に増える可能性も指摘されています。
図表1
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報2023年第49週(第49号)インフルエンザ
職場でのインフルエンザ等の感染症予防対策・健康対策の重要性
会社には、従業員など指揮監督関係にある人の生命や体などの安全を確保する「安全配慮義務」があります。安全配慮義務は労働契約法第5条にも示されているもので、民法第1条の「信義誠実の原則」に基づく義務です。
この中には、従業員などの健康に配慮する義務も含まれます。会社としては、厚生労働省などが公表したインフルエンザなどの感染症対策を職場で周知、徹底する必要があります。
感染した従業員が無理に出社すれば感染が拡大し、他の従業員の健康を危険にさらし、職場の生産性低下を招きます。
体調不良の従業員に無理な出社を求める上司は、会社としての安全配慮義務を怠っているばかりか、生産性の低下をも招いているのです。職場で上司の理解が不足していると感じたのであれば、このような視点から感染症対策の重要性を訴えましょう。
適切な知識・情報の大切さ(手洗い・マスク・うがい)
インフルエンザ予防対策の適切な知識を職場で周知しましょう。
1番効果的なのはワクチンです。接種費用を補助している会社も多いでしょう。「手洗い・マスク・うがい」といった基本的な衛生習慣も徹底しましょう。
手洗いは手指などについたウイルスを除去する有効な方法であり、インフルエンザをはじめとした感染症対策の基本といえます。
マスクも効果的であることを伝えましょう。図表2の厚生労働省の咳(せき)エチケットのパンフレットにあるように、急な咳のとき手で受けず袖口で受けるよう促しているのは手を介した接触感染を防ぐためで、こちらも重要な対策の1つです。
図表2
厚生労働省「咳エチケットについて」
うがいは、のど本来の繊毛運動などの防御機能を高め、物理的洗浄効果もあり、マスク同様に保温保湿効果も期待できます。風邪予防の研究では、水うがいだけでも風邪にかかる割合が約4割減った、というものもあります。
会社は安全配慮義務の一環として、感染症に関する適切な知識を職場で周知し、不適切な対応に陥らないように努めることが求められます。啓発ポスターの掲示、朝礼での徹底など、すぐできることから取り組みましょう。
「休むな」ではなく「休むことができる職場づくり」を目指そう
職場の感染症対策で1番大切なのは、体調不良だと感じたならすぐに休むということです。インフルエンザは熱が下がっても数日間は感染力が高い状態が続くので、医師の指示通りに休みましょう。
個人としてできる取り組みといえば、いざという時すぐ休めるよう、職場内で仕事を引き継ぐことができるよう工夫することが考えられます。また、コロナ禍でテレワークを実施した会社も多くあります。従業員にとっても、感染症の拡大防止のためにテレワークを活用するのは1つの策でしょう。
出典
e-Gov法令検索 労働契約法
e-Gov法令検索 民法
国立感染症研究所 感染症発生動向調査週報2023年第49週(第49号)
厚生労働省 令和5年度 今シーズンのインフルエンザ総合対策について
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー
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