「家族は後見人になれない」って本当? 司法書士や弁護士が後見人になったときの報酬の目安は?
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月17日 9時30分
親が認知症になると、銀行から預金を下ろしたり、介護施設などに入所する契約を締結できなくなったりします。これらを行うためには、後見人選任の申立てを親の住むエリアを管轄する家庭裁判所に申立てを行い、後見人を選任してもらう必要があります。 「後見開始申立書」には誰を後見人にするのか、その候補者を記入する欄があるのですが、候補者を記入したからといってその候補者が後見人になるとは限りません。最近では、認知症など被後見人に多額の預貯金があると、弁護士などの専門職後見人が選任される傾向があります。その場合には報酬も発生します。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などで、判断能力が低下した方を支援するしくみです。成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。判断能力が不十分になってから利用するのが「法定後見制度」、将来の判断能力の低下に備えて、判断能力が十分あるうちに、自分の信頼できる人や団体(任意後見人)を選び、契約をするしくみが「任意後見制度」です。
ここでは「法定後見制度」について解説します。
法定後見制度には、判断能力の状態に応じて3つの種類があります。(1)判断能力がいつも欠けている「後見」、(2)判断能力が著しく不十分な「保佐」、(3)判断能力が不十分な「補助」の3つで、それぞれ権限の内容が異なります。
認知症の症状のある場合は、日常生活に関する行為を除く、財産に関するすべての法律行為(契約など)を代理できる「後見」を選ぶのが基本になります。
家族は後見人等になれない!?
「後見開始申立書」には誰を後見人にするのか、その候補者を記入する欄があります。通常は家族を指定すると思います。しかし、候補者に家族を指定しても、被後見人に多額の預貯金があると家族が後見人になれない現実があります。
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(平成29年1月~12月)」によると、親族が、成年後見人等(成年後見人,保佐人及び補助人)に選任されたのが全体の約26.2%で、親族以外が73.8%となっています。親族以外では、司法書士の9,982件が最も多く、次いで弁護士の7,967件、社会福祉士の4,412件、市民後見人の289件となっています。
成年後見制度ができた2000年は、本人の親族が成年後見人等に選任されたケースが全体の90%以上を占めていましたが、現在では26.2%にすぎません。親族が後見人に選任されにくいのは、親族が後見人になると不正が行われるという前提があるようです。
東京の家庭裁判所では、被後見人の預貯金が500万円を超えると専門職が後見人に選任される傾向があり、すでに親族等が後見人になっている場合は、後見監督人を立てるか、後見制度支援信託を利用するように勧められるようです。
専門職後見人が選任された場合、以降、家族は被後見人の財産に直接タッチできなくなります。また、専門職後見人に対する報酬も発生します。
専門職後見人等への報酬の目安
後見人等の報酬の有無や金額は家庭裁判所が決めます。「成年後見人等の報酬額のめやす」(平成25年1月1日東京家庭裁判所立川支部)によると、成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の報酬(これを「基本報酬」と呼びます)の目安となる額は、月額2万円となっています。
ただし、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、財産管理事務が複雑、困難になる場合が多いので、管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円~4万円とし、管理財産額が5,000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円としています。なお、保佐人、補助人も同様です。
つまり、最低でも年間24万円の報酬が発生することになります。もちろん、後見人等が報酬に見合った仕事をしてくれれば良いのですが、仕事ぶりに不満を持つ家族が多いとよく聞きます。
成年後見制度の利用は慎重に検討しましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
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