「株主優待を受け取ってみたいけど、元本割れがこわい・・・」 そんなリスクを避けるための方法とは?
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月20日 9時0分
株式を購入すると受け取れる株主優待。 しかし、せっかく株主優待を受け取れても、株式が変動するため元本が割れてしまうリスクがあります。 そこで、元本が割れるリスクを回避して株主優待を得る方法をご紹介します。
そもそも株主優待を受け取るには? 株主優待目的の株式購入のリスク
株主優待は、受け取りたい株主優待の株式を権利付最終日までに購入しておくことが必要です。
権利付最終日とは、株主優待の権利獲得月の、月末最終営業日(権利確定日)の4営業日前です。例えば、2018年9月が権利獲得月だとすると9月25日までに株式を購入している必要があります。逆に、権利付最終日の9月25日に株式を購入して、翌日の26日(権利落ち日)に売却してしまっても株主優待は受け取れます。
株主優待が人気の株式は、通常、権利付最終日まで株価が上がっていき、株主優待が受け取れなくなる翌日の権利落日には、株価が下がる傾向があります。そのため、せっかく株主優待を受け取れても、元本が下がってしまうリスクがあります。
その株価変動リスクを回避する方法が、信用取引の「つなぎ売り」です。
株主優待を受け取り、株価変動リスクを回避する「つなぎ売り」とは?
「つなぎ売り」とは、株式の現物買いと信用取引の売り建てを同じ価格・同じ銘柄で行うことです。
(例)A銘柄をつなぎ売りする場合
1.A銘柄の権利獲得月が9月である場合、権利付最終日の寄付(9:00)前に現物買いと信用売りの「成行注文」を同数量ずつ出します。
これは、同じ価格で注文を成立させるための注文です。
9/25同じ価格 A銘柄を1000円で現物買い
A銘柄を1000円で信用売り
この日は保有したままにします。
↓翌日A銘柄100円下落
2.翌日に現物の売りと信用の株の返却をします。
9/26 A銘柄現物株式900円(―100円)
A銘柄信用売り建て900円(+100円)
→A銘柄の信用売り建てを現物株式A銘柄で返済、―100円と+100円を相殺して完了。
信用取引の信用売り建ては下がると利益、上がると損!
信用売り建ては株式が下がるほどプラスになるので、現物株式が下がっても現物株式を返済すれば損失はなくなります。
逆も同じで現物株式が上がっても、信用売り建てがマイナスになるので利益もなくなります。
つなぎ売りの注意点
■信用取引ができる信用口座の開設が必要
信用取引は無料で開設できることが多くありますが、申し込みに審査があるため、申し込んだ当日に開設できることは少ないようです。
■コスト
つなぎ売りはきちんと行えば損失はありませんが、リスクはつなぎ売りにかかる手数料です。つなぎ売りをする前に、手数料について確認することが大事です。
つなぎ売りには以下の4つの手数料がかかります。
1.現物株式購入手数料
現物株を購入する際にかかる株式手数料です。つなぎ売りの際、信用売り建て分に購入分の株式を返済するため、売却手数料はかかりません。
2.信用売り手数料
信用売りをする際にかかる手数料です。
3.貸株料
信用で株を借りている期間の貸株料です。
例)10万円の株式×(年利2%×2日分/365日)=10円
4.信用と現物の配当金の差額
現物株の購入により配当金を受け取れますが、税金20.315%が差し引かれて支払われます。逆に、信用売りに対しては配当金を支払う義務があるため、配当金を100%支払います。結果として、現物株の配当金には税金分が差し引かれているため、その分が損失になります。
ただし、特定口座で株式比例配分方式の配当金を証券口座受け取りにしていると、翌年の1月に税金分が還付されますので、口座の状態を確認しましょう。
■逆日歩
信用取引には制度信用取引と一般信用取引があります。
制度信用取引は、取引所が決めて行われるもので、株式を貸せる数量が少なくなると「逆日歩」といって、他の機関投資家から株を借りてくるための手数料を支払う必要が出てきます。
逆日歩手数料がいくらになるかは、信用売り建てを行った翌営業日しか分かりませんし、高額になることもあるため、注意が必要です。
一般信用取引は各証券会社が決めているもので、在庫がなく注文を出せないことはありますが、逆日歩はありません。人気銘柄の場合は先着もしくは抽選になります。
■必ず同じ価格で注文を
同じ価格で注文を成立させなければ損をしてしまう可能性があるので、寄付前に成行注文を出しましょう。
■株主優待の価値>手数料
コストを計算し、株主優待に価値の方が高ければ、つなぎ取引をする価値があります。
注意点をちゃんと理解して取引
注意点に気をつけて取引すれば、少しの手数料で株主優待を受け取ることができます。
保有中の株価のチェックが不要で、権利付最終日と翌日の少しの時間で取引ができるため、忙しい方でもできます。
「試しに株主優待を受け取ってみたい」、「資金を長期で置いておけない」、「株式の価格下落リスクが怖い」という方がこの取引に向いているでしょう。
Text:大堀 貴子(おおほり たかこ)
CFP(R)認定者 第Ⅰ種証券外務員
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