中小企業なので給与アップは夢のまた夢? 景気が厳しいので今年も賃上げは無理…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年2月8日 2時10分
![中小企業なので給与アップは夢のまた夢? 景気が厳しいので今年も賃上げは無理…?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_268235_0-small.jpg)
日本ではバブル崩壊以降、失われた30年と呼ばれる不景気が続き、さらに40年目に突入してしまう状況です。そのため、特に中小企業では給与アップが長い間行われていない状況が続いていました。しかし、最近では物価が上昇し、大企業を中心に給与アップも広がりを見せはじめています。 本記事では、中小企業の賃上げ状況や国の賃上げ促進制度を解説します。中小企業の従業員や経営者の人は参考にしてください。
中小企業の賃上げ状況
(独)中小企業基盤整備機構によると、日本の中小企業数は全企業数の実に99.7%を占めています。そのため、働く人のほとんどが賃上げを実感するためには、中小企業が賃上げをできる状況が必要です。大企業が賃上げをするほど業績が上がってくれば、下請けの中小企業にも影響していくので、中小企業も賃上げしやすくなるでしょう。
まずは、現状の中小企業の賃上げがどのような状況なのか解説します。
中小企業も賃上げ傾向
厚生労働省の「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、従業員数100~299人の企業の賃上げ状況は、図表1のとおりです。
【図表1】
令和4年 | 賃金改定の実施状況 1人平均賃金を引き上げた・引き上げる |
定期昇給の実施状況(制度の有無) |
---|---|---|
賃金改定や昇給を行った・行う | 83.7% | ◆管理職:62.7%(昇給制度あり:70.3%) ◆一般職:71.3%(昇給制度あり:75.6%) |
令和3年(当初10年) | ||
賃金改定や昇給を行った・行う | 79.0% | ◆管理職:63.1%(昇給制度あり:73.1%) ◆一般職:73.1%(昇給制度あり:79.6%) |
厚生労働省「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査」をもとに筆者が作成
令和3〜4年において、定期昇給制度に関しては下降傾向ですが、賃金改定(アップ)に関しては明らかな上昇傾向が見られます。
中小企業の賃上げ傾向の理由
大企業の賃金引き上げは2022年の春闘がきっかけですが、理由としては以下が考えられます。
●物価の上昇に対応するため
●人材不足を解消するため
また、大阪シティ信用金庫が2022年3月上旬に実施した、アンケート調査結果の「中小企業における2023年の賃上げ動向 」(有効回答数1037 社)によると、賃上げをする最大の理由は以下の2つとなっています。
●雇用の維持や従業員の士気高揚のため
●業績の向上・回復を反映して
調査によると、大企業や中小企業の賃金引き上げは、人材確保や業績の向上・回復が大きな理由となっていますが、物価上昇への対応するためという理由も考えられるでしょう。
中小企業の賃上げを促進する制度
図表1によると、従業員数100~299人の企業で1人あたりの平均賃金を引き上げた・引き上げる企業は83.7%ですが、16%以上の企業はまだ引き上げができない状況です。これらの企業が賃上げをするため、すでに引き上げが行われた中小企業も引き続き維持するためには国の制度を利用することが必要です。
中小企業向けに賃上げを促進する制度には「賃上げ促進税制」があるので、概要を紹介します。
賃上げ促進税制
賃上げ促進税制は中小企業向けに、従業員の賃上げ金額の一部を控除する税制です。この税制は以前からありましたが、令和6年4月から内容が拡充されることが決定しています。
中小企業向けの賃上げ促進税制の概要は、以下のとおりです。
●適用期間:令和6年4月1日から令和9年3月31日までの各事業年度(個人事業主は令和7年から令和9年の各年)
●適用対象:青色申告書提出の中小企業者や従業員数1000人以下の個人事業主
●内容:雇用者の給与等支給額の増額分の最大45%を税額控除(法人税額等の20%上限)。賃上げ実施年度に控除しきれなかった金額は、5年間繰り越しが可能
その他賃上げを後押しする制度
賃上げ促進税制は賃上げを直接促進する効果がありますが、他にも間接的に賃上げを後押しできる制度もあるのでご紹介します。
●キャリアアップ助成金:非正規雇用の労働者の企業内キャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善を実施した事業主に助成金を支給
●ものづくり補助金:制度変更への対応や革新的なサービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善に対し設備投資をサポート
●IT導入補助金:自社の課題やニーズに合ったITツールの導入経費の一部を補助し、業務効率化と売上向上のサポートなど
中小企業も賃上げ傾向、賃上げ促進税制で給与アップをさらに期待しよう
2022年の春闘をきっかけに、大企業だけでなく中小企業も賃上げの傾向にあることは統計からも明らかになっています。しかし、まだ賃上げに踏み切れていない中小企業があることも事実です。
賃上げ促進税制は、そのような中小企業の賃上げをバックアップする税制です。今後、中小企業の賃上げがどうなるのか、動向に注目しましょう。
出典
独立行政法人中小企業基盤整備機構 日本を支える中小企業
厚生労働省 賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要
大阪シティ信用金庫 中小企業における2023年の賃上げ動向
経済産業省中小企業庁 中小企業向け「賃上げ促進税制」
厚生労働省 キャリアアップ助成金
全国中小企業団体中央会 ものづくり補助金総合サイト
独立行政法人中小企業基盤整備機構 IT導入補助金2024
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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