【婚姻期間は37年】年金を受給している人が離婚したときの年金分割はどうなる?
ファイナンシャルフィールド / 2024年1月15日 6時20分
高齢期の生活を支える公的年金の種類は、国民年金部分である老齢基礎年金と、会社員や公務員などが加入する厚生年金保険部分である老齢厚生年金とに分かれています。離婚時の年金分割の対象となる年金は、婚姻期間中の厚生年金保険の加入期間です。本記事では、年金受給中の人が離婚したときの「年金分割」について解説します。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」がある
「合意分割」とは、平成19年4月1日以後に離婚等をした場合、婚姻していた期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で合意し分割することができる制度です。
共働き夫婦だった場合、お互いに厚生年金保険の被保険者期間があるため、夫婦の合意により分割する割合(按分割合)を決めて分け合います。つまり双方が合意した場合に受け取れる年金なので、合意分割といいます。
一方、「3号分割」は、国民年金第3号被保険者期間のある人が離婚等をした場合、3号被保険者からの請求により、平成20年4月1日以後、婚姻していた期間中の3号被保険者期間における相手の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者の間で分割できる制度です。
かつての日本では、「夫が外で働き、妻が家庭を守るべきである」という家族構成が一般的であったため、高齢期に受け取る年金は、夫が老齢基礎年金と上乗せの老齢厚生年金、妻は老齢基礎年金と結婚するまでの短い老齢厚生年金といった受け取り方が主流でした。
3号分割の場合、当事者双方の合意は必要ではありません。ただし、3号分割が法律上当然に分割されるのは、分割制度ができた2008(平成20)年5月1日以後の離婚に限られています。
国民年金第3号被保険者でも3号分割できない理由
3号分割制度ができる前に国民年金第3号被保険者期間があっても3号分割はできず、双方の合意による合意分割でないと年金分割はできません。
ここで、老齢年金を受け取っているAさん夫婦を例に考えてみましょう。
Aさん(妻)は1986(昭和61)年11月に29歳で結婚しました。夫も同い年です。Aさんは、結婚してから厚生年金保険に加入する仕事はしていません。夫は、60歳の定年まで会社に勤めていました。しかし、Aさん夫婦は2023(令和5)年11月に離婚することになりました。
Aさん夫妻の婚姻期間は37年あります。現在、Aさんは66歳、夫も66歳、2人とも自身の老齢年金を受給しています。Aさん夫婦が離婚すると、妻であるAさん自身の年金は、厚生年金保険の加入期間が短いため、低額の年金となってしまいます。
仮にAさん夫婦が、離婚時の話し合いで年金分割に合意できなかった場合、Aさんは2008年4月以降の3号分割の請求をするとします。夫の厚生年金保険の加入期間のうち、婚姻期間中にAさんが国民年金第3号被保険者であった期間が、31年あったとしても、3号分割できる期間はたった9年ほどしかありません。
Aさんが2008年4月前の婚姻期間の年金分割を希望するのであれば、合意分割しなければなりません。つまり、婚姻期間中、すべてが第3号被保険者期間であっても、必ず3号分割できるわけではないのです。
年金受給者が分割する際の注意点
年金を受給している人の分割は、分割請求した日の翌月から分割した年金額に変更となります。
厚生年金保険に長く(20年以上)加入している人が65歳になったときに、年下の配偶者がいると、老齢厚生年金に加給年金がついたり、加給対象の配偶者が65歳になったりした場合、振替加算がつくことがあります。
前段の加給年金のついている夫婦が離婚すると、配偶者がいなくなるため、加給年金は取れてしまいます。一方、振替加算は、配偶者(例では妻)が65歳になると、妻の生年月日によって、妻の老齢基礎年金に加算されますが、一度加算されると離婚しても取れることはありません。
しかしながら、年金分割することによって、妻に分割された厚生年金保険期間(離婚時みなし被保険者期間)と自身の厚生年金保険加入期間の合計月数が240月以上になると、振替加算の支払いは止まってしまいます。
振替加算は、厚生年金保険の加入期間が長い人には加算されないからです。妻は年金分割することで、離婚時みなし被保険者期間を含めて240月以上となったためです。
まとめ
Aさんのケースでは、婚姻期間中の夫が納めてきた厚生年金保険の保険料は、夫婦共同で負担したものと考えます。現在、年金受給中の夫婦が離婚した場合の年金分割は、制度施行前の婚姻期間が長い人が多いので、合意分割をお勧めします。
しかしながら、夫婦で話し合いがまとまらず、調停などをしていない場合、離婚して2年を経過すると年金分割はできなくなります。あらかじめ代理人に依頼し、公正証書の作成、もしくは調停などを検討し、離婚後2年以内に忘れずに請求しましょう。
出典
日本年金機構 離婚時の年金分割
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
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