【派遣社員の年金事情】派遣社員ですが将来「年金」がもらえるか不安です。正社員と年金制度は変わらないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年2月20日 2時30分
派遣社員は「将来が不安定な働き方」といわれることがあります。その理由の一つとして、年金を挙げられることもあるようです。実際、「派遣社員は年金が少ない」といわれることも珍しくありません。そこで、派遣社員の年金について考えてみました。
派遣社員も、正社員と年金制度は基本変わらない
派遣社員も原則として、正社員と同様に厚生年金に加入します。「派遣社員だから厚生年金に加入できない」ということは基本的にないようになっています。当然、将来は正社員と同じ厚生年金を受給することができます。
ただし、労働時間や日数が短い場合は、原則として厚生年金に加入することができません。厚生年金は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上になって初めて加入することになるからです。なお、それ未満の場合でも、週20時間以上が所定労働時間とされているなど、一定の条件を満たすと対象となることがあります。
また、2ヶ月以内の雇用期間で退職し、派遣元となる会社を転々としているような場合は例外となります。2ヶ月以内の期間を定めて雇用される場合も、厚生年金に加入しないものとされているからです。こういった場合は、自営業者などと同様に国民年金へ加入することになります。
厚生年金を正社員と同じだけもらえるとは限らない
正社員と同じように厚生年金に加入しているからといって「将来の年金額も正社員と同様に決まる」というわけにはいきません。厚生年金の支給額は、報酬額を基に決められる標準報酬月額がおおむね高ければ、それに伴って上がるようになっています。
厚生労働省年金局「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和4年度の標準報酬月額の平均は、およそ32万1000円となっています。
また、仮にある派遣社員が1日8時間で月20日、平均的な時給1488円(株式会社マイナビ「派遣社員の意識・就労実態調査」より)で働いたとすると、月給は23万8080円で、標準報酬月額は16等級です。先述した標準報酬月額の平均は20等級に該当することから、4等級分も差がつきます。
参考までに、厚生労働省の同統計によれば、厚生年金の受給平均額は約14万5000円です。年換算では174万円になります。一般的な正社員であれば、老後に毎月14万円以上は年金を受け取っていることになります。
対して、派遣社員の年金受給額はそれより小さくなる可能性が高いです。例えば、1990年7月1日生まれの方が月給23万円・賞与なしの年収276万円で20歳から59歳まで派遣社員として働いたと仮定して、公的年金シミュレーターで計算してみます。この場合、65歳から受け取る年金は137万円です。
同じように厚生年金に加入しても、派遣社員の場合、一般的な正社員よりも受給できる年金額は、少なくなる可能性が高いでしょう。
派遣社員が将来の年金に不安を感じたときは、どうすればいい?
年金に不安を感じたときは、早めに対策しておくことが大切です。老後が差し迫った段階では、取れる対策に限りが出てきてしまうからです。
考えられる対策はいくつかありますが、一つの方法として、自身でiDeCoやNISAを行い、年金以外で利用できる老後資金を作っておくという方法があります。また、可能であれば正社員に転職し収入を上げ、それに伴い将来の厚生年金額を増加させるというのも有効でしょう。
他にも「年金の受給開始時期を65歳以降に繰り下げて将来受給できる年金額を殖やすという方法もあります。この場合、上限である75歳まで繰り下げることで、最大84%も年金額を増額させることができます。
まとめ
派遣社員であっても「所定の労働時間や日数が一般的な正社員より少ない」という状況でない限り、正社員と同等に厚生年金を受け取ることができます。
ただし、その額は平均額より少ないことが想定されるため、不安であれば正社員に転職したり、年金を繰り下げるなど何らかの対策を現役のうちから考えておいたりと、行動することが必要です。
年金は老後が迫った段階でどうするか考えても、できる対策に限りが出ます。不安であれば早めに、可能な限り、不安を解消するための行動をしていくことが大切でしょう。
出典
厚生労働省 令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
マイナビ 派遣社員の意識・就労実態調査(2023年版)
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)一般・坑内員・船員の被保険者の方
厚生労働省 公的年金シミュレーター
執筆者:柘植輝
行政書士
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