芸術の秋。購入した美術品の税金ってどうなの?美術品にまつわるお金の話(後編)
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月20日 0時0分
秋は美術館などで多くの展覧会が開催される季節ですね。 前回は美術品がどのように販売され、値段が決まっていくのか、また、美術品投資についてお話ししました。 今回は美術品を購入し、所有する場合の税制についてお伝えしたいと思います。
美術品の相続
日本にも多くの美術コレクターと呼ばれる人がいますし、そうでなくても価値の高い美術品や骨とう品をお持ちの方は案外、多いと思います。
保有する美術品などは、当然ですが相続税の課税対象となります。
保有者が亡くなると、相続人は相続の開始があったことを知った日(一般的には被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に相続財産を申告、その評価額に応じて相続税を納めることになります。
相続税調査で申告額があまりに安いというような場合には、国税局では専門家に依頼して評価額を査定することもあります。
減価償却資産としての美術品とは?
平成27年1月1日に、これまで取得価額が1点あたり20万円(絵画なら号2万円)未満の美術品などに対して認められてきた、「減価償却資産」の取り扱いが100万円未満に改正されました。
ただし、歴史的価値を有し、代替性のないもの(古美術品、古文書、出土品、遺物など)は、減価償却資産となりません。また、取得価額が1点100万円以上の美術品などは原則、非減価償却資産ですが、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」は、その取得価額が100万円以上であっても減価償却資産として取り扱うこととされています。
減価償却資産とは事業の用に供する資産で、時の経過により、その価値が減少するものです。そして、減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続きです。
主に法人が対象ですが、事業所得や不動産所得などがある個人も利用できます。
この「事業の用に供する」とは、その美術品を事業のために活用していれば良く、その会社のステータスの向上、あるいは社員の業務環境の向上や企業広報などの目的で展示することにあたります。企業などでは、社長室や応接室、会議室、オフィスなどに展示する場合が多いと思います。
次に、「耐用年数」についてですが、算定に用いる耐用年数表には美術品の項目はなく、美術品の素材によって耐用年数を考えていくことになります。
例えば、絵画などは「器具備品」の「室内装飾品」に該当するものとして、さらにその中の「その他のもの」にあたり、耐用年数は8年となります。
金属製のオブジェなどであれば、素材が金属なので耐用年数は15年。また「室内装飾品」に該当せず、屋外に展示する作品などの場合には金属製のものならば10年、その他は5年です。
取得価額は税抜きの価額で構いませんが、作品本体の価額に加え、購入にかかわる諸経費も含まれます。この諸経費とは、作品に付帯する額縁や台座、輸送費なども含みますので注意が必要です。
美術関係者や実際に美術品を保有する人の間では、まだまだ100万円でも金額としては低く、さらなる金額の引き上げを求めたいという声も多いため、今後も改正されることがあるかもしれません。
さらに、この平成27年の改正ではこれから制度を利用する者に限らず、それ以前に美術品を取得した場合も対象となっていますので、該当される方は税理士等に一度、相談されてみてはいかがでしょうか。
最後に
ハードルが高いと思われがちな美術品購入ですが、税制についても知っておくと、少し身近に感じられるところもあるのではないでしょうか。
鑑賞するだけでなく、実際にご自身でも美術品を購入するという気持ちで作品をみるのも面白いと思います。
今回お伝えした減価償却を利用したいという場合、100万円未満で購入できる美術品は意外と多くありますので、気軽に画商やギャラリーに足を運んでみると「良い出会い」があるかもしれません。
ただし、しっかり経験豊富な税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。
参考・出典:
国税庁ウェブサイト
ホーム/法令等/その他法令解釈に関する情報/法人税/美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ
ホーム/法令等/法令解釈通達/第1款 減価償却資産
Text:藤丸 史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー
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