【認知症発覚後の資産管理】70代の両親の「物忘れ」がひどくなってきました。「任意後見制度」の利用を勧められたのですが、どんな制度ですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年2月26日 9時40分
親が認知症を発症してしまうと、銀行の口座が凍結されてしまう可能性があります。凍結されてしまうと、家族であっても預金が引き出せないため、生活費や介護費用などを代わりに持ち出さなければならなくなってしまうケースもあり、負担が大きくなってしまいます。 今回は、両親の物忘れがひどくなってきたときに考えていただきたい「任意後見制度」について解説します。
認知症が発覚すると預金口座が凍結される?
認知症と診断されると、原則として、本人による金融機関での口座取引が制限されることがあります。この状態を、財産が事実上凍結されることから「口座凍結」と呼びます。
口座凍結は、認知症になった方の財産を守るために行われる措置です。認知症によって判断能力が低下したままで取り引きを行うと、詐欺などの被害にあったり、十分に理解をしないまま金融取引をしてしまったりといったリスクがあります。
ただ、口座が凍結されてしまうと、本人の生活費や介護費用が引き出せなくなるため、代わりに親族などの身近な方が費用負担しなければならず、大きな負担となってしまう可能性があります。このような事態を防ぐための手段の一つが「任意後見制度」なのです。
任意後見制度とは?
任意後見制度とは、認知症などにより将来的に判断能力が低下することを見据えて、本人の判断能力があるうちに「任意後見人」と、任意後見人に「代わりにしてもらいたいこと」を契約で決めておく制度です。
任意後見人は本人のサポート役として、財産の管理や身上監護を代理で行います。これにより、本人が認知症などで判断能力が低下してしまった場合にも、詐欺などの被害から財産を守ることが可能です。
また、介護施設などへの入居についても、任意後見人が代理で手続きをすることで、円滑に進められるでしょう。
任意後見制度の手続きの流れ
任意後見制度の手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。
1. 公正証書による任意後見契約の締結(本人の判断能力が低下する前)
2. 任意後見監督人選任の申し立て(本人の判断能力が低下した後)
以下からそれぞれの内容について解説します。
1.公正証書による任意後見契約の締結
本人の判断能力が低下する前に、将来的に任意後見人になってもらいたい人と、任意後見契約を締結します。任意後見契約は、法律により公正証書で作成することが定められているため、公証役場に契約の案文を持ち込み、公正証書の作成を依頼します。
なお、公正証書の作成にかかる主な費用は、表1のとおりです。
表1
公正証書作成手数料 | 1万1000円 |
法務局に納める収入印紙代 | 2600円 |
登記嘱託手数料 | 1400円 |
※日本公証人連合会「公証事務 4 任意後見契約」を基に筆者作成
2.任意後見監督人選任の申し立て
本人の判断能力が不十分となった段階で、家庭裁判所に対して、任意後見監督人選任の申し立てを行います。任意後見監督人選任の申し立てに必要な書類は、以下のとおりです。
・任意後見監督人選任申立書
・申立事情説明書
・親族関係図
・本人の財産目録およびその資料
・相続財産目録およびその資料
・本人の収支予定表およびその資料
・任意後見受任者事情説明書
・診断書(成年後見制度用)
・診断書付票
・本人情報シート(コピー)
・本人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
・本人の住民票または戸籍の附票
・任意後見受任者の住民票または戸籍の附票
・登記事項証明書
・本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書
・任意後見契約公正証書のコピー
必要に応じて任意後見制度の活用を検討しましょう
任意後見制度は、認知症による口座凍結などのリスクを回避するための対策の一つです。活用することで、本人の資産の管理のほか、身の回りの事務手続きも代わりに行えるため、スムーズに事を進められるでしょう。
ただ、任意後見制度は選択肢の一つであり、家族信託を活用するなど、ほかにも対策の方法はあります。それぞれしっかり内容を調べたうえで、本人・家族に合った方法で資産を管理するほうがよいでしょう。
出典
厚生労働省 成年後見はやわかり ご本人・家族・地域のみなさまへ 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)
日本公証人連合会 公証事務 4 任意後見契約 Q22. 任意後見契約公正証書を作成する費用は、いくらでしょうか?
東京家庭裁判所後見センター 東京家庭裁判所立川支部後見係 任意後見監督人選任の申立ての手引 申立書類一覧表(4-5ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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